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続ける人

私はうつ病患者だ。かれこれ1年と半年くらい心療内科に通っている。中堅うつ病者だ。中堅ってなんだ。

心療内科の先生は優しそうなおじいちゃんだ。いつも「どうですか?」で会話が始まり、心の近況を聞いてくれる。普段人に話せないことを話すこともある。時には愚痴っぽいことも話してしまう。それでもおじいちゃん先生は真摯に受け止めて、否定することなく、丁寧うなずきながら、話を聞いていくれる。おじいちゃん先生は仏様なのかもしれない。

おじいちゃん先生は朝から診察は開始し、昼に3時間ほど休みをとり、それから夜の20時まで診察している。人気の心療内科なので、毎日人がたくさん集まってくる。休む暇もなく、次から次へと患者の診察を続けている。毎日50人ほどの患者を診察する。毎日50回「どうですか?」で会話を始め、毎日50回心の近況を聞き、毎日50回普段人に話せないことを聞き取り、毎日50回愚痴を真摯に受け止め、毎日50回相手を否定せず、丁寧に話を聞く。これを毎日毎日毎日毎日くり返す。これはすごいことだ。うつ患者を診察している方が鬱になりそうだ。おじいちゃん先生すごい。

ある日、おじいちゃん先生がしばらくの間臨的に休みを取るとのことだった。おじいちゃん先生の奥さんが亡くなったのだ。

週に1度、10分程度の間柄ではあるが、やっぱり悲しかった。仏のような優しい先生だけど、辛いだろうなと思った。


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しばらくすると、おじいちゃん先生は診察を再開した。おじいちゃん先生はいつもと変わらなかった。

「どうですか?」で会話が始まり、心の近況を聞いてくれる。普段人に話せないことを話すこともある。時には愚痴っぽいことも話してしまう。それでもおじいちゃん先生は真摯に受け止めて、否定することなく、丁寧うなずきながら、話を聞いていくれる。


おじいちゃん先生は仏様だった。





イラスト提供:


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