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声劇台本「繋がれた手と手の向こうにあるもの」

異世界 × 百合 × 悲恋

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声劇データ

✓上演時間 10~15分程度
✓上演人数:女性2名
✓ジャンル:異世界 / 百合

あらすじ

舞台は異世界。

戦争中。城が狙われていると判断した軍は、国王をはじめとする城内の人間を全て遠い街はずれの教会へと避難させた。
――しかし、誰もいないはずの城内に残った者が2人だけ居た…。

登場人物

王妃…国王とは政略結婚であり、愛はない。日々に退屈していた矢先、兵士と出会う。
兵士…男性と偽り軍に潜入している女性。(この事実を知っているのは王妃だけ)

声劇台本「繋がれた手と手の向こうにあるもの」

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兵士「王妃様、なぜ、まだ城内に?!」

王妃「そなたこそ、なにゆえ、城の中に残っておる? 軍は撤退、国王以下、城内の人間は教会へ避難したはずだが」

兵士「今回の作戦を考えたのは私です。そして、敗れた…ならば私は、この城と共に死にます」

王妃「それはそれはご立派なことで」

兵士「ですが王妃様、あなたは生きなければなりません!」

王妃「――私に、あなたの居ない道を生きろというのですか?」

兵士「王妃様、なにをおしゃっているのですか?」

王妃「もうとぼける必要はないわ。城には誰もいないのですから」

兵士「ですが、王妃様……」

王妃「私の身辺警護として、あなたが配属された日。私はあなたを一目見て恋に落ちた。政略結婚だった国王には抱いたことのない感情だったわ」

兵士「それは……私も……」

王妃「まさか、あなたが男性と偽る女性だったなんて…最初は全く気付かなかったもの」

兵士「申し訳ありません。家族を食べさせていくためには、どうしても軍に入る必要があったんです」

王妃「その話しなら何回も聴いたわ。大変な思いをしたのね。それなのに、その家族を捨ててここで死ぬの?」

兵士「いや、この状況では正直、家族が生きているかどうかも……」

王妃「生きているわ。あなたの家族は王族の者たちと一緒に教会に向かっている。私が手配したの」

兵士「なぜ、そんな……?!」

王妃「愛する人の家族を守りたいと思うのは当然のことでしょう?」

兵士「それは、ありがたく存じます。では私は一度、敵軍の進行状況を確認して参りますので、王妃様はどうか教会へ……」

王妃「行かないわ。行かないで、ここであなたを待ってる」

<しばらくして……>

王妃「おかえりなさい。どう? もうそろそろ、ここは落ちる?」

兵士「えぇ…もう、まもなくかと」

王妃「そう。ならば私の手を握って。ギュッと強く、その瞬間まで」

兵士「承知いたしました」

王妃「――本当に敵は来るのかしら?」

兵士「それはどういう……」

王妃「私は戦場に出たことはないから分からないけれど、敵軍が動いているというのに静かすぎる気がするわ」

兵士「それは、敵も気配を消しているからではないかと」

王妃「そう。そしてあなたは、たった一人で敵軍と闘うつもり?」

兵士「えっ、いえ、私は……」

王妃「さっきから私に見えないように、この手とは反対の手で銃を握り続けているわよね?」

兵士「――っ?! もはやこれまでか!!」

王妃「手を離さないで! 私たちの手の中には、小さな爆弾が握られているの。もし、この手が離れたら、爆発するわ。そしたら2人ともおしまいよ?」

兵士「なにっ?! まさか私の作戦に全て気付いて……」

王妃「最初は何も分からなかった。本気であなたを愛していた。あなたが男性か女性かなんて関係ない。そう思っていた」

兵士「……っ」

王妃「だから私はあなたにペラペラと軍の機密を話してしまった。けれど、私は、あなたを愛しすぎて、あなたを常に追いかけていたから…あなたが裏で敵軍と暗号を交わす現場を見てしまったの。皮肉な話よね。こんなに愛さなければ、裏切りに気付くこともなかったのに」

兵士「当初は性別を偽って軍に潜り込み、孤独な王妃にだけその秘密を教え、友人と見せかけることで軍の機密や王の動向を探り、味方に知らせる予定だった。あなたとこんな関係になってしまったことが、私の最大の過ちのようだ」

王妃「あなたの軍は教会に向かっているのね? そこにあるのは、大量の爆弾だけよ。私たちは戦わず勝利を手に入れるの」

兵士「ならば、王や軍、城の者はどこへ?! それに、私の家族は……」

王妃「家族のことだけは本当だったのね。私も驚いたわ。あなたの家族は、あなたが我が軍で王妃の警護にあたっていると信じ切っていたもの」

兵士「家族には……真実は言えなかった」

王妃「安心して? 私は罪のないあなたの家族を殺すような命令は下していないわ。ただ、もし、あなたが私を一方的に殺すようなことがあれば、家族の命は保証できないけれど」

兵士「まさか、城の者は皆ここに……」

王妃「ええ。正確には、城の地下道を抜けた先に用意されている避難所にいるわ」

兵士「なぜ、あなたは一緒に行かれなかったのですか?」

王妃「あなたの罠にかかってしまったのは、私の責任。ならば私は、あなたをこの手で殺すと同時に、この命をもって償うことにしたのよ」

兵士「私がこの手を離さなければ?」

王妃「私が離すまでよ?」

兵士「しかし、私がこのように強く手を握れば……あなたは手を離せなくなるはず」

王妃「ずっとこのまま、2人で手を繋いで生きるの?」

兵士「それも悪くない」

王妃「そうね、それが出来たら私は幸せになれたかもしれないわね」

兵士「どういう意味だ……?!」

王妃「この爆弾は、一定時間経過後も手が離れなかったときも爆発する仕掛けなの」

兵士「なにっ!!」

王妃「あなたは私の腕を切ってでも逃亡するでしょうからね。私もちゃんと考えてるのよ? あなたと2で最後を迎えるための作戦をね?」

兵士「愚かで呑気な女だとばかり思っていたのに…私よりよほど優れた軍人になれそうだ」

王妃「これが愛の力よ。さぁ、もうすぐ全てが終わるわ」

兵士「……なら、最後に、言わせてくれ。“私もあなたを愛している”」

END.


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