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涙の雨が止んだら僕は虹を目指すんだ…

雨だ…
雨が降り出した
このままだと
今日は屋外のドライブを
楽しめそうにないな

フロントガラスを雨が伝う…
ワイパーを動かしてみる
視界がはっきりとした

もうすぐ
彼女のマンションに着く…

僕は今日…
あの娘に告白するために
バイトでめた
なけ無しの金で友達から買った
中古のボロ車で出かけて来た

自分の車で好きな人を
ドライブに誘ってみたかったんだ

助手席にあの娘を乗せて
どこまでも
車を飛ばしてみたかった
ペーパードライバーの僕だけど…

あの娘の家は知ってるんだ
前にバイトの飲み会の帰りに
送ってあげた事があった

一人暮らしなんだって…

僕は学校の無い日は
昼も夜もバイトを掛け持ちして
金を貯めたんだ

夜間の教習所に通い
どうにか免許も取得した

後はマイカーだ
僕は寝る間も惜しんで
必死に働いた

やっと手に入れたのは
オンボロの中古車…

でも僕にとっては
自分の力で手に入れた
立派なマイカーなんだ

「あ、あの…
 次の日曜日なんだけど…
 僕とドライブに行かない…?」

数日前のバイトで
シフトが同じだったあの娘を
勇気を出してデートに誘ったんだ

彼女は少しためらった後…

「いいわ…
 じゃあ、次の日曜
 私の部屋まで迎えに来て」

僕は天にも昇る気持ちだった…

ところが
せっかくの日曜日
彼女とドライブのはず
突然の雨だった…

なんでだよ…
ドライブコースまで考えたのに

それでも約束の時間
彼女のマンションまで来た僕は
近くのコンビニに車を止めて
かさをさして彼女を迎えに行った

彼女のマンションを
近くの道路から見上げた僕は
二階の彼女の部屋のドアが開き
出て来た彼女に手を振ろうと
上げた手が凍り付いた

彼女は一人じゃなかったんだ…

背の高い若い男が一緒だった

そして出てきた二人は
部屋の前できつく抱き合い
背伸びをした彼女と
見下ろした男は
ディープなキスを交わした

キス… 長すぎるんじゃない…
僕には何分にも感じられた

僕は地面を見つめながら
彼女の部屋に背を向けた

雨が激しくなってきた

「これじゃあ
 ドライブは雨天中止だね…」
僕は空を見上げてつぶやいた

コンビニまで戻った僕は
運転席に座りエンジンをかけた
雨がフロントガラスを濡らしてる
ワイパーを動かす

「あれ…?
 ワイパーで雨が払えないや…」

分かってるさ…
降り続けてるのが
雨だけじゃないのは…

分かってるさ…
ワイパーじゃ僕の心の雨
涙を払えない事は…

その時、スマホが鳴った
彼女からだ…

約束の時間が過ぎたもんな
僕は電話に出なかった
しばらく鳴って
電話が切れた

さあ…
せっかくのオフの日曜なんだ

涙の雨はまだ降り止まないけど
本物の雨は上がり始めた

これから一人で
どこへ行こうか…?

「あっ、虹だ…」

雨上がりの空に虹が掛かった

そうだな…
あの虹の根元を目指してみるか
子供の頃
自転車で結局行き着けなかった
虹の根元へ…

今度はたどり着けるかな…?
このオンボロ中古車なら…

とにかく行って見るか…
やっと涙の雨も上がったし

一人のドライブも悪くない…

早くしないと
虹が消えちゃうな…

僕はシートベルトを掛け
コンビニを後にした

頼むぜ、虹よ
まだ消えてくれるなよ

今からそこへ行くからな!

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