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どちらかというと

どちらかというと曇り
いや 晴れか
雲が割れるような割れないような
灰色と水色の混ざった空に

大してやる気のなさげな
打球が緩やかに上がる
片手を上げて後ろに下がった野手は
取り損ねたボールに慌てて走り出す

まだ夏なんて見てもいない
と言わんばかりの生ぬるく湿気た風が
おもむろに素知らぬ顔で
読みかけの本のページをめくる

今年も半分終わったね と
少しがっかりしたような顔で言う君は
その実 夏休みのやりたいリストを
膨らんだシャツの胸に溜め込んでた

そんなに好きでもないけど
別に嫌いということもない
静寂の虚無をノイズで埋めるような
蝉の声に 遠くなった夏を思う


 〇  〇  〇  〇  〇


 J'ai attendu. La brûlure du soleil gagnait mes joues et j'ai senti des gouttes de sueur s'amasser dans mes sourcils.  C'était le même soleil que le jour où j'avais enterré maman et, comme alors, le front surtout me faisait mal et toutes ses veines battaient ensemble sous la peau.  À cause de cette brûlure que je ne pouvais plus supporter, j'ai fait un mouvement avant.  Je savais que c'était stupide, que je ne me débarrasserais pas du soleil en me déplaçant d'un pas.  Mais j'ai fait un pas, un seul pas en avant.

  (Albert Camus   "L'Étranger" )


 私は待った。両頬が日に焼けて、汗のしずくが眉にたまるのを感じた。母を埋葬した日と同じ日差しだった。私はあの時と同じように額が痛み、まるで皮膚の下であらゆる血管がずきずきとうずくような感じがした。この我慢できない日焼けのせいで、私は前に一歩、足を踏み出した。こんなことは馬鹿げていると分かっていたし、一歩動いたところでこの日差しからは逃れようもないということも分かっていた。それでも私は一歩、たった一歩前に足を踏み出したのだ。

(カミュ『異邦人』 拙訳、新潮文庫窪田啓作訳および第三書房柳沢文昭訳を参考にしています)