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「六十・七十は鼻たれ小僧。男ざかりは百から百から。」

 私が好きな芸術家に、平櫛 田中(ひらくし でんちゅう)(1872 ~ 1979年 享年107歳)という彫刻家がいる。高村光雲、荻原碌山、朝倉文夫などと並んで、日本近代を代表する彫刻家の一人であり、写実的な表現が特徴である。

 彼には様々なエピソードがあり、中でも長寿だった彼が「満百歳の誕生日を前に30年分の材料を買い込んだ」のは有名である。そのとき彼は「六十・七十は鼻たれ小僧。男ざかりは百から百から。わしもこれからこれから」と言ったのだそうだ。
 そんな彼も23年分の木材を残してこの世を去ってしまう。

 40歳を過ぎると「花盛りは~歳までだな」だとか、「働き盛りは過ぎたから」といったあきらめにも似た言葉を耳にすることが増える。
 しかし、人生の盛りとはその人の意識そのものによって変わるのだ、と彼のエピソードを知ったときに強く感じた。最後まで諦めない精神や、常に向上心を持つこと、いつ自分が死んでも悔いを残さないための生き方を平櫛田中は教えてくれているのだと思う。
 そして、チャンスはどこにでもあるし、いつでも私たちを待ってくれているのだということも付け加えたい。
 もちろん、そのチャンスを逃さず活かせるように、常に自身を高めていなければならない。自身の生き方に甘えはないだろうかと、ことあるごとに己を省みている。

トップ画像は浮彫天部像(小平市平櫛田中彫刻美術館より)。

河内 啓成(かわち けいせい・美術科)

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