見出し画像

九州大学准教授が語る「組織の自律性を高める最も効果的な方法」は「〇〇をする」こと

こんにちは、がーすーです。
今回は、3月15日に開催された九州大学大学院人間環境学研究員准教授の池田浩先生のウェビナーの参加レポです!

「感謝をすることがなぜ効果を持ち、組織力を高めるのか?」人の感情や心の動きと、感謝として行動に移したときに、人にはどんな変化が現れるのか?心理学の知見から紐解くとのことだったのでとても楽しみにしていたウェビナーです! さっそく始めていきたいと思います。

ネガティブ感情をどうマネジメントするか?

とても頑張った企画書を提出したときに、上司の反応がイマイチだった。丁寧にやった仕事に対して「まぁ、当たり前だよね」と言われる……誰しもモチベーションが上がったり下がったり、という経験ってありますよね。
冒頭、いつもUniposウェビナーでは視聴者に向けてQuestionがあるのですが、「モチベーションが下がるときはどんなときですか?」という質問に対して
・全否定
・君じゃなくても誰でも一緒だね
・反応が鈍い
・そんな仕事していて楽しい?
・わかるけどねぇ
・無反応が多い
・誰に許可取ったんだ?

という意見が多数上がりました。
逆に、「モチベーションが上がるときはどんなときですか?」という質問に対しては
・もう一人君がいてくれたら
・任せたよーさすが!
・〇〇さんがいなかったら出来なかったよ
・誰も見ていなかったことを褒められた時

・自分の予想を超えた反応(思いがけない感謝)
など、色々と挙がっていました。

それを受けて池田先生は「きちんとやって当たり前な仕事ほど、精神的な報酬が必要だ」とおっしゃっていて、なるほどなぁ、確かにとうなずいてしまいました。

モチベーションが高いと会社への帰属意識や、自律性を持った動きは当然増えていきますし、会社への利益に直結していくので、それぞれ個人のモチベーションという「心の持ちよう」を、負から正へと転化することが可能なら、それはとても有意義なことなのでは?と思いました。

ポジティブな感情は短く、ネガティブな感情は長く続く

人間は感情で動く生き物という話は聞いたことがありませんか?
物を売るときは感情で売れという手法が有名(ストーリー性のある商品説明など)ですが、人のネガティブな感情は長く続くことに対して、ポジティブな感情は一過性のものであるという話をしてくださいました。

では、長く続くネガティブ感情をどうやって予防するか、一過性のポジティブな感情をどう持続させるかはどうしたらよいのでしょう?ポイントとして以下のようなことを挙げられていました。

ネガティブな感情を予防する「腐ったリンゴ対策(従業員のネガティブ感情は職場全体に​蔓延し、機能不全に陥る)」としては
1:受動的にネガティブ感情を対処するのではなく
2:先取りしてポジティブな感情へと転化させておく
ことが大事とし、

ポジティブな感情を持続させるには「感謝の効果」を取り入れることで、
1:生理的効果
2:精神的健康や幸福感
3:利他的行動
といった効果が生まれてくるとおっしゃっていました。

実は「感謝される」より「感謝する」方が感情に作用する

ポジティブな感情を多く体験することで、会社への帰属意識が高まり貢献度合いが高まり利益につながるということはわかったのですが、では、それをどうやってシステムに落とし込めばいいのでしょうか?

それを語る上でまず、池田教授は「感謝」を「する側」「される側」にとってエビデンスを提示してくれました。

実は、感謝と心拍数は密接に関わっており、感謝された人よりも、感謝した人の方が、心拍数が穏やかになり、感謝を感じると非常に穏やかな気持ちになるという実験結果があり、それに伴い、脳波もα波が出ており非常にリラックスした状態になるのだそう。

感謝体質になるために重要なのは実は、「する側になる」ということでした。

過去にEmmons & McCulloughという方が2003年に行った「感謝日記」では、毎晩感謝を思い出し書き出すことを10週間繰り返すと、対象者の相対的幸福感が増えていたという実験結果があり、他にも、感謝の手紙を書いて相手に対して読む行為を続けると、1週間〜1ヶ月後でも幸福感が持続するという研究があったということです。よく結婚式で見られる感謝の手紙を読む行為は、確かなエビデンスに基づいたイベントだったりするのでしょうか。

重要なのは「意識して言語化する習慣づけ」をするということ。意識して言語化し、相手に伝えることで非常にポジティブな効果があるということなのです。

この話についてはかなり驚きました!
『感謝されることの多い人ほど、人に多くの幸せを与えているのだから、幸せだろう』と思っていたのですが、実は『感謝をすることが、実は自分の心に最も作用し、幸せな感情を生み出す』ということなのですから。

振り返ってみると…そうかもしれないなと思いました。

普段、ありがとう!と言われるとその一瞬、確かに嬉しいですが、それは気恥ずかしさもありあまり記憶に残っていないことが多いです。逆に、普段から当たり前のように接している人に自分の期待以上のことをしてもらった時は、心から「ありがとう」という気持ちになり、その出来事を長く覚えているものです。

感謝する回数が多いほど、業務に直接的に作用するのか?答えはNO。ただし…

池田教授は、健康食品を中心とした通販販売の会社で「感謝ミーティング」を毎日やっている会社を対象に、あるアンケートをとったそうです。

毎日の感謝ミーティングへの参加率をアンケートしたところ、毎日参加している社員が割合として1番多かったそうです。一般的な社会人の感謝特性(感謝をする頻度の高さ)が平均値は2.84(5点満点)だったのに対して その会社の平均値は4.34と、異常なほど高いスコアを叩き出したそうです。

ただ、このことが直接的に業務の利益に直結するかと言えば因果関係は認められなかったそうですが、ただ、感謝をしている人ほど、「他者視点に立つ」という他社の視点から物事を考えるようになり、それが全体的な強力行動につながっており、将来を意識した先取り行動を引き出していたということです。

そのエビデンスとも言えるアンケート結果がこちらです。

・日頃の出来事で感謝すべき出来事に意識化するようになった
ネガティブな出来事を学習すべき意義ある体験として捉え直すことができた(クレームではなくチャンス:改善機会)
・職場の同僚に目を向けるようになった

まさに「ネガティブを事前に予防しつつ、感謝する頻度を上げる環境を作ったことで、社員の貢献度、帰属意識の向上に役立ち、最終的に利益につながった」好例と言えると思います。

他にも、感謝の環境づくりとして「感謝カード」を導入している会社でも面白いエビデンスが入手できました。

サンクスカードは、導入4ヶ月目では頻度が下がってしまっていたのに対して、その後徐々に、感謝カードを渡している頻度が高い人ほど、仕事への意欲の向上や、上司や同僚とのコミュニケーションの向上、チーム内の一体感の向上、チーム・部署内での連携の向上の効果を実感していたということです。
そのことは、1年後にもっと顕著に現れていたということで、しっかりとした文化が醸成されたことで徐々に波及していった効果が現れてきた結果と言っても過言ではないでしょう。受け取った枚数と慣例性は見られなかったことに対して、渡した人の方が効果が顕著だったというのも「感謝する側」が意欲向上へとつながることの表れと見て取れます。

単発的に、瞬発力があるわけではないですが、感謝を「する」ということで良好な人間関係を構築するだけでなく、互いの視点に立ったコミュニケーションによって、創造的なコラボレーションを生み出すことも可能であり、その未来にある伸び代は未知数です。

どうやったら感謝習慣を根付かせることができるのか?

エビデンスに基づいた「感謝することによって起きる会社への良い影響」については理解しましたが、結局は「やらされ感」「強制感」を感じる社員がいたり、効果が分かりづらい「感謝することの意義」についてはどうやって浸透させていけば良いのでしょうか。

参加者からの質問について、池田先生は「良いらしいよといったふわっとした言い方だけではダメで、良さをまず伝達者が理解する/やり続けてみるということが重要」だといういうことをおっしゃっていました。なので、まずはやはり先頭に立って上司や導入推進者、代表が率先して行動を起こすことが大事だそうです。

実際、先出の感謝ミーティングは社長からやり始めてみたそうで、参加している社員も最初は少なかったそうですが、徐々に参加者から「いい気持ちになるから、自発的に参加するようになった」との声が上がり、「出ないと気持ち悪い、なんかスッキリしないよね」と、習慣づいたということでした。

他にも、経営会議で感謝を伝える行動をお試しでやってみる、などマネージャー同志が行動する部署は成功しやすいということもおっしゃっていて、
「最初はマネージャーを集めて送りあう行動をさせる」「やってみて、本人にわからせるしかない」との意見もあがりました。

信頼とは、その人を知ることであり、その環境を作るのが心理的安全性を高め、職場の雰囲気を作る。

心理的安全性を語る上で、欠かせないのがお互いの信頼関係です。信頼関係を気づくにはまずお互いを知り、知る場を作ることが大事。みんながオープンな場所で伝える=じゃあ私もやってもいいか!と思ってもらうことが大事で、建前としての機会や、きっかけの提供をすることで、お互いの信頼関係が形作られていくそうです。

感謝の反対は「当然の権利」。与えられているものを「得難い」と感じる心が感謝を生む

ある化粧品会社の事例では、時短、産休育休を取る人がいると、その制度が「当然の権利」として受け入れられるから、それを支える人から不満が出るといったトラブルが多発していたそうです。

もし人が感情で動く生き物なら、仕事抜きにして自分のことを認めて褒めてもらえる人を嫌いにはならないですよね。もらったら返したいと思うし、純粋にやる気に繋がります。それが仕事でのことなら努力するし、利益にも直結していきます。

普段から、今ある自分の境遇が「当然で当たり前の権利」と思っているなら、それが他の境遇や人から見たらとても得難いことである、という実感が伴うほど、お互いに対しての感謝の気持ちが芽生え、自然と「ありがとう」と言い合える環境になっていくのです。

感謝しなきゃと思うことではなく、1日を振り替えてそういえば…レベルで感謝するということから始めることが大事。そうおっしゃっていました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

心理学から紐解く感謝の効果について、以上でレポートを締めくくりたいと思います。

今までは「感謝」が大事、と頭ではわかっていましたが、「感謝することの方が自分の精神が安定し、幸福感も増しやる気につながる」ということは目から鱗でした。何をどう褒めるか、ということももちろん重要ですが、常日頃から「自分は一体どんなことに有り難いと感謝することができているのだろうか?」と自問自答しながら過ごすことで、仕事のみでなく、普段からの家族との関わりも新しい角度から捉えることができるような気がします。

会社のエンゲージメントの話をしているのに、人生の質を高めるにもとても有用な、内容の濃いウェビナーだったと感じました。

毎回、Unipos開催のマーケウェビナーでは各界で有名な方をゲストとしてお迎えして、様々な角度から、経営課題について深掘りしていきます。
毎回参加してくださる方もいるほど盛況で、特徴的なのが「双方向」であること。ウェビナー登壇者の方への質問ももちろん、参加者の方のコメントが常時流れている状態でのウェビナーでは、ライブ感があり様々な意見を伺うことができて刺激になります。

ウェビナーの日程などはこちらから確認できますので、もし興味がある方は参加してみてください!完全無料です^^

それでは、次回更新をお楽しみに!




株式会社Beeworks→Fringe81(広告代理店)に在籍中。女性ファッション誌やDM、webデザインをやっています。小さい頃の口癖は「私強い子だから泣かないもん」