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党首選出と安保政策をめぐる攻撃にこたえる 憲法の「結社の自由」をふまえて

 統一地方選を前にして、日本共産党が党首公選制を呼びかけていた党員の松竹伸幸氏を除名処分した。これに対して、朝日新聞が社説で「国民遠ざける異論封じ」と批判するなど、共産党批判が相次いだ。

 確かに、異論を一方的に封じることは決して許されることではない。しかし、共産党側の言い分を聞かずに批判するなら、それもまた「異論封じ」であろう。そこで、ここでは共産党の主張に耳を傾けてみたい。

 本書は、この間行われた批判に対する共産党の反論である。共産党の主張を簡単にまとめれば、松竹氏を除名したのは異論を唱えたからではなく、党規約に基づく正式のルートで異論を表明せず、突然外から党の規約や綱領の根本的立場を攻撃したからだというものである(本書4頁)。

 ここで共産党が根拠として掲げているのが、本書の副題にもある「結社の自由」である。結社の自由に関する最高裁の判示では、各人に対して政党を結成したり加入したり、脱退する自由を保障するとともに、政党に対しては高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならないとしつつ、自由意思によって政党を結成したり加入した以上、党員が政党の存立および組織の秩序維持のために、自己の権利や自由に一定の制約を受けるのは当然としている(5頁)。

 それゆえ、松竹氏を除名することは憲法でも認められているということになる。この主張には一定の説得力があると思う。共産党を批判するなら、結社の自由をどう解釈するかにも言及すべきだろう。

 最後に、評者の感想を一言述べておきたい。共産党も党首選を行うべきとする松竹氏の主張にも一理あると思う。しかし、松竹氏は『シン・日本共産党宣言』(文春新書)で、自ら党首選に立候補すると述べている。松竹氏も自ら記しているように、一党員が立候補できる仕組みは他の政党にもほとんど見られない。たとえば、外部の人間がいきなり自民党員になって党首選に出れば、誰もが違和感を抱くだろう。ここには飛躍があると感じた。
(編集長 中村友哉)

(『月刊日本』2023年5月号より)

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書 籍:党首選出と安保政策をめぐる攻撃にこたえる
出版社:日本共産党中央委員会出版局

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