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蘇る生チョコ (毎週SS「デジタルバレンタイン」より)

全ての星の人々に、チョコレートを。

惑星移住が進んだ今、物質の流通はすべて
光伝送装置によるデジタル変換が主流になった。
人手による運搬の必要がなくなり流通問題も大幅に解消された。
しかし万能ではなかった。

一度デジタル変換する必要があるため、
水のような温度変化にシビアなものや生鮮食品の伝送は適さなかった。
ましてや些細な要因でも風味が変わるチョコレートなど、もってのほかだ。
今やバレンタインの贈り物は洋服やアクセサリ、ギフト券などに取って代わられた。

そんな中、一人のパティシエが豪語した。
「デジタルに耐えうる生チョコレートを作るんだ」
当然、世間は笑いものにするだけで誰も相手にしなかった。

それでもパティシエは研究を重ねた。
移住先には材料がなく、チョコレートを知らない人類も増えた。
移住先の人たちにもチョコレートを知ってほしい。

そんなパティシエの想いが今、現実のものになろうとしている。
ひとつ、またひとつ、チョコレートが装置に吸い込まれていく。

「届いてくれ。待っている人たちのもとへ」
(437文字)


バレンタインでSFチックとは、なんともオシャレなお題でした。
いまや当たり前となったバレンタイン=チョコレートのイメージですが、
果たして100年後200年後にこれはどうなっているのか、ちょっと気になりますね。

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