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【近所のおばあちゃん】

自宅の斜め向かいに、86歳のおばあちゃんが独りで暮らしているうちがある。

明るくて品のある性格なので、近所の皆さんからの評判もいいし、現役の〈生け花の師範〉でもあるおばあちゃんは、生徒さん達にも愛される存在なのであった。

うちに複数の来客があった時には、空いている駐車場をよく借りたりして、大変にお世話になっている家でもある。

去年、膝関節の手術をされたのだが経過も良好で、普通に歩けるようになり、とっても喜んでおられるところなのだ。

長男さんが。「そろそろ一緒に暮らそうよ」と提案されるんだそうだが、「亡くなった主人が建てたこの家がいいから」と言って、独り暮らしを続けておられるのである。

・・・・・・・

そんなある日のことだった。

その日、うちには、タマタマ兄嫁と弟夫婦が来ていたのだが、弟の嫁さんが、玄関前に駐車している自分ちの車に、何か物を取りに行ったのである。が、玄関を出るや否や、直ぐに家の中に飛んで返って来て言うのだ。

「なんか●●さんの息子さんが、おばあちゃんを車に乗せるの手伝って欲しいって❗️」

おばあちゃんの庭とうちの玄関先は目と鼻の先だから、息子さんには、弟の嫁さんの姿が直ぐに目に入ったのだろう。

そう言えば、おばあちゃんは先日〈緑内障〉の手術をされたばかりで、今日は息子さんが病院へ連れて行かれるということだったのを思い出した。

僕は直ぐに玄関を飛び出しておばあちゃんへ急いだ。

すると、おばあちゃんは、車の開いた後部ドアの下の、コンクリートの上にヘタり込んでいて、息子さんが後ろから上半身を支えるような状態になっていたのである。

息子さんが恐縮しながらおっしゃる。

「今から病院に連れていこうとしたんですが、急に容態が悪くなりましてね❗️・・」

「はぁそうなんですか❗️」

見れば、おばあちゃんの顔や手は真っ白になっている。僕は名前を呼んでみた。

「●●さん❗️●●さん❗️聞こえますか❗️」

返事がない・・意識がないようだ。息子さんに進言した。

「救急車を呼ばれたほうがいいと思いますよ❗️」

「はい❗️そうします❗️」

僕は息子さんの代わりにおばあちゃんを支える側にバトンタッチした。おばあちゃんの手を触ってみたら物凄く冷たい。

そうこうしている内に、兄嫁や家内や弟夫婦も駆け付けてきた。

幸い、兄嫁は現役のベテラン看護師なのだ。駆け付けてくると、直ぐに手首と頸動脈の脈を確認するや、寝かせるように促し〈心臓マッサージ〉を始めたのである。

救急車と連絡がついた息子さんは〈テレビ通話〉で現状を説明しながら指示を受けている。

何人かで代わる代わる〈心臓マッサージ〉を施していると、程なく救急車が到着。救急車の音に驚いた近所の皆さんが道路まで出てきて、遠巻きに見守る形になった。

救急隊員は我々に代わって〈心臓マッサージ〉や〈AED〉などの緊急の処置を施した後、〈自動心臓マッサージ機〉を掛けながらおばあちゃんをストレッチャーに乗せると、速やかに救急車の中に搬入した。

受け入れ先の病院が確定するまでにそれほど時間は掛からなかった。それでも14・5分は経った頃、救急車はサイレンを鳴らしながら発進したのであった。

・・・・・・・

騒動があったのが午前中だったのだが、昼を過ぎた頃、息子さんが挨拶に来られて、こうおっしゃった。

「先程は本当にありがとうございました。お世話になりました。・・しかし・・残念ながらダメでした・・医者は、特に悪いところはなかったって言うんですが・・」

おばあちゃんは亡くなられたのだった。あれだけ元気なおばあちゃんだったのに、〈白内障〉の手術がわざわいしたのだろうか、などと後悔しても、もう後の祭りであった。家内も、「●●さん、内臓は全然悪いところがないんだって」なんて兼がね言っていたのに・・

兄嫁が言うには、実は駆け付けた時にはもう脈がなかったんだという。だから直ぐに〈心臓マッサージ〉をしたんだそうだ。急性心不全というやつらしい。

・・・・・・・

次の日の夕方に〈お通夜〉が営まれた。家族葬ということだったのに、我々夫婦と、2・3人の近所のお友達だけは、特別に参列を許された。

〈お通夜〉を司った住職さんが最後に挨拶をされた。

「御主人の法要を宜しくと、つい先日仰っていたのに、まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした・・」

・・・・・・・

実は、僕には心配していることがあったのだ・・それは、おばあちゃんが〈ワクチン〉を6回も打っているという事実なのである。情報に長けた息子さんが何度も打つなと進言したそうだが、テレビ新聞を信じるおばあちゃんの耳には届かなかったという訳である。

このおばあちゃんのように、元気だった人が突然亡くなったという事例を、他にも間近に何件か見ているのだから、〈ワクチン〉の影響を否定することは出来なぁと、僕は思っているのである。


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