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仕事と趣味と読書で振り返る2019年

2019年も終わり、2020年になりました。
2019年一応振り返っておこうかなと思って、noteを書いておきます。
2019年は、個人的には仕事もプライベートも「淡々と」すぎて言った一年だったように思います。
2018年の年末は、こんな記事を書いて2019年は40代に突入するが、あくまでも足元を着実に、とか書いていたように思いますが期せずしてそんな感じに進んでいきました。

仕事:ひたすらプロトタイプ作り続けた1年

仕事面では、2018年にやっていたことの延長戦で、ありがたいことに多くのプロジェクトに関わり、その中でもUXデザインをリードする役割として、アウトプットする機会に恵まれました。
僕のチームが関わるプロジェクトは、エンドコンシューマ向けのサービスから、B2Bの業務システムまで幅広く、かつ業務要件定義のプロセスでプロトタイピングを用いて、業務要件を固めていく、という局面で参画することが多いのです。

なので、僕の中で「デザイン」という行為の位置付けや、考え方について考えたり、見直す機会が多かったように思います。
僕は立ち位置上、良く言うBTCで言う所の「ビジネス(B)」に軸足を置いてデザインを語る場合も、「システム・テクノロジー(T)」に軸足を置く場合も「クリエイティブ(C)」に軸足を置く場合もいずれもあるのですが、「デザイン」に関わるからこそ、以下の点を抑えにいく必要があると強く感じました。

1. 事業のしなやかさは、システム基盤が握っている
僕は今、金融機関に向けたサービス・プロダクト・システムに関するデザインに関わっていますが、この点が非常に枷になると感じています。これは、システム開発チームが悪い、とか過去の産物が悪い、とかいう話ではなく体験のデザインを行なう者として、自分らが設計する物をサービスインして、ユーザに届けるところまでを確実に行おうとするのであれば、デザインチームがむしろ基盤やシステムアーキテクチャに関する知識を身につけ、システムアーキテクトと会話できるべきだと強く感じました。
今年、OOUIが盛り上がりを見せ、UI設計における銀の弾丸になるのではないか、と注目を集めていますが、そのような時流だからこそデザインと基盤は密接であるべきと考えます。

例えば、ユーザインタフェースもアプリケーションにおけるオブジェクト設計とAPIの入出力、またデータベースの項目に到るまで全てがUXを構成するドライバーになり得ると考えると、デザイナとシステムアーキテクト、ソフトウェアデベロッパの役割は密接です。

また、事業の面から見ると基盤の技術的負債が結局新たなクラウド基盤への投資だったり、新たに投資するアーキテクチャが結局UI層とバックエンド層でサイロ化することによる新たな負債を産むリスクがあると考えると、投資判断の段階から、フロントのユーザインタフェースから最下層のインフラストラクチャまで一気通貫で見通す必要があり、そこにビジネス・デザイン・テクノロジーの連携が不可欠だと考えます。
効率的な事業投資の側面から見ても、開発のプロセスやデザインのプロセスはまだ見直しの余地があり、来年はそこにもタッチしていけるよう動きたいと思っています。

2. 事業投資判断のためのプロトタイピング
「1.」 では、バックエンドとユーザインタフェースの通貫について考えましたが、「2.」ではビジネス投資とデザインの関係について考えたいとおもいます。

今年、いくつか投資判断用のデザインイメージとしてのプロダクトプロトタイピングに携わる機会に恵まれました。事業投資判断を得るには、「コンセプト」「コンセプトを満たす機能要件」「機能要件を満たすユースケース」「ユースケースに沿った開発投資と投資回収ライン、効果」についてを整理する必要がありますが、そこではプロトタイプは「おまけ」程度に扱われることが多いように思います。プロトタイプを用いて投資判断を得る流れが出てきていること自体が進化とも言えますが、よりベターな流れなのはコンセプトや機能要件、ユースケースを通貫してプロトタイプを中心に行い、それによって見積や効果を算出する、という方向だと思います。

大規模投資を得ようとすると、どうしてもコンセプトや機能の段階ですでに複雑になってしまっており、投資判断がGoになったあとで本格的にデザインチームを入れて、、、となる頃にはすでにやることが決まっているので、枠組みの中でしか、設計を行なうことができず、、、となってしまいます。
投資の妥当性を判断する基準として、企業・ビジネスサイドのIntentionを整理すると同時に、市場・顧客の変化を具現化するプロセスとしてのプロトタイプを同時に行なう、というやり方ができればより、リアリティのある事業プランが立案できるのではないかと思います。デザインを「設計」の領域から「構想」の領域へ拡張し、「より良い体験の設計」から「来たるべき未来のための設計」に広げること。これも来年トライしてみたい領域の一つです。

趣味:今年の漢字は「繋」Death Strandingの衝撃

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1. ゲーム:Death Stranding
今年一番の衝撃はメタルギアシリーズ監督、小島秀夫氏の最新作「Death Stranding」でした。
Death Strandingという謎の現象により分断されたアメリカ大陸を繫いで一つにし、アメリカを再建するというストーリーです。主人公は伝説の配達人となって、依頼人から依頼される様々な荷物を指定先へ配送することでアメリカを繫いでいきます。

テーマは「繋」なのですが、この作品を通じて改めて繋がるということを深く考えるきっかけが与えられました。
気持ちが繋がる、記憶が繋がる、知識が繋がる、道が繋がる。繋がるから離れていくものもある、離れるから新たに繋がるものもある。
作品中に、物資を投資して国道を復旧するというミッションがあるのですが、「道が繋がっていないということはこんなに不便なのか」ということや、「繋がることによってこんなに便利になるのか」という当たり前のことに気付けたり、ゲーム中他のプレイヤーが残してくれた物資で命拾いしたり、人は誰かに活かされているし、自分の残した足跡も誰かの役に立っているかもしれない、ということを考えさせられました。

ゲームは分断から再建、という向きでストーリーが進みますが、作品を通して人間の生命力を感じさせられました。戦争の悲劇から立ち直った75年前の日本、高度経済成長で戦後から成長軌道へと向かった1960年代、そして、バブル崩壊からリーマンショック、震災を越えて立ち上がろうとする人々の強さ、人間の強さのような生命力に包まれた作品だったと思いました。
久々に寝不足になるくらいゲームにハマりました。

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2. 旅行:台湾
2019年は3月、10月、そして20年も元旦から台湾に行き、1年の間に3回くらい台湾に行っており、日本にいる間も台湾の歴史について学んだり、台湾についての本を読んだりしています。
何か惹かれるものがあるからなのですが、それがなんなのかをずっと考えていました。
その答えが、↑で紹介したDeath Strandingをプレイしてる中で見つかった気がしました。

「繋」です。

台湾は、日本とも非常に関わりの深い土地で、台北の街を歩いていても日本が統治していた頃の建物や名残が今でも残っていたりします。
また、文化的にも日本の前にも色々な国が台湾と関わりを持っていて、色々な文化を飲み込んで今に至っている。
そういう部分も含めて、日本との関連性が深いようにも感じるし、特に今でも台湾に残っている「記憶」が日本と繋がっている、あるいは繫いで行く必要があるのでは、そう感じているからなのかも、と思いました。

僕が台湾に足しげく訪れるのは単に旅行というのもあるのですが、もう一つは、日本人として台湾をもっと理解したい、台湾に残っている日本の記憶を自分と繋ぎたい、そう思っているからなのかもしれません。

日本でも戦争のことをリアルタイムに知る人は少なくなっている今、日本における戦争を正しく知ることが日本人の務めと感じますが、それと同じくらい台湾と日本を記憶で繋ぐことは務めとなるのではないかと思ってます。

単に、いるだけで居心地がいいというのもありますが、そういう気持ちも持ちながらまた台湾へと旅立ちたいと思います。

読書:ビジネス書以外の本も含めて雑食に読んだ1年

今年は、後半にかけて失速したものの、101冊読んでいたようです。(amazonの購入履歴ベース)
台湾について、深めてみたい欲求が強かったのもあり、台湾に関する本が多いのと、前半禅や茶道に興味を持ったのもあって、禅や茶に関わる本もよく読みました。

001. 時間とテクノロジー
002. ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION
003. デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕 
004. アリババ 世界最強のスマートビジネス
005. Modeless and Modal
006. テンセント――知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌
007. 創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち
008. グリッドシステム─グラフィックデザインのために
009. 台北・歴史建築探訪―日本が遺した建築遺産を歩く
010. ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力
011. なめらかな社会とその敵
012. 三体
013. THE ONE DEVICE ザ・ワン・デバイス
014. 台湾に生きている「日本」
015. ティム・クック-アップルをさらなる高みへと押し上げた天才
016. イノベーション・スキルセット
017. 日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実
018. 全裸監督 村西とおる伝
019. 「ついやってしまう」体験のつくりかた
020. アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る
021. 絵ときデザイン史
022. 岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス)
023. Creative Selection Apple 創造を生む力
024. 正しいものを正しくつくる 
025. 「つながり」の創りかた― 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル
026. insight(インサイト)
027. デザインの知恵 情報デザインから社会のかたちづくりへ
028. SHIFT:イノベーションの作法
029. 文化人類学入門(増補改訂版)
030. 世界の食べもの――食の文化地理
031. 児玉源太郎―そこから旅順港は見えるか
032. 台湾北部タイヤル族から見た近現代史
033. 台湾 四百年の歴史と展望
034. 李登輝より日本へ 贈る言葉
035. 小説 後藤新平―行革と都市政策の先駆者
036. 街道をゆく 40 台湾紀行
037. 増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊
038. 増補版 図説 台湾の歴史
039. 台湾人と日本精神 (小学館文庫)
040. Alibaba アリババの野望
041. ジャック・マー アリババの経営哲学
042. 坐る 白隠禅師坐禅和讃を読む
043. 史明 自伝 理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい
044. 正法眼蔵入門
045. 白隠禅師
046. 姿勢としてのデザイン 「デザイン」が変革の主体となるとき
047. 文化人類学の思考法
048. 数学の贈り物
049. 千利休―無言の前衛 (岩波新書)
050. 無の本 ゼロ、真空、宇宙の起源
051. プルデンシャル―成功への挑戦
052. THE TEAM 5つの法則
053. 禅マインド ビギナーズ・マインド
054. 東洋的な見方
055. 無心ということ
056. [新訳]大学・中庸
057. 平安保険グループの衝撃―顧客志向NPS経営のベストプラクティス
058. チャイナ・イノベーション
059. 生きる力になる禅語
060. 中動態の世界 意志と責任の考古学
061. ゲームする人類―新しいゲーム学の射程
062. 新記号論: 脳とメディアが出会うとき ゲンロン叢書
063. アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム
064. 新装版「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日
065. ゲーム学の新時代 遊戯の原理 AIの野生 拡張するリアリティ
066. 昔、言葉は思想であった 語源からみた現代
067. PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
068. Creative Selection Apple 創造を生む力
069. 直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN
070. HELLO,DESIGN 日本人とデザイン
071. 零の発見-数学の生い立ち
072. セゾン 堤清二が見た未来
073. 風景の死滅 増補新版 (革命のアルケオロジー)
074. 絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
075. 日本企業初のCFOが振り返るソニー財務戦略史
076. ミース、オーダー、黄金比―ミース・ファン・デル・ローエの建築理念を辿る
077. 近代から現代までのデザイン史入門―1750‐2000年
078. NEW POWER これからの世界の「新しい力」を手に入れろ
079. 構想力の方法論
080. RE:THINK 答えは過去にある (早川書房)
081. 完全教祖マニュアル (ちくま新書)
082. 進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観
083. メモの魔力 -The Magic of Memos-
084. 福岡市を経営する
085. デリダ 脱構築と正義
086. ソシュールを読む
087. レディオヘッド / キッドA
088. ダークウェブ・アンダーグラウンド
089. 天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ
090. 弁証法はどういう科学か
091. ラインズ 線の文化史
092. 図解 曼荼羅入門
093. 使える 弁証法―ヘーゲルが分かればIT社会の未来が見える
094. 貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで
095. アメリカ・インディアンの書物よりも賢い言葉
096. センスメイキング――本当に重要なものを見極める力
097. 武器になる哲学
098. 具体と抽象
099. この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた
100. FACTFULNESS(ファクトフルネス)
101. 野の医者は笑う―心の治療とは何か?―

長くなりましたが

軽く振り返るつもりが6000字を超えるという。
20年は早くも41歳になり、不惑も気付けば2年目。19年はとにかく来るものは拒まずに、気になるものなんで取り入れてみようと、特にコンセプトも決めずにインプット・アウトプットしてきました。
20年も引き続き、区切りをつけず、余計な執着は捨てて心を広く持って行こうと思います。
今年はじめにたまたま、ヘーゲルの弁証法、禅における宇宙の捉え方にふれ、「物事は2分できない、振り子のようなものである」という視点を持ったことで、物事への捉え方や感情のコントロールが楽にできるようになったのですが、今年もそれを実践していければと思います。

最後に。19年に長い歴史に幕を閉じたスターウォーズ、ジェダイマスターのこの言葉と、鈴木大拙のこの言葉で振り返り+20年への展望としたいと思います。

Luke, you're going to find that many of the truths we cling to depend greatly on our own point of view.
"ルーク、我々が固執する真実というものの多くは我々自身の視点に強く依存しているのだよ。"
- オビ=ワン・ケノービ
「スターウォーズ:エピソード4 ジェダイの帰還」
二分性で人間生活を割り切るべきでない、また割り切れるものでないということを主張し、それから、今後に出来上がるべき世界文化なるものの完全性は、二分性だけでは、どうしても獲らるべきでない
- 鈴木大拙 「東洋的な見方」

本年もよろしくお願いいたします。

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