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子どもに指導しつつ、自らを指導する機会をつくる

 国語の指導教諭2名を招いて、授業づくりセミナーを開催した。文学的文章の授業づくりである。お二人に共通していたのは、指導的評価活動と子どもから学ぶ教材解釈である。

 指導的評価活動は、教師の指示や発問に対する子どもの言動に刻々に価値づけ意味づける教師の行為である。授業における教師と子どものやりとりに、一往復半以上のコミュニケーションが成立していくものである。

 お一人の指導的評価活動は、子どもの言動を事実として示し、前向きなトーンを生み出すモデル機能を重視して、子どもたちにきみたちは成長する存在であることを伝えるものである。もう一人は、まわりの子どもにとっての意味や価値を示し、子どもと子どもをつなぐ関係性を重視して、みんなで学ぶことの意味を共有しようとするものである。両者とも、指導的評価活動を通して学級を育んでいる。子どもの対話的な関係性の豊かさが、深い学びをつくるからである。

 指導教諭のお二人は、指導的評価活動に加えて、授業をした後に子どもがいないところで教師自身が教材解釈を深める機会がある点も共通していた。子どもの考えの足跡が見えるノートに赤ペン指導をするなかで、子どもの価値ある考えを発見したり、教師自ら教材解釈を問い直している。あるいは、子どもの思考のプロセスを構造的に板書したうえで、さらに教室に掲示する模造紙としてまとめ直す機会を設けることで、子どもの解釈を整理しつつ、教材解釈を繰り返しているのである。単元が始まる前ではなく、単元に取り組む中で日々子どもの教材解釈を読み取る機会を設けることで、自らの教材解釈を深めているのである。

 子どもに指導しつつ、自らを指導する。教師生活そのものの豊かさが教師の力量を形成する。タイプの異なった二人の教師から授業づくりを学ぶことで、むしろ、両者の共通する点に、教師の力量形成のヒントがあった。


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