見出し画像

それでも僕らは愛していた

「今までに観た最高に良かったライブってなに」

そんな話題に、たまになる。

うん〜迷うよね〜

それでも大概、答えはいつもここに落ち着く。

「最高のライブはプライマル・スクリーム」

「そして最低最悪のライブもまたプライマル・スクリーム」

最高の方は、それは本当に最高の時間だった。

バンドと観客の熱気で、会場内が霞んでいるように見えた。
フロントマンであるボビー・ギレスピーは終始ご機嫌で、ステージ上をぴょんぴょんと飛び回り、声の限りに歌っていた。
ボビーの全身からは、湯気が立ち上っているのが肉眼でも見えるほどだ。
それはそれは、メンバーも全員が楽しそうで、観ている方も最高にハッピーになったのだった。
会場の外に出る際、みな口々に「今回はチョー当たりだった」「なんならボビー、なんかキメてたんじゃないか」
それぞれに興奮冷めやらぬ感じだった。
みんな一様に汗でベシャベシャ。

最悪の方は、それはそらは酷いものだった。
なかなか時間になっても始まらない。
感覚としては小一時間は押したのではないだろうか。まあ、そのへんの時間は定かに憶えてはいないが。
不機嫌そうなメンバーがステージに現れ、気だるそうにチューニングをして行く。
その後、生きる屍のごときボビーが、顔を上げれことなく、足を引きずるようにステージ中央に立った。
その後は、なんとそこからほとんど動くことなく、つぶやくように予定されていたであろう全ての曲目を終えたのであった。

それでも、「ボビーーー!」「カッコいー!」などと声を掛ける妄信的なファンもいるにはいたが、多くの観客はどっと白けていた。
その中にあって秀逸な掛け声が掛かった。

「ボビー、バカみたいだぞーー」

良く通る声、気の抜けた言い方、そのタイミング。
その時ばかりは、会場が大爆笑に包まれた。
このライブで一番盛り上がった時といっていいい。

ライブ終了後、当然「金返せや」というの怨嗟の声が会場を埋め尽くしたのは言うまでもない。

しかし、そんなボビーも含め、当時はみんなプライマル・スクリームを愛していたのだろう。

今でも何だかんだとボビーを愛してやまない。
なので、今夜は『スクリーマデリカ』を聴きながら寝るとします。

#エッセイ #プライマルスクリーム #ライブ #最高 #最悪 #音楽 #バンド


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?