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無責任男

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

勝手な言い方だが、昔の書店員は無責任だった。無責任だったから商品を面白がることが出来た。無責任に陳列していたからお客が喜んだ。だがしかし、昨今の書店員は責任感が強い。売れるかどうか分からない商品は仕入ない。売れ残ると困るから。いや1冊も売れないという事態にでもなれば店長に何を言われるか分からない。もしかしてクビ!? 恐る恐る注文してみる。売れたら拳を握り締めガッツポーズ、売れなかったら版元に返品了解書をFAXする。努力したのですが、残ってしまいました。今後このようなことがないようにします、みたいな文書を付けて。

ああ、じゃま臭い作法だなぁと思う。昔は努力した後の返品は堂々としていた。頑張ったけど売れなかった。売れ残ったのは売れない本を作った版元さんの責任ですよねー、みたいな感じだった。売るときも堂々と、返す時も堂々としていた。胸を張って仕事をした。それが今、書店員は何か責任を背負って仕事をしているように見えてしまう。楽しくやろうぜ!と僕が言っても業界の仕組みが変った今、むなしいだけだ。

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