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創業120年のロート製薬が自己変革し続ける理由。目指すはウェルビーイングな組織ーロート製薬 柴田春奈さん

変化は本来誰しもが恐れるのかもしれません。
人間の生存本能として、未知のリスクを恐れるのは組織においても同様ではないでしょうか。

ロート製薬さんは胃腸薬からはじまり、目薬、スキンケア、食の事業と様々な領域に事業を拡大しています。働き方としても複業が解禁されたのは2016年。当時はかなり先進的な試みでした。ロート製薬の会長山田さんは「社員は会社の所有物ではない」と2021年4月放送のTV番組カンブリア宮殿でおっしゃいました。

創業120年、従業員数1500名を超える企業が常に自らを変えて行く理由は何か?
一人ひとりの違いを組織はどのように捉えているのか?
生き生きと働くためにどのような制度があるのか?

ロート製薬さんが掲げている経営ビジョン「Connect for Well-being」について広報の柴田春奈さんにお話を伺いました。

「やってみないと分からない」文化が前提にあるから挑戦できる

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ーロート製薬さんの経営ビジョン「Connect for Well-being」の意図や背景について教えてください。
もともと私たちは2016年にコーポレートアイデンティティー「NEVER SAY NEVER」を定めました。 事業領域も広がっていた当時は健康寿命への挑戦にチャレンジしていく過程の中で、難しい部分があったとしても「やり抜くんだ」という社員の意識醸成がありました。

世の中も変化して、ロート製薬が120周年を迎え「今後何をしていくのか?」「どこに向かって行くのか?」とした時にウェルビーイングという言葉を軸にしたんです。これからの健康を作っていくためには、いろいろな方と手を取り合っていきたい考えもあります。
医薬品、スキンケア、再生医療、食に関する事業がありますが、様々な方と有機的に繋がりながらConnect for Well-beingを実現していきたいと思っています。

ウェルビーイング(Well-being)とは?
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
引用:世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)

ー 柴田さんご自身がウェルビーイングに働けている状態はどんな状態ですか?
会社の文化もですが、私自身としてやりたいと思ったことを素直にやってみようと思えているのは大きいかもしれません。

ーご担当されているロート製薬さんの企業noteも立ち上げが2018年と知って驚きました。当時は前例もあまりなかったのではないでしょうか。

そうですね。法人としては珍しかったかもしれません。
前例がないことは、ロート製薬にとってそこまで大きい障壁にならないことが多いです。ロート製薬には「やってみないと分からない」文化が大前提にあります。 何かやりたいと思った人がいたら会長をはじめとして後押しする社員はすごく多いと思います。

ーやりたい気持ちがありつつ周囲に打ち明けられない社会人の方も多いかと思います。どのようにしたらその文化ができるんでしょうか?
会長の山田が考えた「7つの宣誓」も大きく影響しているかもしれません。

【画像】7つの宣誓

画像引用:https://www.rohto.co.jp/company/philosophy/

加えて、会長も含めた全メンバーが共に座るフラットなオフィスづくりや手挙げ制の文化を意識して作ってきました。
私たちも年に一度「My Vision Sheet」で今後のありたい姿について申告をします。中長期的に成し遂げたいことや直近一年で挑戦したいことは何か?それを叶えられる部署はどこなのか?考える機会が設けられています。

他にもARK(アーク)プロジェクトがあります。
A(あしたの)R(ロートを)K(考える)の略ですが、3~4年に1度ぐらい経営課題に対して考えたい社員を公募します。その課題に対して提案を経営陣にしていくのかメンバーレベルでも起きています。

ウェルビーイングな働き方を支える制度

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ー自発性が高い方が多いんですね!具体的にどのような提案や制度が生まれたのでしょうか?
「働き方」に関しては社外チャレンジワーク、いわゆる副業もARKから生まれています。
企業の枠を超えた働き方や社外との繋がりなど社内では得られない経験が、成長を加速させると考え作られた制度になります。
2016年からロート製薬では複業が解禁されています。

ーかなり早いですね……!みなさんどのような複業をされているか伺ってもよろしいですか?
奈良県の地元で地ビールを作っている社員や、行政の戦略アドバイザー、大学の講師、林業の会社を立ち上げる社員など内容もバラエティに富んでいます。年齢や役職など関係なく、20代から50代までまんべんなくのべ約80名が制度を活用しています。

ー他にも働き方に関して生まれた制度はあるんでしょうか?
就業時間中に所属部署以外の仕事もできる仕組み「社内ダブルジョブ」も制度として生まれました。
元々、守備範囲を限定せず他部門と積極的に関わるスタイルを大事にしていましたが、正式に兼務とすることで個人の成長を後押しする仕組みです。
社外チャレンジワークは届出制になっており、社内ダブルジョブは所属の部署と申請先の上司が話し合い業務量のバランスなどを鑑みて決めています。

ーどちらも共通しているのは、違う環境にいる他者との交わりを大切にする印象を受けました。
社内においても、会話というかコミュニケーションは非常に多いと思います。些細なことでも、仕事中に結構話しています(笑)
オーナー経営で家族みたいな感じがあるので、コロナ以前では定期的に皆が集う場も用意されていました。

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ー他にもウェルビーイングに働くための制度があれば伺いたいと思います。
健康経営を打ち出しており「健康社内通貨『アルコ』」を仕組みとして取り入れています。1日8000歩、早歩き20分を目安に全社員が活動量計を携帯して取り組んでいます。
ウェルビーイングは心も体も大事なので、主体的な健康を目指しできた制度と仕組みです。

一人ひとりの違いが新しい気づきのきっかけになる

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ーロート製薬さんが自らを変えていける理由は何でしょうか?
会社では個人として「どうしたいの?」「どう思う?」と意見を求められる機会はすごく多いです。「自分自身がどう思うのか?」を問われるので、きちんと伝えた上で他の人のやりたい想いを尊重もするようにしています。もちろん会社として「ウェルビーイングなのか?」と疑問に感じる部分は議論もしますし、大事なのはそのバランスだと思います。
当然ながら課題もあったりはしますが(笑)

ーちなみに課題ですと、どんな内容があるんでしょうか?
1500人いれば1500人通りのウェルビーイングがあり、会社としての制度が全員に共感されるかでいうと、必ずしもそうではないですよね。広報としては同じ仲間としてどのように意識づけ出来るのかを考えています。

ー自律しながら多様な価値観を持つ方が多いイメージがロート製薬さんにはあります。一人ひとりの違いをどのように受け止めてらっしゃるんでしょうか?
私個人の話ですと、違いは新しい気づきのきっかけになると思っています。異なる価値観の話を受けて「どう感じるか?」「なぜそう思うんだろうか?」納得するのか、納得できないのか。自然と内省や気づきの機会が増えるきっかけになります。

ーお話を聞く限り、ロート製薬さんでは気づきの機会が多そうですね。
コロナ前には創業記念の際に午前中の式典後 、部門をまたいでディスカッションもしていました。非日常だけでなく、普段からみんなでちょこちょこ話す機会は文化としてあるからかもしれませんね。

ー 他人にしろ将来への挑戦にしろ「分からない」や「不確実性」をポジティブに捉えている印象を受けます……!
「やってみないと分からない」は前提としてあります。失敗を許容する文化と言いますか。
ただ、学びを活かしきれているか?というと、前にも起きたかも?と思うことも時々あったりします(笑)
個人の自由度が高いので、組織よりも個人に学習が蓄積されている側面はあるかもしれません。

ーカンブリア宮殿で山田会長がおっしゃっていた言葉「社員は会社の所有物じゃない」は印象的でした。山田さんの根底にあるのは社員さんに対して個人個人がもっと自分らしくいていいみたいな考えですかね?

大前提として一人ひとりの「個性や可能性」をどう見るか?を大切にしています。
全員が違うからこそ同じフレームで考えてしまうと、その「人や組織」の可能性を奪ってしまうと捉えているんだと思います。何かルールを作る際にも、ある程度余白を持たせ試行錯誤できるようにしています。

ーなるほど。今後の話ですとロート製薬さんが今後実現したいウェルビーイングは何でしょうか?
ウェルビーイングは一人ひとりが実現していくものだと思います。私たちも全員が輝いてこそ組織が活きて、社会が活きると考えています。一人ひとりの集合体となるロート製薬がいかに皆さんと一緒にウェルビーイングな社会を作り上げていけるかは挑戦したいなと思っています。そのためにも地道な積み重ねは大切にしていきたいですね。

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【プロフィール文】
柴田春奈さん
ロート製薬株式会社 広報・CSV推進部。企業PR・コーポレートサイトの運営・オウンドメディア・インナーコミュニケーションに取り組む。一人ひとりがその人らしく歩める社会を目指して、複業としてNPOのPR、個人事業としてコーチングなど多岐に渡り活動中。

取材・編集・文/佐藤政也 写真・デザイン/熊谷怜史

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