パウンドケーキのはなし

4つの材料で作る基本のケーキ

パウンドケーキはフランス語で
"Quatre-quarts " キャトルカール
4つの食材を4等分、同じ量を混ぜるシンプルなケーキを表す。バターの香りと焼き込んだ粉の旨み、型に合わせた分量を覚えておけば手軽に焼けるのも魅力だ。

シンプルが故にコツを押さえるとぐっと美味しく焼き上がる。
現役パティシエが実際にやっている方法をまとめたので、ぜひ実践してみてほしい。

  1. 下準備のコツ
    ①食材の温度
    ②オーブンの設定

  2. 仕込みのコツ
    ①空気を含ませる
    ②卵の乳化
    ③粉を混ぜすぎない

  3. 焼きのコツ
    ①膨らみを助ける
    ②焼き上がった後の保湿

  4. アレンジのコツ

基本の材料はこちら

パウンドケーキ型1台分 17cm×7×7
(このサイズが一番一般的で100円均一などでも簡単に手に入りやすい)

無塩バター  80g
グラニュー糖 80g
卵      80g
薄力粉    80g      

以上これだけ。全てスーパーで揃うはず。
型はいろいろあるが、初めてなら紙の型をオススメしている。型はあるのに作ってないな…と気に病むこともなく使い切れると気持ちも楽だと思うのだが、どうだろうか。

1.下準備のコツ

①食材の温度

食材の温度は同じくらいにするのがいい。
厳密に0.1度まで揃える必要はない。
食材の足並みを揃えるようなイメージだ。

・バター ・・・ 冷蔵庫から出したてはNG
硬すぎて扱いにくく、卵と仲良くできない
少し固いマヨネーズ程度の柔らかさがベスト
✳︎溶かしバターで作るレシピもあるが今回は割愛させて頂く

・卵 ・・・ 冷蔵庫から出したてはNG
混ぜて柔らかくなったバターを冷やして固めてしまう→これがダマの原因になる
作り始める一番初めに冷蔵庫から出しておくと良い

グラニュー糖と薄力粉は温度はあまり関係ない。湿気で固まっていると良くないので、ふるいにかけたり指で塊を潰しておく。

②オーブンの設定

家庭用サイズのオーブンは温まりやすいが同じくらい冷めやすい。扉を開けて型を入れて閉めるその数秒でも温度は下がる。

焼き菓子は生地中の水分を加熱した時の水蒸気のパワーでふっくら膨らむので、なるべく温度は下げたくない。

そのためにレシピより高めに予熱しておく。

レシピに170℃で予熱とあれば180℃。プラス10℃を見ておくといい。レシピ上、予熱と焼きの温度がすでに違う場合はそのままで構わない。


2.仕込みのコツ

①空気を含ませる

今回の作り方は、

バター
①グラニュー糖
②卵
③薄力粉

この順番で混ぜていく、パウンドケーキの代表的な製法だ。冷たいバターが固形を保つ性質を利用している。

ポイントはバターに空気を含ませるためによく撹拌すること。
一番簡単なのはハンドミキサー。あれで一気にパワーをかける。無ければ泡立て器で構わない。少しほぐしたバターにグラニュー糖を加え撹拌していくと、黄色かったバターがだんだん白くなっていく。そこまでいけばOK。

夏場などに途中でバターが溶け出した、ツヤが出て水っぽくなってきたと感じたら一度冷蔵庫で休ませるのも手だ。バターなので冷えると固まり、状態が少し戻る。完全に溶けた液体のバターを冷やしても復元はしないので要注意。

②卵の乳化

焼き菓子のコツは " 乳化 " 。
水と油がいかに綺麗に混ざるかが勝負。
ドレッシングをイメージして欲しい。使う前によく振ると全体が均一になる。
あれがまさに乳化だ。

パウンドケーキで言うとバター(油)と卵(水)。
ここが上手く繋がるとほぼ成功と言っていい。そのための下準備が生きてくる。
温度で足並みを揃えた食材たちは乳化しやすい。適温のバターは卵と馴染みやすく、適温の卵はバターを冷やさずその柔らかさを保つ。その結果、空気と水分が上手く共存したいい生地になる。

押さえるポイントは、慌てず丁寧に。
卵は必ず最低4回に分けて加える。慌てない。一度に入れるのは生地に優しくない。加える度にしっかり撹拌・乳化させてから次、を繰り返す。慌てない。

乳化の目安として、
・ボソボソとそぼろ状になっていない
・ボウルの側面に生地を広げてもダレない
が分かりやすい。
逆にこの2点に当てはまっている場合、上手く乳化できていないことが多い。

そんな時はほんの少し薄力粉を加えると良い。
油と混ざりきれていない水分を薄力粉が吸収し、生地にまとまりが出る。

この後薄力粉を合わせる工程があるので「だったら乳化させる必要もないのでは?」と思う方もいるだろう。私も思った。
結論、それでもパウンドケーキは焼ける。
しかし美味しくない。ボソボソのパサパサで口当たりが悪く、材料の一体感が無い。
せっかくなら美味しいケーキにして欲しい。悪いことは言わない。乳化はした方がいい。

③粉を混ぜすぎない

薄力粉は水分を吸収するとグルテンを出す。
このグルテン、混ぜすぎると分泌過多で頑張りすぎてしまう悪い癖がある。生地が固くなるのだ。よくレシピで出てくる「さっくり混ぜる」はそれを防ぐための表現だ。

道具はゴムベラを使う。これも100円均一で手に入る。ふるっておいた薄力粉を乳化させた生地の上にまんべんなく広げる。

・ボウルの右上2時の方向から切るようにゴムベラを入れて7時の方向へ進める。
・左手でボウルを90度反時計回りに回しながら
・右手のひらが上に向くように手首を返す。ボウルの側面をゴムベラがなぞる。

手順はこれだけ。これをリズム良く繰り返す。
粉を生地の中に散らせていくイメージで、決して練らない。力を抜いて、さっくりさっくり。


3.焼きのコツ

①膨らみを助ける

パウンドケーキの型は長方形かつ深さがある。
どうしても中央に火が通りにくい形をしているため、焼く前の生地の形をこちらで一手間加えてあげるのが大切だ。 

・型に生地を流した後、2.3回15cmくらいの高さから型を落として空気を抜く
・表面を平らにならす
・長方形の短い辺に向かって中央から生地を擦り上げる。左右対称になるよう両サイド行う
→トンネルを上下逆さまにしたような状態。
熱が入りにくい部分を薄くすることで生地が上に膨らみやすくなる上、全体の加熱具合も均等になる。

180℃で予熱した170℃のオーブンで40〜45分焼くのだが、15分ほど焼いたら型の中央、長辺と並行になるようにナイフで切れ目を入れる。
加熱によりケーキ表面の生地が固まり始めたところで、空気の逃げ道を作ってあげる。内部にこもっていた水蒸気はそこから抜け始め、そのエネルギーが生地を膨らませる仕組みだ。
見た目も美味しそうに焼けるので是非。


②焼き上がった後の保湿

焼き上がった生地は空気に触れると一気に乾燥していく。型から外したら熱いうちにシロップを打つのがいい。

シロップのレシピ
・グラニュー糖 50g
・水      150g

を鍋に入れ火にかける。グラニュー糖が溶ければOK。焼いている間に作っておくといい。
ハケで塗っても霧吹きで吹きかけてもいいがとにかくたっぷり染み込ませるのが大切だ。意外と甘味は感じないので心配はいらない。
その上からラップで包んでおけば保湿は完璧。
冬場のお肌のように念入りに。一晩休ませるのがいいが、すぐに食べる場合も粗熱が取れてからがオススメだ。


4.アレンジのコツ

基本となるこのレシピ。私が実際に作って簡単で美味しいアレンジをいくつか紹介しておく。

・レモン&ホワイトチョコ
レモンの皮は生地に混ぜ込んで、焼き上がった後溶かしたホワイトチョコレートのチョコペンで仕上げる。酸味と甘味が程よく楽しめる。

・紅茶&くるみ
ティーパックの中身をそのままと、おつまみ用の無塩くるみを砕いて一緒に混ぜ込むだけ。香りと旨みが両方あって美味しい。

・桃&クリームチーズ
ジューシーな桃とクリームチーズの塩気がいい組み合わせ。桃などフルーツは水分が出るので混ぜる前に少し薄力粉をまぶしておくといい。

分量は食材によって変わってくる。

・ココア・抹茶・紅茶などパウダー系
→生地全体量の20%まで増やしてOK
20%以上増やす場合は薄力粉を減らす
・フルーツやチョコなど具材系
→粉の分量より増やさない
・卵・生クリーム・ピューレなど水分系
→生地全体の20%以内に収める

これらを守ればほぼ失敗することは無い。
100円均一の製菓材料などはちょうどいい分量が1パックになっているので、そのまま使えて非常に便利だ。

まとめ

長くなってしまったが要点をまとめてみる。

・バターは硬めのマヨネーズ
・卵はぬるめを少しずつよく混ぜて
・粉はさっくり切り混ぜる
・オーブンはちょっと高め設定
・生地は両サイドを高く真ん中を低く
・15分で切れ目を入れて
・焼けたらとにかく保湿でしっとり

以上がパウンドケーキを美味しく焼くコツだ。
基本的には混ぜるだけなので、お菓子作りのスタートとしては手を出しやすいのではないだろうか。ぜひ試してみて欲しい。

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