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【正直な子供】

その家の奥さんは後妻だった。後妻と言っても、妻子ある男と不倫関係になり、前妻を追い出して居座ったというのが実態だった。

その後、後妻である彼女は2人の子供に恵まれて幸せに暮らしていたのだが、夫が引き取った前妻の子供である娘さんとの折り合いが悪かった。

中学生になるその娘さんにしてみれば、お父さんを寝盗って、お母さんを追い出した憎き女なのである。従って継母ままははに懐くことはなくて、彼女の目を盗んでは実のお母さんに会いに行っていたのである。

だから不倫結婚成立後も、前妻との確執は遺憾ともし難く、いさかいが途絶えることはなかった。

さて、後妻の彼女にはお兄ちゃんと妹の2人の子供がいたのだが、その日も子供たちを残して、前妻の娘を連れ戻す為に家を留守にした彼女なのであった。

小学低学年のお兄ちゃんはどこかに遊びに行ったので、残された幼稚園年長の妹のMちゃんが、玄関前でひとり遊んでいた訳である。

それを見た近所のオバサンがMちゃんに訊ねるのだ。

「Mちゃんひとりなの❓️」

「うん」

「お母ちゃん、どこ行ったの❓️」

「お母ちゃんが言ったらダメって言った」

子供は正直である。母親が何処に行ったのかは誰にも言うな、という言い付けを忠実に守ったのである。

しかしMちゃんのその言葉によって、近所に知られたくない家庭の事情が、モロバレになってしまったのであった。


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