記憶の断捨離術② ~心の中にいるもう一人の自分~

記憶の断捨離術は、自分の本当の気持ちと向き合うことで、過去の嫌な記憶に決着をつけて、心を健康にする心理療法です。

前回の記事では、物を捨てるばかりが断捨離ではないということについて説明しました。捨てずに取っておく決断をするにも、取っておく目的が変わるのが断捨離です。その目的を変えるには、自分の本当の気持ちと向き合うことが重要です。今回は、自分の本当の気持ちとは何かについて詳しく見ていきます。

本記事の概要:

現代社会では、自分の本音はとても見えにくくなっている。思い切って本音をひもとけば、自分で自分を縛っているというケースは非常に多い。自分の本当の気持ちというのは、普段は意識しない、別人格とも言えるもう一人の自分の気持ちである。


私たちの社会は、こと現代日本において、本音と建前を使い分けることで円滑になっている面があります。しかし時には、他人に対してだけでなく、自分自身の本音にもフタをしてしまっていたり、しかもそれを自分の意志もなしに作動させてしまっていたりします。


長くなりますが、具体例を見ていきましょう。

物の断捨離の手順を、心理的な観点で見ていきます。

・物が捨てられない

 ↑理由の例「まだ使えるのに捨てるなんてもったいない」

ありふれた理由だと思います。ここで、もう一段階、本音を探ります。もったいないとはどういう気持ちでしょうか。

辞書で調べてみると、「もったいない」とは物への敬意からくる惜しみや嘆きの感情のようです。つまり

 ×もったいないから捨てられない 

 →〇もったいないという罪悪感があるから捨てられない

ということになります。罪悪感を克服できれば、物を捨てて部屋を片付けられるはずです。克服のために、次のようなことを考えます。

・罪悪感とは何か?

・誰が誰に罪を課すのか?

・感じる必要はあるのか?

これらを考えれば、罪悪感の正体は、自分が作り出した妄想だということに気付くでしょう。

捨てられた洋服君が持ち主を恨むかもしれないというのは、あなたの妄想です。そして、そう思うのであっても、「今までありがとう」と言って捨てればそれで解決です。

もし、他者からの働きかけ(例えば物を捨てることをお母さんに怒られる)があるならば、それは余計なお世話です。そこまで言うならと、ゴミを全部引き取ってもらいましょう。「それは困る、捨てずに自分で管理し続けろ」と言われたならば、口を出すだけの無責任な意見なので、聞くだけ無駄です。


「いや、オレは自分の意志で、捨てない選択をしているんだ!」という人もいるかもしれません。本音を隠すことに慣れすぎて、本音を知ることに反射反応的な恐怖を感じています。どうしても本音を隠したままでいたいのであれば、現実的な面を考えます。

一般に、物を大切にするのは良い心がけです。しかし、それも度が過ぎると、"片づけられない人"というマイナス要素に変わってしまいます。

「そんな周りからの評価なんてどうだっていいんだ!」というのも、自分の殻に閉じこもって本音ごと自分を隠す行為です。本音を知るためには勇気が必要なのです。

そして、罪悪感という自分の本音に気付くことができれば、「物をポイポイ捨てるな」と自分で自分を縛っていたことに気付けるでしょう。自分で自分を縛る必要はどこにもありません。ストイックさは美徳とされがちですが、誰に褒められるわけでもないので過剰に縛るのは止めた方が良いです。


自分で自分を罰しないことを決めれば、あとは物を捨てるに十分な理由付けをして、自分を縛っていたもう一人の自分を納得させてあげれば、片づけ完了です。

逆に言うと、このように自分の中のもう一人の自分の本音に耳を傾けずに、断捨離ダンシャリと言って物だけポイポイ捨てても、行き場を失った感情が心の中に居座り続けてしまいます。元彼との写真なんかが分かりやすい例かもしれません。自分の本当の気持ちに決着をつけなければ、物だけ捨てても不十分です。



私たちは、現代社会に順応するために、無意識によそいきの自分を表面にかぶって生きています。そして、その表面に貼り付いた自分こそが本当の自分だと錯覚しています。

これを打破して、世界に規定された自分と、内なる自分との対話を試みる方法が、記憶の断捨離術なのです。


今回の記事はここまでです。

次回、本当の気持ちと向き合うために必要なことを詳しく見ていきます。


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