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スペックホルダー再び

前作はこちら。 

バイト仲間で、霊が見える田中さん。
でもこの日は、ちょっと様子がおかしい。
 
「おはようございます」
「………」

「田中さん?」 
「………」

「??
 ちょっと、リーダー」
「何だよ、リカちゃん。
 オレ、いそがしいんだけど」
 
「プラプラしてるだけじゃないですか」
「まあ、そうなんだけどさ」
 
あの…田中さん…
 ちょっと元気がないと思うんですけど

「田中ちゃん?
 そう?
 全然、気付かなかった」
 
「……何か表情、
 暗くないですか?」
「そう?
 よくわかんねえな。
 ちょっと、聞いてくる」
 
「え?!
 いきなり?!」
 
………
………
………
 
「リカちゃん!
 大変だ!」
「どうしました?」
 
田中ちゃん、
 霊が見えなくなったんだってよ!

「??」
 
「お~い!
 田中ちゃ~ん!」
「はい…」
 
「田中さん、大丈夫?
 急に…
 見えなくなったの?」
「はい…今朝になって…」
 
「何か、あったんですか?」
 
「ええ。
 私、昨日…
 夢を見たんです

「夢?」
 
とても…怖い夢
「怖い…夢?」
 
私はずっと…
 追いかけられていて

「何に?」
 
「それが何か、わかりません。
 
 でも私…
 必死に逃げてたんです。
 
 逃げて逃げて…
 でも逃げきれなくて…
 
 私は最後に…
 さらわれてしまったんです

「さらわれた?!」
 
「きっと…
 さらわれたのは…
 
 私じゃなく…
 私のその能力だったと…。
 
 そして朝起きたら…
 全く、見えなくなってました…」
「そう…
 それは怖かったよね?
 大丈夫?」
 
「何か、上手く言えないんですけど、
 何か悲しくて…
「そうかあ…
 今日はあまり無理しないで。
 みんなでカバーするから」
 
「ありがとうございます」
 
その日から田中さんは、
普通の人に戻った。
 
それからここでは…
もう誰も霊の話はしなくなった。
 
数年後。
 
私は介護員になった。
 
とある利用者宅に訪問。
 
おばあさんと、
障害のある息子さんの二人暮らし。
 
おばあさんは息子可愛さで、
施設入所を拒否きょひ
 
息子さんは働かず、
おばあさんの年金で豪遊ごうゆうしていた。
 
すぐ協議きょうぎの上、後見人を立てる。
 
息子さんはそのことが不満で、
弁護士や親戚…
施設にもお金のことで文句を言ってきた。
 
そのこともあり訪問した際、
介護員が嫌がらせをされたとか、
話しかけても無視されたと報告が上がる。
 
私は特に気にすることなく、
粛々しゅくしゅくと介護業務をこなし…
 
返事がなくても挨拶あいさつ
おばあさんの報告等を行っていた。
 
そして、ある日。
 
「じゃあ、おじゃましました~」
 
次の訪問先へ向かおうと、
車に乗り込もうとした時、
そこに息子さんがやってきた。
 
「ちょっと」
「はい?
 どうかしましたか?」
 
「これ…見て」
「これ……は、写真ですね。
 これが?」
 
スゴいだろ?
 この真ん中にエネルギーが、
 集まってる感じ…どう?

「う~ん。
 よく撮れたいい写真ですけど、
 そういうの私はくわしくないので。
 すいません」
 
「………」
「………」
 
「あんたと話したかった」
「はい?」
 
あんた強いな
「強い?」
 
後ろに2人いる。
 ひとりはキレイな人…お母さん?

「ええ?!
 いえいえ。
 
 うちはまだ生きてますよ。
 
 それにうちの母は、
 キレイというタイプでは…ん?」
 
「でもいる…
 ずっと、見守ってる」
「ああ~。
 そういうことですか。
 確か、以前にもそんなこと言われました
 
「あんたは信用できる…
 見ればわかる。
 
 他の奴らは…
 
 あんたの他に、
 あの背の高いの以外、ダメだ」
「そういうの…
 わかるんですか?」
 
「わかる」
「でも、お母さんのためですから。
 もし何かあるなら、
 その人か私に相談して下さい」
 
「……わかった。
 相談する。
 今度、いつ来る?」
「今日は夕方、
 もう1回、来ますよ」
 
「わかった。
 待ってる」
「じゃあ、
 次の仕事があるので失礼します」
 
数年の時を経た、答え合わせ。
 
人も時間も場所まで違うのに、
同じことを言う人との出会い。
 
(そういうことって…あるんだ)
 

【あとがき】
誤解ごかいされそうなので、
珍しくあとがきを書こうと思います。
 
到底、信じられないお話でしたね。
 
でも、ここでいつも、
訳の分からない妄想話を、
読んで下さってる方々なら、
大丈夫かと思って書きました。
 
このたぐいのエピソードは、たくさんあります。
 
でも…
まずは私が見たものしか信じていない。
そして何より証明する証拠しょうこがない。
 
なので…
ちょっと不思議な記憶として掲載けいさい
 
私は行く先々で、
このスペックホルダー霊能力者に出くわします。
 
私の体感では、
世の中の5人に1人はそうだと思ってます。
 
そんな時に頭に浮かぶのは…
ジョジョの奇妙な冒険のセリフ。
 
スタンド使い能力者は、
 スタンド使い能力者にひかれあう】
 
見えない私は能力者じゃないのですが、
その方々の話では強いということなので、
呼び寄せられているのではないかと、
ひそかに思っています。
 
もちろん、
そのスペックホルダーの方々は素人さんで、
同級生や同僚ですので、
トラブルなどは一切ありません。
 
ただ様々な人のお話を聞いていると…
 
【となりのトトロ】
【ゲゲゲの鬼太郎】
【夏目友人帳】
のような…
 
そういうモノ●●が極当たり前のように、
自然の中に存在しているんだという、
印象を受けます。
 
アニメのようなことが、
今日もどこかで起きてるんだなあ…と。
 
不思議不思議。
 
そして最後に皆様にお知らせです。
 
こんなお話を書いたからといって…
 
明日からここで、
の販売はいたしませんので、
ご安心下さい。
 
二月小雨

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