20181218三線

おとうさんの楽器

89歳のお向かいのおばあの出身集落に
一度一緒に行ってみたかった。
その集落は草ラボの活動やなんや
やたらご縁があるのである。

今日もその話をおばあにして
『今度一緒に行って昔の集落の様子を教えてよ』
と話していたら、
突然おばあが
『今からいこか?』といいだした。

いつも『いかん』というおばあが
行く気になったチャンスを逃すわけにはいかない。

ということで、
唐突におばあとふたりドライブしながら
おばあ出身集落に向かうことになった。

みかんとキャラメルが
ドライブのお供。

『ここはうちの畑だったころ』
『このあたりで蚕やってた』
『この学校のグランドにはもう一本アカギがあった』…など
いろいろ話をききながら
集落をまわる。

ちょうどおばあの親戚のおうちが
解体しているところ…とのことで
その解体中のおうちものぞくことになった。

壁や窓ははずされ、
東屋のような状態で
屋根を解体中のおうち。
やかん、柱時計、タンス、
食器類、家電、、、、
まだ生活していた時のものが
そこらに散らばっている。

あ、三味線があるよ!
あ、チヂン(奄美の太鼓)があるよ!

おばあに伝えると
手に取って音をならして
『これは持って帰りたい』と。
とてもうれしそう。

解体を任されている人に
尋ねると
もう家のモノは燃やすのだというので
了解を得て持って帰ることになった。

その楽器たちは
おばあのお父さんのものだという。

お父さんは
三味線を弾きながら
とても上手にうたう唄者だったそうな。
おばあもうたが好きで
昔はみんなをうたっておどらせていたという。

集落に戻って
楽器たちを
おひさまに干した。

おばあは、チヂンをたたいて
小さな声でうたいだす。

これでみんなで浜にでてあそぼう!
とうれしそう。

お父さんの楽器に出会って
うれしそうな
89歳のおばあが
少女のようにみえた。

きょうが
こんな日になるとはおもわなかった。

いい日だった~と伝えると
おばあが胸の前で手をあわせるので
わたしも胸の前で手をあわせた。

楽器たちは気持ちよさそうに
おひさまにあたっている。

ほんとにいい日だった。

*ふやよみ あおきさとみ*

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