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前髪のうねりから見る考察

年齢による体の変化に対して、現状の読みはあてにならない。今やれることを先延ばしにしない、という話

散髪に行く頻度は人によって違うと思うが、私の場合月に一度である。若い頃はカット代も高めなちょっとオシャレな美容室に通っていたが、正直美容室で髪を切ってもらっていた時期に仕上がりの満足感を得たことはほとんどないと記憶している。

今の家に引っ越してきた頃、通いやすさという面を重視して散髪できるところを探していたところ、家から徒歩5分の場所にある個人で営んでいる美容室ではなく、理容室、いわゆる床屋さんを発見し、髪を切ってもらった。当時30代後半の私と同じ歳の店主とは同世代ということもあり、話の波長も合い、カット後に今まで感じたことのない満足感を得られたことに驚いたのだ。

その満足感とは、失礼な話だが、通いやすさ重視で選択したにもかかわらず、カットの腕がすこぶるよく、オーダーした要望通りの仕上がりでしかもカット代は以前通っていた美容室の半分程度である。そのとき思ったのは「やっと理想の散髪先をみつけた」という長年の散髪難民の終了を告げるものだった。

そして月日は流れ、それから10数年経った今日、いつも通りにカット用のいわゆる床屋さんの椅子に座り、カットを始めてもらった。ここ数年髪型をまったく変えていない私は、行きつけのバーの注文のように「いつもので」の一言から始めてもらうのだが、変わらない理容室、変わらない店主、変わらない髪型にもかかわらず、最近なぜか前髪がいようにうねることを店主に相談した。

梅雨時期の湿気のせいとばかり思っていた前髪のうねりだったが、店主曰く、年齢とともに紙が細くなることから、元々クセのある髪質の人は加齢によりそのクセが出やすくなるのだという。

私の髪質は剛毛で硬く太い。おまけに毛量が半端ないこともあり、薄くなる心配こそしたことはないが、それはそれで大変だったのだ。爽やかなサラサラヘアーに憧れを持っていた時期もあったが、自分の髪質からとうの昔に諦め、このわがままヘアーでも形になる髪型を模索しては今の髪型に落ち着いたのだ。

その定着した髪型のままいつまでも変わらないと思っていた私からすれば、ここにも年齢による影響が出てくるのか、と思い知らされることになったのだが、髪や体にまつわること以外にも今後加齢ともに影響を及ぼす領域は出てくるのだと思う。

例えば気力や集中力である。以前、ある年配の方が発信したTwitterにこんなことが書かれていた。

「老後の余裕のある時期に沢山読もうとよけている本は、今のうちに読め。なぜなら今のあなたから想像もできないほど気力は衰え、本を1冊読むことさえ困難になる」

私たちは老後も気力や体力が今とあまり変わらないと信じて計画を立てがちである。私も密かにもう少し仕事が落ち着いたらゆっくり読もうと大切に保管している本がいくつもある。その本は今の感性で読んでみたいと購入した本だ。数10年先にその本が魅力的にうつっている保証はないのだ。しかも、気力や集中力がなくては優雅に読書をすることすら危うい。

前髪のうねり同様、体の変化は受け入れていくほかないが、やはり今やれることは今のうちに詰め込んでいくのがいいのかもしれない。そんなことを考えながら、健康の話ばかりする私と店主の散髪タイムであった。

先送りにする癖は後々の後悔を生む。今やれることは今のうちにしておくのが吉


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