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LOCAL PRODUCE BOOK (2) 「地域への入り方論」


「ローカルプロデュース」に関する本の出版に向けて、まずはnoteに書いていきます。

タイトルは「LOCAL PRODUCE BOOK」

これからどこかの地域に移住して仕事をしようとする人、事業を作ろうとする人、起業しようとする人、副業などをやりながら暮らしを楽しもうとする人、地域おこし協力隊で赴任する人、地方の大学生・専門学校生、そんなローカルに関わりのある人に向けて書いてみます。

そもそも、僕のように「プロデューサー」と名乗らずとも、ほぼ全ての人がプランニング(企画)とプロデュース(実行)はしなくてはいけません。ただ、都会と違って、身近にそうしたスキルを教えてくれる人は多くはいません。また、地域にはその土地独自のロジックや慣習、ルールなどがあります。差異はありつつも、大体同じような問題を抱え、同じような壁に当たります。一通りそうした経験を先にしてきた経験者として、教科書のような、またはお守りのような内容の本を書けるといいなと思います。まずは、とにかくこれ読んで!という一冊のような。

では書き始めます。


地域に「入る」


地域に入る。何気なく「入る」と使いましたが、山に「入る」と同じように、人は「入る」という表現を使う時、こちらの世界と、そちらの世界は異なるものだという認識を持っています。つまり、ここから先、その地域には独自の世界が広がっていて、その中に入るというイメージですね。


これは僕も同様の感覚を持っていました。
岩手県遠野市に移住する際、住んだことのない土地でしたので、そこにどんな人が住んでいて、どんな仕事があって、どんな生活があるのか、全く分かりませんでした。初めて遠野に訪れたのが12月30日という真冬だったのもよくなかったかもしれませんが(遠野はマジで寒いです)、とにかく何もイメージできなかったのです。自分が活躍する姿も、何が貢献できそうかも。「3年で東京に戻ろう」。当初はそう自分の中で決めていました。結果、今年で9年目になるので人生とは分からないものです。

さて、この章では、皆さんがどこかの土地へ移住したりUターンで戻ったりした時、つまり「地域に入る」時に考えておくべきポイントをいくつか紹介したいと思います。最初は不安ですよね。大丈夫です。



なぜ地域に入らないといけないの?


まずはじめに、ここでは、地域に「入る」≒ その土地の人たちと関係性をつくると仮定します。

移住しても、地域の方とそんなに関係も持たなくても生活や仕事ができるのであれば、それでいいと思います。この本を読み進める必要もないでしょう。
ただ、地域で何かを始める場合、その土地の人々と関係性を築くことが何より大切だと思います。これは精神論で言ってるわけではなく、いずれ仕事や事業を作っていくことを踏まえると、関係性を築くところから始めることが最良のステップなのです。その理由を以下に説明しますね。


上の図のように、地域に住む人々と関係性ができると(つまり仲良くなると)、それまで見えなかった地域の課題が見えてきます。この人のために何かしてあげたい、という気持ちにもなります。

その結果、自分ができそうなことが見えてきたり、自分が役に立てそうなことが見えてきます。そうなれば、その小さなタネが地域で何か仕事をする、事業をはじめるきっかけとなるのです。こうした流れで始めた取り組みの場合、その地域の課題と紐づいているため、地域の人々も前向きに応援してくれるでしょう。

自分の経験を振り返ると、自分のやるべきことの方向性が見えるまで一年半ぐらいはかかったと思います。はじめのうちは地域のニーズも人の性質も分からなかったので、そんな中で始めようとした企画はあまり上手くいきませんでした。この時期の黒歴史は多いです(書籍化したら黒歴史を多めに載せますね。多くの失敗が今につながっています)。


どうやって関係性を築けばいいの?


それでは、見ず知らずの地域に入って、どうやってその地域の人々と仲良くなればいいのでしょうか。さらに、そこから仕事を生み出すなんてのは、最初はかなり難易度が高いように思えますよね。実際、簡単ではなかったのです。

まず、前提として、例え移住者が先に何人か住んでいる地域だとしても、ソトモノには偏見がつきまとうものです。まず、都会から来た移住者には、「なんでわざわざこんなところ(田舎)に引っ越してきたの?」という変わり者扱いされるところからスタートします。さらに、都会 ≒ ドライという見られ方もまだまだ根強いです。仮に東京から来たとしても東京出身とは限らないのですが(むしろ東京は地方出身者が集まる場所)、とにかく「壁」を感じることが少なくありません。

※一方で、最初からいきなりウェルカムな人たちもいました。そういう方々には本当に救われましたし、今でも仲良くさせてもらっています


考えてみれば、長らく地元民のみで構成された地域にとって、ソトモノは異質な存在であり、またそれまで続いて来た平和を荒らす危険性をはらんでいる可能性があります。大袈裟かもしれませんが、アマゾンに住む原住民が外部から来た研究者たちを威嚇するのと同じで、奇異の目で見たり、距離を取ったり、冷たくあしらってしまうのも無理はないですね。

ただ、後でだんだんと分かるのですが、別に意図的に意地悪をしてるわけではなく、移住者と距離を取る理由は、純粋に何者か知らないのでコワイ(≒排除)ということだったのです。

以前、国際的に対立する国同士の争いを調停するという稀有な仕事をしてる方と話したことがあるのですが、対立を緩和させる方法の一つは、「お互いを知る」ことだといいます。それぞれにはどんな文化があり、どんな日常生活を送っていて、どんな食べ物が好きなのか、普段はなんの音楽を聴いてるのか。そうした情報を共有すること。それが第一歩のようです。なんだか、すごく分かりますよね。

(すみません、画像の出典元を忘れてしまいました…このカエル、何から守っているのだろう)


つまり、地域に住む地元の方々からの偏見を解く鍵は、こちらがどのような人間かを知ってもらうことが重要です。

一緒に行動したり、また(クラシカルですが)一緒にお酒を交わす中で、あなたと同じ人間ですよ、ということを分かってもらうのです。

僕も最初の頃は、一緒に草野球をしたり、町内の草刈りをしたり、お酒を飲み(アルコール苦手だけど)、そして郷土芸能団体に入るうちに、「あれ、お前もこっち側の人間なんだな」という風に誤解?が解かれていき、「移住者」ではなく、人として認識されていった中で地域に入ることができていきました。

なんだか面倒くさそう!と思う人もいるかもしれませんが、これは通過儀礼なので、ずっと続くわけではありません。一度しっかり関係性が作れて仕舞えば、あとは無理をせずに自分のペースで地域で暮らしましょう。

ベタに最初はお土産の日本酒を持っていこう



スキルのアピールは必要ない。

このような流れで地域に入り、馴染むことができれば、そのうちに仕事やちょっとした生業の相談などにつながっていきます。

ただ、ここで気をつけたいポイントをお伝えします。それは、自分のことを知って欲しいからと言って、最初から仕事の実績や前職で培ったスキルなどを必要以上にアピールする必要はないことです(私はここで働いていた、私はこれができる等)。また、関係性ができる前に、地域外のロジックで意見を強く言ったり、批評するのもあまりよくありません。

「こうすればいいのに〜」とか「自分はこれができるのに〜」という気持ちはわかりますが(僕もそうでした)、むしろ逆効果になることの方が多いのです。地域の人々にもプライドがありますし、何かうまくいっていないことも自分たちで理解している場合があります。そうした状況や心情を理解する前に、スキルや実績を地域で振りかざしても、いいことはないのです。

一方で、不思議なんですが、スキル等をあまり前面に押し出さずに関係づくりを大切にしておくと、不思議と「これできる?」「これ頼んでもいい?」という感じで相談が次々とやってきます。最初は“何者かよくわかんないけど、とりあえずいいやつぐらい"に留めておいて、仲良くなってから「で、何してる人なんだっけ?」となり、そこではじめて「実は、、」と打ち明けるぐらいで良いのです。

関係性ができてから、仕事のことやスキル、前職のことなどを話すと良い
それらを知らず、対面で会ったこともない地元の方へ超ビジネスライクにメールで連絡したら、怒られたことも…思い出したくない、だけど学びになった黒歴史。


こうして地域に入っていきましょう。その後のさらに具体的な

・地域の重鎮や偉い方々とどう関係性をつくるか
・世代ごとにどのような視点やテーマでアプローチしていけばいいか
・どんな実績を地域で積み上げれば地域の方々から応援されるようになるか


などは書籍化したら書いていきたいと思います。

この辺も細かなテクニック(というとちょっと嫌らしいですが…)があります。どれも最初からうまくいったわけではなく、思い出すと胸が痛くなったり、恥ずかしくなったり、また申し訳ないという苦い思いが蘇る経験ばかりです。


腰を引かず、向き合うこと

地域で何かする場合、地域の方々を敵に回してもいいことはほぼありません(噂はすごいスピードで広まります)。むしろしっかりと向き合うフェーズで向き合うことができれば、応援してもらえる関係性になります。

数年前から「多拠点生活」というキーワードが流行り、実際にしている人を何人か知っています。楽しく暮らしている人もいるのでライフスタイル自体を否定はしませんが、最初から「多拠点生活」スタンスで地域に入ってくる人たちには、やはりそれなりの部分しか地域の人々は開示してくれないものです。「この人はどういうスタンスなのだろう?」という部分は、地域側にいると敏感に分かってしまうものです(僕も分かってきました)。

移住はハードルが高く思える部分もありますが、住民票を移し、ともに暮らす期間があることで、信頼され、開かなかった扉も一気に開いていきます。例えば、移住前は「仕事あるのかなぁ…?」と心配に思ったものですが、1番の解決策は移住してしまうことでした。ローカルでは「実態」があることが何より大事で、そこに「居る」ことで、色々な相談がやってきます。

そうしたともに過ごす期間があれば、その後に多拠点になったとしても、自分たちの「仲間」が活躍したり楽しく生活している姿を、地域の人々も好意的に受け取ってくれるものです。

「移住」というと腰がひけて最初は勇気がいるものですが、色々検討したり考えたりするよりも、実は何かきっかけが出来たところへ飛び込んでしまった方が早いのです。そういう僕も、移住を決断するまで、ウジウジグルグルと思い悩んでいました。この辺りの話はまた別途したいと思います。


以上、「地域に入る」パートでした。なかなか長くなってしまいましたね。

次は、地域に入った後に、どのように仕事や生業、プロジェクトを始めていくかを書きたいと思います。それではまた。

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