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9月11日になると思うこと 【あのとき僕は】

2001年9月11日、僕はインドにいた

多くの人がそうだと思うけど、僕も例にもれず9月11日になると2001年のN.Y.の同時多発テロのことを思い出す。

あの日、僕はインドにいた。ひとりでインド放浪の旅をしている途中で、ガンジス川で有名な聖地とも呼ばれる街、バラナシ(ベナレス)にいた。インドを旅していたのにはいろんな理由があった。「大学でインドの文明について学んだのに、実際に行ったことがないまま卒業してしまったから」とか(これは卒業から1年半後のことだった)、「心血を注いで活動していたバンドがうまく行かず、事実上活動が休止状態になってしまったから」とか、「大失恋したから」とか、「バイトを辞めたいのにうまい口実が無かったから」とか、とにかくいろいろだ。でも、ひとことでまとめるとしたら「今、インドに行かなかったら一生後悔すると思ったから」ということになると思う。

当時は大学卒業後も就職せずに、バイトしながらバンド活動をしていて、バイトで稼いだお金は全て音楽活動や機材費に消えていってしまったので、実家ぐらしだったにもかかわらず貯金なんて全くできなくて(実際、僕の携帯電話は料金の滞納でよく止まった)、インド行きも突然決めたので、2ヶ月分のバイト代をかき集めた、たったの15万円だけだった。それで、航空券を取ったらもう半分以上消えてしまって、残りのお金で超節約して2ヶ月のバックパッカーの旅をする必要があったので、僕は最低限の予防接種(肝炎とかそういうやつ)だけして、旅行者保険にも入らずにインドに行った(これは誰に話しても「馬鹿だ」と言われるし今となっては自分でもそう思うけど、当時は本当にいろいろあって人生に嫌気がさしていたので、インドで何かに巻き込まれて死んでしまったら、それはそれで良いや…とどこか思っていた)。

その朝の出来事

そんなわけで2001年9月2日、24歳だった僕は成田からエア・インディアでインドの首都デリーに飛び、最初の数日だけ友人宅に世話になって、少しだけインドに慣れたタイミングで長距離列車の切符を取って、一晩列車に揺られてバラナシに行ったのだった。そこで、何人かのバックパッカーと仲良くなり、居心地が良くなって数泊していた時に9.11のテロが起きた(タイトル部分の写真は、その時滞在していたホテルの屋上で撮ったもの。バックにはガンジス川が流れている)。

朝目覚めて、ホテルの食堂に降りていったら、旅仲間のイスラエル人が真っ青な顔をして「大変なことが起こった」と話してきた。ホテルには部屋にも食堂にもロビーにもテレビなんて無かったので(今は違うかもしれないけど、当時のインドはどこに行ってもテレビなんてなかなか無かった)、彼の話が情報の全てだった。彼が言うには、大型旅客機がN.Y.のビルに突っ込んでビルは倒壊。多数の人が亡くなった。恐らくテロだろう…という。最初は僕の英語力がつたないせいで聞き取りを間違えたのかと思った。それくらい、これは信じられない話だった。でも、その後ラジオとか新聞で本当だと知った(当時のインドはインターネットもそれほど普及してなかったし、アクセスできたとしても今みたいにリアルタイムのニュースはほとんど無かった)。とにかく、海外にいるだけで家族が心配すると思って、このときばかりは電話代をケチらずに日本に電話をして無事を伝えたことを覚えている

もっとも、海外と言ってもN.Y.とバラナシは全く関係ないわけだけど、それでも外国人が多いエリアや空港なんかは、事件後はピリピリした空気に包まれるようになって、テロ防止のために飛行機での移動もしづらくなるかもしれない…なんていう情報も旅人の間でよく話されていた。そんなこともあって、当初2ヶ月を予定していた旅を1ヶ月半に縮めて、僕は早足でインド一周の旅をして日本に帰った(1ヶ月半でも、ネットがほとんど無い状態で異世界のような国を旅して帰ってきたら、日本の感覚がすっかり抜けてしまってしばらくは難儀した)。

帰国して…

そして、帰国してからようやくテロの情報を日本語で読むことができてその詳細を知ることになるのだけど、その頃にはメディアはすっかりテロの映像(飛行機がビルに突っ込むやつだ)を流すことを自粛するようになっていて、僕がテレビでその映像を初めてみたのは年が明けて正月の番組でのことだった(数ヶ月遅れて衝撃を受ける僕を見て、家族は衝撃を受けていた)。

多くの人がそうだったと思うけど、僕もこの事件を通していろんな事を考えた。主に「こういう事がいつ起こるか分からない世界で、自分はどう生きるべきか」というようなことを。その思考の中で色んな思いが去来したけど、結局必ず行き着く答えは「今日死んでも後悔しないように生きるしかない」ということ(ジョブズも同じようなことをスタンフォード大学のスピーチで話しているけど、それはこの4年後のことだ)。そして、そういう意味では、旅行保険もかけずにあの時インドに飛び出した僕の判断は100%正しかったと確信するようになった(ただし、これから海外に行く人は絶対に真似しないで欲しい)。

いま思うこと

あれから、18年経ち、その間に更にたくさんの衝撃的な事件や事故が起きた(東日本大震災とか)。そのつど色々と考えさせられるけど、答えはいつも同じだ。「今日死んでも後悔しないように生きるしかない」。

つい数日前にも日本を大きな台風が襲い、今現在も大事な友人たちが苦しんでいる(僕も些少ながら支援をした)し、ベルリンの僕の家からほど近い場所でも悲劇的な事故が起きた。それから、もっと個人的なことだけど、若い頃(まさにこのインドの旅をしていた頃)にたいへんお世話になった大好きな人が大きな病気を患ってしまい現在苦しい闘病をしていることをつい数日前に知った。どちらも本当に胸が痛む現実で、僕はそれらに対してできる限りのことをしたいと思うけど、そう思えば思うほど自分の無力さに絶望するばかりだ。

そして、それと同時に、そういう苦しい現実は、同じような事がいつ自分の身に起きてもおかしくないという事を再認識させてくれる。だから、やはり僕らは「今日死んでも後悔しないように生きるしかない」のだと思う。

そして、短期的には今できる支援を最大限しつつ、長期的にはなるべく多くの人が「今日死んでも後悔しないように生きることができる社会」を作るためにできることを少しずつしていく必要があるのだと思う。

そのために、僕は自分のいくつかの人生の目標に向かって淡々と歩みながら、常に発信もしていこうと考えている🤓

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僕のインド放浪はブログでも書いているので、よかったら読んでください(写真も最後に載せてます)。


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