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LOCAL PRODUCE BOOK (4) 「ターゲティング論」

続いては「ターゲティング」について。

前述の企画フレーム【誰に、何を、どのように、どうなって欲しい?】の「誰に」と「何を」をもう少し細かく書いてみたいと思います。

「誰に」 が、超大事

企画や情報発信をするときなど誰かに何かを伝える際は、「誰に」の部分が最も大事です。「誰に」その情報を届けるのか。ここが全体の方向性を大きく規定します。

例えば、ある飲料水をPRする際、東京在住の20代に向けて情報を発信する場合と、盛岡在住の60代に向けて発信する場合では、当たり前ですがライフスタイルやニーズが異なるため、必然的に情報の伝え方も変化します。つまり、この「誰に」が変われば、その後の「何を」「どのように」の部分も変化するのです。

それでは、どうやって「誰に」のターゲティングの精度を高めればいいのでしょうか。どのようにターゲットのニーズやインサイト(内側)を掴めばいいのでしょう。大企業の社運をかけた新商品のマーケティングではここに何百万円もかけて調査をしたり、ペルソナ(想定する架空のターゲット像)を設計するものですが、繰り返すように、お金も時間もないローカルで戦う場合はそこまでのコストは割けません。もう少し簡易的にターゲティングを考えてみましょう。

まず、一般的なマーケティング本を開くと、以下のような用語が並んでいます。アンケート項目のような「デモグラフィック」と、属性に囚われず内面を探る「サイコグラフィック」です。


90年代や00年代の初期などひと昔前は、例えばTV番組で放送されているプロ野球中継の間にCMを流せば、大体50代男性には情報をリーチすることができました。確かビールや自動車メーカーのCMが多かったですね。

こうしたメディアが少なかった時代は、情報を発信する側も、情報を受ける側も選択肢が限られていましたので、デモグラフィックの情報だけでターゲティングしたとしても、ある程度目的を達成することができました。


一方で、00年代後半から10年代になって、スマホやSNSが日常化してくると、情報の流通パターンが複雑化し、また人々の趣味趣向も爆発的に多様化しました。いや、昔から多様化していたのだと思いますが、それがより顕著になり、全員が同じ情報を取得する時代ではなくなりました。

例えば同じ地域に住んでいる同じ年齢の人同士だとしても、YouTubeで観ているコンテンツはバラバラで、全然違うものを日々消費している可能性が高いです(大学生にアンケートをとると見事にバラバラでおもしろいです)。

超・前の情報ですが、こういう図を使って情報爆発を教えてくれた広告の本がありました。書籍化する際はしっかりした図を引っ張ってきます。が、要するに情報が溢れすぎ時代だよねと。2005年でこれって、2024年は一体どうなっているのでしょうね。


そんな時代となった今、どのように情報を届けたい相手に伝えることができるのでしょう。「おーい!」と大きな声で呼んでも、的確な回路で声を流通させないと届かない時代になりました。その一方で、SNSを中心としたネットワーク内では情報は容易に伝わっていきます。「広告」のように広く告げる時代は終わり、個別に届けていく時代に変化しているともいえます。


という話は、実は、広告系の書籍には15年ぐらい前から書いてある内容だったりするのですが、前提ということでお伝えしました。「情報発信論」については別の章でお話ししますね。


さて、そんな時代のターゲティング。基礎として大事なポイントとしては、デモとサイコの両方を駆使して、的確に相手を把握することです。そのぐらいで十分。デモとかサイコとか、覚えにくいので、ここでは「ハード」と「ソフト」としましょう。ハードとソフトを書き出しながら、ターゲットの輪郭をハッキリさせていきます


調査データで全体を俯瞰し、身近な人たちで温度感を感じる


ここからは手法についてお話ししますね。


①調査データで全体を俯瞰する

先ほどの「ハード」の部分に関連しますが、まずは国や県、一般企業が出している調査データを活用しましょう。自分がこれからやろうとしている事業やサービスに関して、ターゲットになり得る世代、居住地、属性、またその趣向などが見えてきます。

そもそも、これから何を始めようとしても世の中にはほぼ前例があり、それに近い調査データが山ほど転がっています。正しいデータを見極めないとブレてしまいますが(ネットリテラシーについてはまた別途)、大まかに全体感を捉えるのであればこのぐらいでも大丈夫です。


②温度感を持ってターゲットを「人」として “感じる”

上記のデータでターゲットの全体感はなんとなく分かりますが、もう少し温度感を持ってターゲットに迫りたいですよね。なんだか「ターゲット」というと、“どこかにいるであろう人"というちょっと冷たい感じもするのですが、その人も普通に生活してるわけなので、もう少し手触りのある感じで掴みたいところです。そうすることでプランニングの方向性にも手応えを持つことができます(ここは先ほどの「ソフト」を探るプロセスともいえます)。


まずは、自分の身近な人で、ターゲットに近そうな人を思い浮かべてみましょう。

つぎに、その人がどんな暮らしをして、どんな趣味をもち、どんな食べ物が好きで、どんな音楽を日々聞いているかを想像するのです。また、どんな製品や服を身に付けて、部屋には何がおいてあり、どんな雑誌やYouTubeのコンテンツを観ているでしょうか。

どんな暮らしをして
どんな雑誌を読んで、どんな音楽を聴いて
普段どこで買い物してる? 
そういう流れでターゲットの輪郭を自分がイメージできるぐらいまで明確にして、デザインなどのディレクションをしています


そうしたことを踏まえた上で、この人(仮に友人)が、どんなデザインだったら反応すか、どんなコピーだったら刺さるか、どんな価格帯、顔つきの商品だったら欲しいと思うかを想像してみるのです。また、むしろ直接聞いてしまうのもアリです。簡易アンケートですね。「今度こういう商品を作ろうと思うんだけど、どう思う?」と。

僕は、何か新規のプロジェクトが始まる際、ターゲットに近そうな人にババっとDMを送り、何人かにヒアリングします。そうすると大まかな方向性を掴むことができ、プランニングの方向性が見えてくるのです。身近にいない場合は、極力近そうな人か、またはフラットで庶民的な意見をしてくれる親や友人に意見を聞くようにしています。

加えて、もう少しその業界について勉強したいなと思う時は、本屋に行って関連しそうな本や雑誌を3冊買って読み込みます。大体3冊買えば、共通性が見えてくるし、その業界のルールや大事なポイントが見えてきます。「あぁこういうところが外しちゃいけない肝なんだな」みたいな感じです。

最近、大学生にアンケートをとったら、普段雑誌を読んでいる人が23人中4〜 5人でとても驚いたのですが、雑誌は、一流の編集者たちが、特定のターゲットに向けて、"いま"響くように編集した情報・言葉・デザインが掲載されている知のデータベースなので、事前にプランニングする際は、大いに活用した方がいいと思います。そこで使われているコピーや色味、トーンはデザインや情報を発信する際に非常に役立ちます。



③とはいえ、モニターテストをして方向性を微調整しよう

モニターテストとは、事前に行うテストのことです。「モニター」という言葉は馴染みがないかもしれませんが、正式にリリースされる前の商品やサービスを試験的に使ってもらい、アンケートを聞くような場合は「モニター調査」と言ったりしますね。アンケートに協力してもらう代わりに通常よりも安い価格で提供したりするので「モニター価格」と言ったりします。

新たに何か始める際、この「モニター」的な考え方は結構大切です。というのも、いきなり100点の状態で商品・サービスをリリースできれば良いのですが、なかなかマーケティングのプロではないかぎり難しいです。まずは正式リリース前に誰かターゲットに近そうな人に依頼して、商品やサービスを体験してもらい、フィードバックをもらうことをオススメします。

そこで価格や内容、見せ方、またターゲット自体を修正したり調整したりして、本番に向けてブラッシュアップできるといいです。さらに、その様子自体を撮影しておけば、正式リリース時のPR素材としても使えますので、PRの視点でもやっておいた方がいいのです。僕も大体この進め方でやっていますし、もしすでにリリース後だとしても、「あ、この価格だと売れないな」と思って値下げしたり、逆に安くしすぎて粗利が少なく継続性がないと思えば、値上げを検討したりもします。

この流れは結構重要


以上が普段行っているターゲティングでした。

データで全体感を把握し、身近な人たちで温度感を"感じる"ことができると、自信を持って進めることができるでしょう。また、一つ付け加えておくと、「自分の感覚を信じること」も結構大事です。

偏りがあってはいけないケースもありますが、最終的に、自分がターゲットだったらどうだろう?と自らに問いかけ、その感覚をもとにプランニングすることも少なくありません。そのため、普段から、フラットな感覚や庶民性を意識するようにしています。



皆さんはターゲティング、どのようにやっていますか??
このパートは以上です。今回もお読みいただきありがとうございました。

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