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卒制展に向けた奮闘記|展示レイアウト編

いよいよ開催まで残り3日に迫ってまいりました。
卒制展は自分との闘いです。制作準備に勤しんでいると、その様子を見て

「見えない何かといつもと闘ってるね。誰に何を言われたわけでもないのに。」

そう言われて気づきました。
見えない何か、、いや、見えないんだけれど、確かにある自分のなかの軸。5年の美大生活を通じて、自分自身の中で「美しい」と思えるか否かという軸が持てるようになっていたようです。納得感のようなものに近いですが、美しいと思える領域に到達しているかを無意識下で意識してしまっているわけです。

今回は展示レイアウト編。学びの連続です。先生(師)とのやりとりを中心にご紹介します。

初の空間デザイン

今回の博士研究発表展は、人生で2度目の展示です。ですが、1度目の修士の修了制作展と比べても、難易度が高く四苦八苦してしまいました。

修士の時は、あくまでも壁の面をデザインしている程度
今回の博士の制作展は、空間をデザインしているから

修士の最終展示の最終系はこちらの記事の通り、部屋の一区画です。

このようにパワポしか作ったことのなかった私にとって、この面を作るのも至難の業でした。が、今回は空間で立体的な表現です。圧倒的に難易度が異なります。

場所選びから学び

ムサビの市ヶ谷キャンパス内で開催することは決まっていましたが、会場は自分で考えることができます。
私は、きれいな正方形をしている部屋を希望しました。壁にパネルなどを貼りやすいからです。
しかし、先生からは「ここは面白くない」と一蹴されたのです。
「こっちの方がいい」とキラキラした目で先生がお勧めする空間に、半分不安な気持ちのまま、yesと言ってみることにしました。先生が面白い展示ができそうな場所=レベルが高く私が全くイメージの湧かない空間だったからです。

展示会場として選んだ場所(ムサビ市ヶ谷キャンパス2F)

空間は埋めるものではなく、つくるもの

さらに会場を決める時に、会場の広さにも圧倒されていると、先生からすぐに頂いたアドバイスです。 

空間を埋めようとしないで。

顔に出ていたんでしょうか。「どうやって埋めよう、、、」と思いながら会場を見ていた気持ちを。見透かされてしまいます。
空間ではなく、展示する箱という無機質な見方をしていた自分に気がつきます。

想像してみることから


施設の図面をもらい、説明パネルや制作物を1/100スケールにして置きたい場所にあてていく、平面図をつくる作業に入ります。

しかし、これを行うには、大事なことを決めなければなりません。
研究を説明するための素材は、紙なの?パネルなの?幕なの?
それは、吊るすの?貼るの?立て掛けるの?
机は使うの?台は使うの?
それぞれ、何mm、何mmのサイズにする?
それぞれ、どの場所、どの素材に何の情報を書くの?

選択肢が無限であり、自由であるからこそ、モノを具現化(タンジブル化)するのが難しい。これは自身の研究からも明らかになっていたことでした。
制約を自分に課したい。。

そんな暗闇の中での先生からのメッセージです。

白と黒、そしてフローリングの色。
壁と鉄と木。そして窓外。
両脇の棚の密度に囲まれた空間。
ここに研究論文の内容、情報を提示するんです。
空の空間を想像しながら考えてみて下さい。

うーん、まずい、何も想像できない。
今となっては、このすでに存在している空間の色味や素材感が一つの既定になっていたことがわかります。ですが、当時は何も制約にならないなと、頭がショートしてしまいます。

とりあえず、過去のありとあらゆる展覧会の写真を見返し、Pinterestで「展示レイアウト」で検索して、イメージを膨らませます。

会場に下見に行き測量する

下見の回数は今日までで4回。
1回目は、雰囲気の確認から入り、
2回目は大まかな測量、
3回目は場所の写真撮影、
4回目は細かい測量。
最初からイメージがあれば、一回で済んだかもしれません。
イメージが膨らむうちに、あそこの長さを測りたい、高さを知りたい、という形で、知りたいことが具体化されていきます。

誰に何を伝えたいか

白い紙に書き出していきます。プレゼンなど自分以外の方に自分の考えを説明するときは、仕事の時もいつも行います。最初からパワポを作らないのと同じで、展示も同様に、スパイダーダイアグラムと呼ばれる方法で、脳内のものを可視化していきます。
公聴会でも同じことをやりましたが、卒制展は見にきてくださる方の層も異なるので、中身は同じでも、見せ方の手法や表現は異なるものになります。

アイデアが降りてくる

ここまでして、ようやく一つ目のアイデアが降りてきます。空間の中央部から定まりました。ビビっとくるもの、これは美しい!と思う展示の仕方を見出すことができたのです。

降りてきた瞬間に書いたメモ

たしかにアイデアは降りてくるものではありますが、頭がよじれるほど悩み、足を運び測量し、写真を撮って会場を観察し、届けたい内容を洗練させたからこその結果だと思います。

身体全体を使って考える。これも5年間で学んだことでした。

平面図を洗練させていく

説明パネルや制作物を1/100スケールにして置きたい場所にあてていきます。
これは修士の時に教わった方法です。展示の際は必須です。

まずは図面にあてて。見えてくるものがあるから。


平面図(一部)


アイデアが降りてくる度に、平面図を修正する、という行為を繰り返します。
今日までに20回くらいアイデアが降りてきました。
・こう見せよう
・ここに置くべき 作品がここに置けと言ってる!
・空間上、このサイズしかありえない
・色は、この情報はこれしかない
などなど

それに対して平面図を修正したのは50回を超えるかもしれません。

展開図をつくる

展開図を空間の寸法通りにつくります。これは、人の目線から見たイメージを固めるためのものです。
平面図の修正とともにセットで行いますので、幾度となく変更しました。

会場の写真を正しく撮って、100分の1のスケールにサイズを調整して背景をつくります。
写真で背景を一旦仮置きします。

設計初期の頃の展開図

現実にグッと近づけないといけない。パソコンの中の世界は虚像だから。虚像を現実に極めて近づけるのです。

と、これらの背景の写真から、先生が展開図の背景を描き起こしてくださいました。神です。これで一つ経験が増え、学びが後生の宝物になります。


最新の展開図

魔法のように改善されています。イメージが湧き、その中で何をどう配置すべきかが見えてくるようになります。さらに、入り口からの一連の体験の世界を把握することができ、世界観の一貫性を高める作業がより一層できるようになります。

下準備

もう一度会場へ行きます。
空のパネルを会場へ運び、実際にひとつ貼ってみます。

試している様子

平面図・展開図で想像するのが限界な部分は、こうやって確かめるんです。
ほら、パネルの上の方は棚に接地しているから、影が出ない。美しくないよね。
下は棚から離してるから、影が出るでしょう。
現実は立体なのです。

なるほど、現実世界は光と影があり、だから趣深いんだなと感じます。
ところで、棚からどうやって離してパネルを貼るんでしょうか、と素朴に先生に質問を投げかけてしまいます。

貼るという行為は日常行為でしょう。
日常の延長線上はつまらない。
だから、貼らないのです。

・・・。木工の組み木加工と一緒ですよ、という先生の言葉に、まだイメージが湧いていない私は、設営してやっと身に付くのだと思います。

それでは、


今日はこれから設営に行ってきます。

展示は4/15月曜日からです。もしお近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。


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