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すきもきらいもぜんぶ


「紫陽花が綺麗に咲いてるね」
と言っても
「わたし、紫陽花きらい!」
と言っていたグレイス(母)。


今年も紫陽花が綺麗な季節がやってきたので
「紫陽花が綺麗に咲いてるね」と言うと、
「綺麗ね〜」と、にこにこしていた。

何と、グレイスは私の知らぬ間に紫陽花が嫌いではなくなっていたのだ!
毎年「きらい!」と言っていたことが、まるで嘘のよう。
もしかしたら、嫌いだというのは私の妄想だったのかもしれない。
私はグレイスを、紫陽花が嫌いな女性にしたかったのかもしれない。
(…なんで?)


そうだ、過去なんて本当は存在しない。

グレイスは紫陽花が好きだし、私は父親と仲良しだし、私は死にたいなんて思ったことがないし、人と話すのだって得意だし、
飲み会で下品な奴に「最近いつキスしたの?」と聞かれても嫌な気持ちにならずにすんなりと答えられるし、
全然喋ったことが無い会社の人と更衣室で二人きりになっても気まずいなんて気持ちにもならない。


全部妄想なのだ。

苦手なことも、好きなことも、死ぬほど傷ついたことも、死ぬほど嬉しかったことも、全てが妄想なのだ。

ありがとう。愛しき妄想たち。
様々な形でわたしを楽しませてくれてありがとう。
心の底から愛している。

本当はすべての妄想に別れを告げたいところだけれど、わたしはまだまだ未熟なので、わたしの機嫌をよくしてくれる妄想とはまだまだ仲良くしていたいのだ。

美味しいものを食べて、好きな人に会って、たくさん笑って、
「あ〜楽しい妄想だった」と思って死にたい。
そのために必要なことと、必要のないことは、きちんと分かっていたい。


ところで、「紫陽花きらい」と返ってくると思っていながらも
「紫陽花が綺麗だね」と毎年グレイスに言っている私は、意地悪なのだろうか。
それとも、いつか「そうだね」と返ってくることを期待して言っていたのだろうか。


そんなことを思った今日は、8月にグレイスと一緒にランチブッフェに行く予定を立てたし、
明日は弟が実家に彼女を連れてくるらしい。


わくわく。


みんな安心で、にこにこで過ごせますように。

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