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コズミック・ゼロ:日本絶滅計画(2012/5/10)/清涼院流水【読書ノート】231214

元日の午前零時、全国の初詣客が大量に消失し、同時に警視庁や各県警本部が謎の集団に占拠された。それが日本絶滅計画の幕開けだった。それぞれ特殊な能力を持つ7人組セブンスは、リーダー・タクトの指揮のもと、日本中の人という人を消していく。一体どうやって、なんの目的で?驚愕のパニック・サスペンス。

本書紹介文

清涼院流水の小説作法』(2011/9/24)の中で、著者ご自身の自信作としてオススメしていたので読んでみました。

ご参考までに告白しますと、これまでに発表した約70冊の本の中で、作者の立場から揺るぎないベスト3だと思えるのは、既に何度か話に出た『キング・イン・ザ・ミラー』、『コズミック・ゼロ』、『成功学キャラ教授』の3作品です。執筆時には毎回、どの作品もベストにするつもりで書き上げているのですが、時間をおいてふり返った時、まったく評価が変わらないのが、右記の3作です。
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ぼくの中で、『キング・イン・ザ・ミラー』、『コズミック・ゼロ』、『成功学キャラ教授』3作の評価は、死ぬまで変わらない、という強い確信があります。ぼくが死ぬ時に、この3作がそのままベスト3でも、なんの不思議もないほどです。ぼくが今後何年生きても、あと何十作品も発表しても、現在のこのベスト3が将来のベスト5から外れることはないと思っていますが、できればベスト5の残りの2席を占める作品を書いてみたいですし、次回作がそうなるように、2年前からこつこつ準備を続けています。

清涼院流水の小説作法

『コズミック・ゼロ』を挙げたのは、既に述べた通り、この作品が「清涼院流水にしか書けないミステリーの究極の形」だからです。
現代を舞台にしたミステリーで『コズミック・ゼロ』以上の作品が今後ぼくに書けるとは思えないほどの自信作です。『1Q84』との同日発売でかき消されてしまったこの作品には、実は、嬉しい後日談もありました。
中国の有名出版社から文藝春秋に「日本の優れたミステリーを翻訳して中国で紹介したいので、御社の自信作を教えて欲しい」と申し入れがあった際、文藝春秋が推薦する十数作に入れていただけただけでも光栄でしたが、その中から中国の出版社が実際に翻訳する作品としてトップ3に選んだ作品の中に『コズミック・ゼロ』が入ったのです。刊行時、日本のミステリー界には予想していた通り完全に黙殺されましたが、先入観や偏見のまったくない海外の方から純粋に作品のチカラを認められたことは、非常に嬉しいできごとでした。
この『コズミック・ゼロ』については映画化の話も具体的に動いていましたが、「予算がかかりすぎる」との理由で実現しませんでした。これまでにも映像化の話が頓挫したことは何度もあるので仕方ないと思う気持ちもありつつ、この特別な作品への愛着は強いので、右肩上がりの経済成長を続ける中国が映画化してくれないかな、などと冗談で話すこともあります。ぼくのデビュー作『コズミック』も、実は日本より中国のほうが売れていましたし、昔、編集者に指摘されたように、「大説」を書くぼくは大陸向きの作家なのかもしれません。

清涼院流水の小説作法

作家にとってデビュー作とは
ぼくという作家の存在を知り興味を持ってくださった時に、デビュー作『コズミック』から読まれる方が非常に多いのですが、それは、作者としては、喜ばしい話ではありません(もちろん、どの本を読むかという選択は読者の自由なので、止めることはできませんが)。なぜなら、現在のぼくをメジャーリーガーになぞらえるなら、コズミック』というのは小学生の少年野球のようなレベルだからです。 デビュー作が未熟なのは仕方ないとは言え、それを読んだ方は、現在のぼくもそのレベルだと錯覚してしまうことが多いのは困りものです。 デビューから15年が経過しても、いまだに『コズミック』でしか清涼院流水を語らない (語れない)人が多いのですが、小学校時代の作文で現在の人間性を判断されて嬉しい大人がいるでしょうか?
作者の個人的な希望としては、『成功学キャラ教授』より前に発表した作品は、できれば読まないでいただきたいです。どうしても読みたい、という場合は止めることはできませんが、過去の作品を読まれることがあっても、それだけで現在のぼくを判断しないでください、ということは、くれぐれもお願い申し上げます。
また、読者によっては「流水の初期作品は傑作だが、最近のはひどい」と言う人もいます。そうした読者がなぜそう感じるのかがぼくにはよく理解できますが、ぼくとしては、まったく逆の意見です。 初期作品には、たしかに、若いからこそ書けた荒削りの魅力もありますが、技術的には、未熟もいいところです。右のようにおっしゃる読者の方も、5年、10年とご自身が年を重ねられるうちに評価が変わるかもしれません。 小説の評価というのは、人生のどの時期に読むかによって、まったく違ったものになることが珍しくないのです。

清涼院流水の小説作法

感想

分かり得ぬものには、沈黙しなければばらない……
We must be silent on what we do not understand.

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