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野菜嫌いの自炊レポ

「春の連続投稿チャレンジ」に便乗した執筆ペース向上週間。第六回は「 #習慣にしていること 」についてお話していく。


といっても、正直飽き性な自分を省みて、この習慣は恐らく近々なくなるだろうなと思っている。なのでこれは、頑張っていた過去の自分を思い出すためのアルバム作成に近い。

自炊のススメ

近頃の私は、自炊に奮闘していた。

一人暮らしを始めた頃は、一日三食、ずっと玉子かけご飯を食べていた。たまにブルガリアヨーグルトを買ってきて、蜂蜜も何もかけずただそれだけを貪る、そういう馬鹿みたいな食事で毎日を過ごしていた。

自炊の必要を感じたのは、ブラック企業から足を洗って数年たった頃だった。ふと、「こんな粗末な食べ物ばかりでは、人間的に胸を張って生活していると言えない」「畜生と同じだ」と思った。玉子かけごはんも、ヨーグルトも、粗末な食べ物ではないし悪い食事ではない。ただ、それを毎日無味乾燥とした気分で無感動に機械的に口に流し込む自分が、なんだか俯瞰して見て恥ずかしいと感じるようになった。大袈裟に言えば、感情を取り戻したのだと思う。

みんなの味方、カレー

さて、自炊をはじめて最初に定番化したのは、忙しい主婦も料理ビギナーの学生も自炊をしないお子さんも、みんな大好きなカレーである。
これは「上手く料理出来ない」などと始まってもいないのに引け腰になる面倒くさがり屋にもおすすめの万能メニューだ。

  1.  野菜を口に入るくらいの大きさに切る。口に入るなら小さくなってしまってもよい。

  2.  大鍋に何かしらの油を引き、野菜を炒める。

  3.  10分ほど経過したら水を入れ、蓋をして30分以上放置。

  4.  気づいたタイミングで火を止め蓋を開けて市販のルーを溶かす。煮込むと良いが面倒なのでこれで完成。

最初の自炊なんてこんなもんで十分だと思う。一回頑張るとこのカレーで一週間は生活していける。ジャガイモなどの冷凍に向いていない野菜を避ければ冷凍可能だし、冷凍による長期保存を予定していないなら、なんでも入れて良い。セロリもオクラもキャベツも長芋も、なんでもカレー味にしてしまえば良い。一度火を通すと食材の痛みに対する焦りが低減する。
おすすめ食材を挙げるとすれば、冷凍でうまみが増えるキノコ類だ。キノコのうま味成分グアニル酸は、冷凍によってキノコの細胞を破壊することでより溶け出してくる。

しかも、カレーはレンチンでも調理可能だ。レンジ加熱で可食になる食材をタッパーに詰めて事前にやや温め、その後カレールーを一つ足して1分追加加熱する。不思議とルーは焦げ付かず、野菜の水分で程よくのばされたルーが完成する。
毎食玉子かけごはんで生きていた人間は、この万能料理に何度サムズアップしたか分からない。

栄養食に寄り道もアリ

何事も、はじめの内は目新しいことだらけでウキウキだが、当然後に待っているのは停滞期、マンネリというやつだ。
自炊をはじめて数年後、コスパとタイパを求めてプロテインドリンクや完全栄養食に手を出した。
結果をいうと、長続きしなかった。栄養価とそのバランスは良いのだろうが、如何せんそこまでコスパを実感できない。それに、一度買うとずっと同じ味かつ味自体はそこまで好みでないというのが、カレーに甘やかされ食感と風味の違いを楽しむことに目覚めた私にはきつかった。
とはいえ、不味くとも手軽に食事が続けられたのは良い勉強になった。

慣れたら生野菜を

春菊と甘夏のサラダ、ピンクペッパーのせ。約48kcal 

完全栄養食に手を出して、ようやく自炊の新しい利点を見つけた。
自分好みの味が作れることと、ローリスクな挑戦が続けられることだ。

しれっとタイトルに書いたが、私は野菜が嫌いである。
酸っぱいのが白菜、苦いのがレタス、臭いのがキャベツ。こんな判別をするくらい野菜が大の苦手で、今でも野菜のことは別に美味しいと思っていない。

あるとき自称野菜好きの人間が、「茄子が苦手なの?」「茄子が美味しくなる方法を教えてあげる。油をひたひたにかけて焼くのよ」と説教してきて、ますます不満が募った。
本人には教えてくれた礼を述べたが、私は内心こう思っていた。
「おい待てよ。ひたひたになるくらいって、それはつまり油が美味しいんじゃないか。油で茄子を誤魔化しているだけで、茄子は徹頭徹尾美味しくなっていないじゃないか」と。
「私は魚や肉が好きだが、刺身に醤油をかけなくても美味しいと思っているし、肉も塩さえ振らず素焼きを食べるぞ。むしろ食中毒の危険がないなら好んでユッケを食べる。なんで味付けしてない野菜を美味しいと言わないんだ。なぜ『茄子が苦手なの?なんで?食感?そうなの…この食感が良いのに』と素材そのままの魅力を語る方向に行けないんだ」と。

でも、それである意味諦めはついた。野菜は美味しくない。野菜好きを自称していても、何割かはドレッシングや油や塩のおいしさを野菜のおいしさだと勘違いしているのだと理解した。

そうなってくると、野菜を食べるハードルが少し下がった。
あの美味しくない完全栄養食や、あの美味しくないプロテインドリンクを二年食べ続けられたのだから、野菜も食べられるはずだ。と思えた。

美味しくなくても良い

食材に感謝する心があればそれで良い。不味いからといって捨てないこと、栄養価や、低カロリーであることのメリットを踏まえていただくこと、この二つを意識して食事をするようになった。そして、茄子と油のように、組み合わせを変えれば好きになれるかもしれないと考えるようになった。

そうすると、料理に対する見かたはまた一つ多角的になる。美味しい美味しくないとは別に、面白いかどうかという尺度が加わったのだ。

以前はパイナップル入り酢豚や生ハムメロンに首を傾げていたが、面白い組み合わせだな、真似してみようと思うようになった。
どうせあの砂のようなプロテインよりはマシなのだから、試してみたらいい。そうして色々試してみると、この組み合わせに限っては食べられるなと思う料理が登場する。
先に写真を載せた春菊のサラダのように、やっぱり好きにはなれないけど、見た目は好きだから悪い思い出にはならなかったという料理も現れる。そして、何もかも失敗したと思っても、自炊だから少量しかできていないし、今後外食で頼まなくて済むと思えた。
それこそ、場合によってはカレーに突っ込んでしまっていい。カレーはほぼすべての野菜を包み込んでくれる。

毎日に極小の挑戦をもたらす

そのとき旬の野菜を一点、頑張って買ってみる。そしてレシピを検索して、面白そうだと思う料理に挑戦する。マンネリになりがちなフルリモートの引きこもり生活に、ローリスクかつお手軽に新しい風を吹き込む方法だ。

新生活が始まる四月、一人暮らしに挑戦する人も、フルリモート業務が始まる人も、「時々料理をする」という新習慣に手を出してみてはいかがだろう。

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