金井雄二「ゆっくりとわたし」

金井雄二氏は図書館に勤務しながら詩を書き続け、丸山薫賞等を受賞された方だ。
仕事でも生活でも苦労されたことが多いことが、作品からはうかがえるが、それでも詩を書くことをやめなかった。

いわゆる大言壮語するような詩は書かない。難解な、哲学的な詩でもない。

ただ、自分の体験した過去を、考え抜かれた言葉で書き綴っている。

「ゆっくりとわたし」は、金井氏の大分若いころ、少年時代を題材としている。苦しかったことも、楽しかったことも、ちょっと気持ち悪いような恋心も、様々なイメージと結びつけ、詩にしている。

詩にも色々ある。壮大な詩もあれば、こぢんまりとした詩もある。
金井氏の詩は、壮大ではないが、川の上流にあるような詩だ、と思う。
詩を読んだものは、いわば上流からの瑞々しい何かを飲み込むことができる。そして、今度は自分の創造性を高めることができる。

心の栄養になる詩、ということだ。
そして、栄養を吸収した私たちは、また、何か新しいものを生み出そうと、創作に向かうことになるのだ。

詩は役に立たない、という。
だが、小説や漫画やアニメの脚本や…、何か物語を持ったものを生み出す種として、これほど役に立つものはないのだ。
金井氏の本を読んで、わたしも詩を書いてしまった。

雨と歯車

わたしのしは恥ずかしい出来だが、でも、上流から何かを受け取って、誰かにそれを流していけるかもしれない。そう思う。

この本との出会いをきっかけに、現代詩を少しずつ読んでいこうと思う。

ゆっくりとわたし(リンク)

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