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腫瘍随伴性関節炎の特徴

悪性腫瘍再発で治療検討していた矢先,四肢近位部の疼痛で動けなくなって紹介.
自己抗体はいずれも陰性.CRPは高値.関節炎はあるけれど,腫れ方も分布も経過もPMRとしてもRAとしても何となく何か違う.
「腫瘍随伴臭いよね」などと話していたが,そもそも腫瘍随伴臭いとは何なのか,言っておいて自分で分からない.このままでは分かった風だけ匂わせる野郎で後輩に示しがつかないと気付き慌ててまとめてみた.

「腫瘍随伴性関節炎の特徴」で適当にAIサイトで見出しイラスト作らせたらとんでもないグロ新生物みたいな画像作りやがった..



一つ目の文献

Characteristics and survival of 26 patients with paraneoplastic arthritis. Ann Rheum Dis. 2008;67(2):244-247. 
Morel J, Deschamps V, Toussirot E, Pertuiset E, Sordet C, Kieffer P, et al.


(方法)
〇フランスの研究.質問票を作成し866人の医師に電子メールで連絡,腫瘍随伴性関節炎と思われる患者のファイルを収集.
〇組み入れ基準
・組織学的に悪性腫瘍が確定
・16歳以上
・悪性新生物と診断される2年前までに少-多関節炎の進展がある or 悪性新生物と腫瘍随伴性関節炎の間に厳密に並行した伸展がある

(結果)
計26例
男16名,女10名
〇背景疾患:
固形腫瘍が20例(うち肺癌13例),血液腫瘍が6例
関節炎発症~悪性腫瘍の診断までは平均3.6か月(0-21.2か月).88.5%で関節症状の後に診断.

〇関節炎の特徴:
手を含む対称性多関節炎が85%.残りは非対称性の少関節炎.膝関節の腫脹も多い.
関節外症状が84%にあり.

〇検査データ:
CRPは平均7.92mg/dLRF陰性が78.3%,ANA陰性が70.8%(ACPAデータなし).

〇治療:
NSAIDsの効果は45%,ステロイドの効果は91%で得られたが寛解は得られず.
DMARDs(SASP,MTX,disulone)は5例にしか使用されておらず有効だったのは1例のみ.
〇腫瘍との関係:
腫瘍の治癒より76%の患者が関節炎も治癒.腫瘍が再発しても75%の例で寛解は保たれていた.


2つ目の文献

Diagnostic dilemma of paraneoplastic arthritis: case series. Int J Rheum Dis. 2014;17(6):640-645. 
Kisacik B, Onat AM, Kasifoglu T, Pehlivan Y, Pamuk ON, Dalkilic E, et al.


(方法)
〇15施設のリウマチ専門クリニックから腫瘍随伴性関節炎患者65例を登録.
また2010年ACR基準を満たす早期RA患者50例を対照として登録.
〇腫瘍随伴性関節炎の基準
・45歳以上
・急性発症
・左右対称性 or 非対称性
・腫瘍随伴性関節炎と診断される少なくとも2年前に,主に下肢に病変があり手指の小関節はspareされている
・支持する検査データがある
・悪性腫瘍が発見される前にDMARDsへの反応が不良

(結果)
〇年齢性別:
腫瘍随伴性関節炎患者は早期RA患者より若く男性が多い.
関節炎発症~診断までは平均5.1か月

〇関節炎の特徴:
少関節炎は早期RAと比較して固形癌の腫瘍随伴性関節炎で有意に多い
・多関節炎・対称性関節炎は全ての腫瘍随伴性関節炎と比較して早期RAで有意に多い.

〇自己抗体:
RF/ACPAも早期RAで有意に多い(腫瘍随伴性関節炎ではRF陽性23%,ACPA陽性10%,ANA陽性15%).

〇背景の腫瘍
血液腫瘍26例(AML7例,リンパ腫7例,ALL4例など),固形腫瘍39例(肺癌17例,乳癌8例など).

〇関節炎の分布
膝関節60%,足関節53.8%,手関節43.1%



3つ目の文献

Rheumatic manifestations as initial presentation of malignancy: A case series from a tertiary care center in India. Eur J Rheumatol Inflamm. 2019;6(2):71-75.
Padhan P, Thakur B, Singh P, Mohanty I, Sahoo SR.


(方法)
〇インドのKalinga Institute of Medical Sciences の2013年-2018年の症例記録からリウマチ症状を呈した悪性腫瘍患者20例をレトロスペクティブに調べた.
※Paraneoplasticとする基準の記載はなし.

(結果)
計20例
〇背景
男性12例,女性8例.
13例が固形悪性腫瘍,7例が血液悪性腫瘍
全例で診断24カ月以内に悪性腫瘍発症,期間は平均5.5か月

〇症状
診断時の最も多い症状は関節炎(40%),次いで体重減少(20%),皮疹(10%),発熱(15%),筋力低下(10%)

〇検査データ
RF陽性は10%,ACPA陽性はなし.ANA陽性は20%
CRPも高め(血液腫瘍で16.1mg/dL,固形腫瘍で14.5mg/dL)



4つ目の文献

Paraneoplastic arthritis: a series of 92 cases. Rheumatology . Published online September 21, 2023. doi:10.1093/rheumatology/kead500
Kısacık B, Albayrak F, Balcı MA, Koc E.

(方法)
〇多施設共同後方視研究で腫瘍随伴性関節炎92例を健常コントロールと比較.
〇腫瘍随伴性関節炎の診断はMorelらの基準(1つ目の報告に記載,後述)で行われた.

(結果)
92例
〇背景
男性60例,女性32例.
血液腫瘍39例(リンパ腫10例,AML9例,ALL9例など),固形腫瘍53例(肺癌22例,乳癌8例など).

〇自己抗体:
RF陽性19.6%,ACPA陽性7.6%(ACPAは健常コントロールよりは優位に多い).ANA陽性15%
〇血液検査:CRPは平均7.24mg/dL
〇発症から診断までの期間:平均4.9か月

〇関節炎の分布:膝関節52%,足関節41%,手関節39%



■まとめと感想


結局のところ,一つ目の文献の最後に出てくる基準が一番参考になる.

※Morelらの基準

  • 年齢>50歳

  • 関節炎~悪性腫瘍の診断<6カ月

  • 多関節炎(対称性or非対称性)

  • 全般的な健康状態の悪化

  • リウマチ結節なし

  • RF陰性

  • CRP高値

  • X線で骨びらんなし

  • 抗腫瘍治療後に関節炎が改善

更に他の研究の結果も踏まえ個人的に追記すると,

  • 背景の悪性腫瘍として多いのは血液悪性腫瘍,肺癌,乳癌.

  • 罹患関節で多いのは膝≧足≧手関節.

  • しばしば非対称性,少関節炎

  • RF,ACPA,ANA陽性も10-20%程度はある(titerは不明)


治療に関してはほとんど報告がない.NSAIDs・ステロイドに反応するけども治癒はせず,根本の悪性腫瘍治療が必要と最初のMorelらの報告で示唆されるという程度で,本当かどうかもわからない.

あと根本的に,腫瘍随伴性関節炎の特徴を調べるためにmethodで予め腫瘍随伴性関節炎の定義をある程度絞っているという不思議なループから抜け出せない感が否めず,どこまでが真の腫瘍随伴性関節炎なのか,結局答えはでないままなのだった.

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