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ゲルとは何か? ~身近な例と歴史を紐解く~

これまでゲルについて様々な記事を投稿してきましたが、ここで改めてゲルについてまとめてみます(前半無料です)。

ゲルについて

ゲルは、寒天やこんにゃく、プリンに代表されるソフトでウェットな材料です。
私たちの身体も殆どがゲルで出来ています。
では、具体的にゲルとはどんな物の事を指すのでしょうか?

高分子は、分子が沢山繋がってできた細長いものです。
この高分子が化学結合や絡み合いなどで網目構造を作り、水などの液体を含んだものがゲルなんです。

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寒天や蒟蒻は約95%が水、ゼラチンで作ったゲルは約90%(濃度によって異なります)が水です。
人の身体は60~70%が水です(年齢によって変化します)。
人の身体はタンパク質(アミノ酸がたくさん繋がって出来た高分子)で構成されたゲルですね。
水を含んだゲルはハイドロゲル、オイルや有機溶剤を含んだゲルをオルガノゲルと呼びます。
一般的には、ゲルと言えば水を含んだハイドロゲルの事を指すことが多いです。
では、液体を含まない高分子の網目構造体はゲルじゃないのかというと、そうではありません。
液体を含まないドライなゲルを、キセロゲルと呼びます。
例えば、シリカゲルがそうです。

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シリカゲル(ある程度吸湿すると、写真のように変色するものもあります)

吸湿剤としてよく使われますが、化学研究や食品・工業用原料の製造においては、不純物を取り除く吸着剤として大量に使用されています。
見えないところで私たちの生活を支えている重要な材料です。

他にも、特殊な方法で液体を気体と入れ替えて作る「エアロゲル」もあります。エアロゲルはキセロゲルとは別の分類になります。

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エアロゲル(https://sorae.info/030201/2019_7_16_aerogel.html)

エアロゲルは99%以上が空気で出来ているため、写真のように手のひらに載せても重さを感じません。
そして、紫外線や熱を遮断します。
次世代の断熱材として開発が進められています。
温度差の大きな宇宙で、寒さや暑さを和らげる材料としても期待されています。
高い断熱効果に加え、軽量であることがエアロゲルの強みです。
高コストがネックでしたが、最近は技術開発によって製造コストが下がっています。

寒天や蒟蒻、ゼリーを乾燥させたものはキセロゲルです。
水を含ませると元に戻るゲルもありますが、大抵のゲルは水を含ませても元には戻りません。
乾燥して小さく収縮すると、高分子が複雑に絡み合ってしまい、元の大きさに戻れなくなるんです。

スケッチ-1632

また、シリコーンやウレタンで出来た柔らかいゴム材料もゲルと呼ばれることがあります。厳密にはゲルではありませんが、ゲルと同じような性質を持った材料なので、ゲルと呼ぶことがあるんです。

このように、ゲルには様々なものが存在します。

特殊なゲル

そして、中にはゲルの常識を覆す、驚くべき性質を持ったゲルが存在します。
自重の100倍以上の水を吸収するゲル、大人が上にのっても潰れないスーパーゲル、温度や電気に反応して大きさや色を変えるゲル、室温では絶対に乾燥しないゲル。
前述したエアロゲルも特殊なゲルの一つと言えます。
これまでにご紹介した特殊なゲルの記事を、一部だけピックアップして載せておきます。

個人的に長く研究しているのが温度応答性ゲルです。
体温付近の温度で色や大きさが劇的に変わる様子は見る者を驚かせます。
また、ダブルネットワークゲルに似たゲルの研究も行っています。
柔らかくて95%以上が水なのに、強く握っても、ナイフで切りつけても無傷なんです。その圧倒的な強さに感心してしまいます。

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