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経営に活かしたい先人の知恵…その5


◆歴史がすべてを教えてくれる◆


 管仲(前730年頃~前645年)の言行をまとめた書物とされる『管子』の一節に、「現状を理解できない時には、昔のことから推察するのがよいでしょう。未来を予測できない時には、過去を振り返ってみるのがよいでしょう。すべてのものごとは、現れ方は異なっているようでも、その法則性は古今を通じて同一なのです」とある。

 イギリスの元首相、ウィンストン・チャーチルも管仲と同じ考えだったようで、「過去を遠く遡るほど未来も遠くまで見通せる」との言葉を残している。日本でも、ホンダの創業者・本田宗一郎が、「歴史は、現代を支え、未来を組み立てる。歴史を否定して、現代は理解できないのだ。未来の方向に正しく向くには、歴史を背景に持たなければならない。たしかに歴史は多くを教えてくれる。反省の材料も与えてくれる。適切な助言もしてくれる」と言っている。

 管仲は、おおよそ2700年前、中国の春秋時代に生きた人間だ。そんな管仲と、チャーチル、本田宗一郎が、まったく同じ趣旨の発言をしている。まさに、法則性は古今ばかりでなく、東西も通じて同一なのだ。

 歴史を振り返ることの一番のメリットは、「人間学」が学べることだと指摘した先人がいる。明治・大正・昭和の三世代にわたってジャーナリストとして活躍した徳富蘇峰は、「もし、世に人間学があらば歴史がそれである。歴史は大海の如く無尽蔵である。政治家はその中に、虎の巻を見出す。哲学者は、その中に生きる哲理を見出す。軍人は、軍人としての典型、宗教家は宗教家としての教訓を、その中に見出す。その他、すべてのあらゆる人は、あらゆる期待せるものを、その中に見出す」と。

 徳富蘇峰の言葉を借りるなら、企業人は、「人のマネジメントの虎の巻を、歴史の中に見出す」ことができるのだ。歴史からは、現状が理解できるばかりでなく、未来をも予測することができ、さらには人間学も学べるのだから、歴史書を読まない手はないだろう。

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