チョッと面倒な事務仕事が残っていたのだが、なんとかやる気になったので、やっと重い腰を上げた。

気合いを入れて取り掛かると家内がやって来て言うのだ。

「父さん、この書類も整理したいんだけどこれも見てよ❗️前から言ってるのに暇な時はゴロゴロしてばっかりでチッともやってくれないじゃないの❗️」

「大事なことをやってるんだからいま言うなよ❗️」

すると忽ち家内が機嫌を損ねる。

「じゃあアタシもう知らない❗️これ父さんやってよ❗️」

やる気になっている亭主を煽おだて上げて、更に余分な仕事をさせては男を手玉に取るというような悪女もいるが、そういう高等テクニックなんて持ち合わせてはいない、よく言えば純真な家内なのである。

煽てるどころか、せっかく取り掛かった事務仕事を、物理的にも精神的にも妨害するのだから埒が開かない。

だからと言って、「優しい亭主」はそのことを決して指摘したりはしないのだ。

一言でも言った日にゃ、火に油を注ぐことになってしまって、恐ろしいことになるのが目に見えているからである。