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【不動産の価値と価格】

1. 不動産の価値と価格は形成要因が全く違います

不動産の価値はその物件がどれだけの収益を獲得できるかで決まり、不動産の価格は取引市場での需要と供給の均衡点で決まります。ですから価値と価格は通常異なります。不動産の売り希望価格は売主が決め、不動産の買い希望価格は買主が、その不動産の価値を査定して決定します。買主は売り希望価格が価値より低くなれば購入し、価値より高いときは見送ります。 

2. 不動産の価値を決定するのは賃料です

不動産の価値はその物件がどれだけの賃料を稼げるかで決まります。「賃料総額=単価×数量」です。単価は建物の用途で決まり、数量は建物の床面積で決まるので、どんな建物が建つのかで土地の価値は決まります。土地建物一体としての不動産の価値は賃料総額の大小で把握できます。

3. 不動産の価格を決定するのは需要です

建物の敷地となる土地を宅地といいます。宅地を新規に供給するのには、公有水面や池や沼や田を埋め立てるか、山林を造成するか、畑を整地するかで長期間を要します。建物を新規に供給するのにも相応の期間を要します。ですから不動産の供給は極めて硬直的なので、不動産の価格は主として需要で決まります。

4. マネーサプライとマインドに注目しましょう

不動産の需要にはマネーサプライとマインドが影響しますに。公定歩合や銀行の貸付金利、株価や為替レートの変動だけでなく、クレカや仮想通貨の普及率も市場に流通する資金量を変動させるので、不動産価格に影響します。少子化が進めば不動産需要が減少し、リモートワークが普及すれば郊外の住まいの需要が増大します。核家族や非婚者が増加すれば小規模住宅の需要が増大します。高齢者の都心回帰が増えたり二拠点居住者増えたりしても、求められる不動産が違ってきます。

5. 価格は価値と一致しません

価格交渉によって取引価格は決まりますが、取引対象の不動産を売主は取引価格より価値が低いと判断したので売却して利益を得ます。買主は取引価格より価値が高いと判断したので購入して利益を得ます。売主も買主も売買が成立すれば利益を得るのですが、取引価格は売主の思う価値とも、買主の思う価値とも一致しません。不動産の価格はそんな取引価格の集積によって形成されるので、価格は価値と一致しません。

6. 価値は収益還元法で算定します

収益還元法は不動産の鑑定評価に用いる三方式のうちの一つの方式で、収益価格を試算する方式です。収益価格は評価対象の不動産が将来獲得しうる収益の現価の総和なので、その物件がどれだけの賃料を稼げるかを示してくれます。不動産鑑定評価基準に基づいて正確に収益価格を試算するのは難しいのですが、おおよそのボリュームを把握するだけなら簡単です。対象物件の還元利回りを決めてしまえばいいのです。

7. 中古マンションの収益価格を算定してみます

都心のフルリノベの中古マンションの還元利回りが5%だったとすると、家賃が10万円の物件の収益価格は2,400万円(10万円×12か月÷0.05=2,400万円)です。20年分の家賃と同額です。東京23区内のフルリノベの中古マンションの還元利回りは平均4%程度なので25年分の家賃と同額です。売り希望価格が3,000万円の物件で、妥当な家賃が10万円なら(10万円×12か月÷0.04=3,000万円)平均的な価格の物件です。
都心のフルリノベの中古マンションで、20年分の家賃より安い物件なら明らかにお買い得の物件で、26年分より高い物件はやや割高な物件だと判断できます。

8. 今の賃料が何年持続する場所かも考えましょう

賃貸可能な賃料は貸希望賃料の10%引きで査定しておきましょう、その賃料の20年分より安い金額で都心のフルリノベの中古マンションを買えば、損することはないでしょう。20年以上賃貸可能でしょうし、賃料は上がり続けるでしょうから、20年から先の賃料と上昇分の賃料を利益として獲得できるでしょう。
例えば銀座や丸の内のような今後も長く発展し続ける場所の物件ならば、還元利回りが低くても良い物件ですし、将来衰退してしまいそうな場所の物件は、たとえ還元利回りが高くても良い物件だとは言えません。

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