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霞ヶ浦に潜む異形のアメナマ!? #3

 霞ヶ浦にブルーキャットフィッシュがいるという噂の検証から始まった外来怪魚の謎解き。
 とにかく相手がでっかいチャネルキャットフィッシュ。教師と生徒で結成した調査隊は、ひたすら釣りまくり、迫力満点の理科的探究を試みてきた。ここまでのストーリーはこちらから!

コブの”謎”を解くために剥ぐ

 異形化した雄の頭の怪しさを際立たせるのが、頭のコブである。

このコブが怪しさを際立たせる。

 我々は歯型痕の検証と同時進行でコブの解明にも着手した。動物のコブには色々な役割がある。有名なラクダは水分を貯蔵しているし、コブダイのコブは脂肪を溜め込んで頭突きに使うために巨大化する。ちなみに、コブダイは大きいほどモテるらしい。

 では、アメナマのコブの正体は何だろうか。
 そこで、大学の同級生で現在は国立科学博物館に所属する研究員N氏の協力を得て、頭皮を剥いでみることにした。
 コブダイにヒントを得て「脂肪かな?」とも考えていたが、皮を剥いでみるとその下に眠っていたものは、ただの筋肉であった。

雌:枠内が顎を閉じる筋肉。
雄:コブの下には膨れた筋肉があった。

 N氏から、その筋肉が「閉口筋」という、いわゆる顎の筋肉であることを教えてもらった。
 なんと、コブの正体は噛み付くために肥大した顎の筋肉であり、このことは「生傷の正体が雄の歯型痕」という事実と見事にリンクしたのだった。

異形化の”謎”明らかに

 ここで歯型痕とコブの関係性が繋がった。私も隊員達もパズルのピースがカチッとハマる音が聞こえたような気がした。
 おそらく、雄は卵を守るために顎筋が発達しているのだ。また、卵を守り終えて腹ペコな雄は強靭な顎筋で他の魚の卵を襲っているのだろう。そして、産卵時期が遅い奴ほど襲われる危険が増す。「あ、だからボロボロになってしまうんだ…。」
 我々は自然界の厳しさに震えた。

 こうして、雄の頭の異形化は、卵を守るための武器あると同時に、他の卵を襲うときの武器でもあることが解明された。そして、U君は晴れてこの調査内容を提げて水産学会や魚類学会などで高校生発表を行うことが出来た。また、その場では、「歯型痕」の数からその水域に生息している個体数を推測していくことのできる可能性をアドバイスしていただいた。機会があれば、この調査研究はまだまだ深掘りできそうである。

 一方で、この魚が特定外来生物に指定されていることを忘れてはならない。#1でも紹介したが、遊泳力が高く大型化する「ナマズ」は元来日本の生態系に存在していない。だからこそ、この魚は日本の生態系では無敵に近い。そして
残念なことであるが、国内在来種の宝庫である琵琶湖水系でこの魚の繁殖が確認されてしまっている。何故そんなことになるのであろうか。
 霞ヶ浦への定着も好ましいことではないが、起きてしまったこととして受け入れざるを得ないし、その恩恵に預かっているのも否定しない。とはいえ、無秩序に放流が繰り返されるべきではないと考えている。都合のいい話に聞こえるかもしれないが、これ以上の生息域拡大は起きないで欲しいと強く願っている。

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