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骨董春秋

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こっとう、こぶつまめちしき。
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虎目

虎目

今、当店バックヤードで私が机として使っているアフリカ紫檀の板のお話しです。

二十五年くらい前に木挽きの中村さんが巨木風呂の中はつりの残滓としてでたこの重くて硬い板を持って来ました。これを当時、私の相棒をやっていた建具師が機械で仕上げたのですが、カンナをかけることが出来ません。

なぜならあっちこち目がかわる虎目だからです。こう言うときはサンドペーパーで地道に研くしかありません。私と建具師の二人で

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骨董春秋アーカイブ4あかり

骨董春秋アーカイブ4あかり

秋になると灯りものが動きはじめます。

それでなくてもなんだかあったかみが欲しくなるシーズンです。骨董屋で売っているランプは大体においてオイルランプやキャンドルスタンドを改造して電球を入れられるようにしたものが多いです。そのため、配線がなんだか素人くさいです。

もともと灯火器は蝋燭や油でぼんやり灯すものが多く、いまより大分と世の中が暗かったとおもわれます。比して現代は明るすぎるように思います。

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骨董春秋アーカイブ3

骨董春秋アーカイブ3

昔から能を鑑賞するのがすきですが、忙しさにまみれて中々いけないでいました。お客さまで鵜澤先生のお弟子さんがいて、もう高齢なので券がきてもいけないと身代わり鑑賞の依頼がきまして行ってまいりました。

さあ、実際に宝生能楽堂に行ってみると演者も老齢化してヨロヨロしていました。観客はほとんどが高齢者、しかも「見てやっている」という姿勢がつよい人々です。盗み食いするようにチョコレートを口に放り込んだり、飲

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骨董春秋アーカイブ2

骨董春秋アーカイブ2

竹雲斎さんの息子さんは別号で小竹というのを使っているようですが、海外ではその方が通りがいいらしいです。そして、茶道具の一部門としての竹細工も含む、もっと大きな彫刻的な意味合いの作品もつくっていらっしゃるようです。

江戸切子でも若手によるそういう新しい感覚の工芸が芽生えています。ただ昔を踏襲するのではなく、どんどん新しい考えもいれていく。それでこそ伝統産業が未来に生き残っていく、いや輝いていく道だ

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骨董春秋アーカイブ1

骨董春秋アーカイブ1

2022年8月親友が自宅で転び亡くなりました。彼は長い間、心臓や消化器の病気で自らと戦っていました。昨年(2021)年末に熱海の別宅で水毒で具合が悪くなり、熱海の病院に入院し、さらに三月に東京の女子医科大学病院に転院して、死線を越え退院してきた矢先でした。

彼は大学でも希少種の物理科で、卒業してからは家業をたたんだり、オートバイ屋をやったり、工場の電気とシークエンスを同時に制御するなど実に多彩な

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