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「裁判官三淵嘉子の生涯」伊多波碧 感想

〈 作品の概要とあらすじ 〉
2024年度春 朝ドラ「虎に翼」で話題!
主人公のモデルを描いた小説
日本で女性初の弁護士、裁判所長となった三淵嘉子の生涯を描く

 三淵(旧姓:武藤)嘉子は明治大学法学部を卒業し、日本初の女性弁護士となるが、戦争ですべてを失うと、新たな思いを胸に差別のない司法を実践すべく裁判官になることを決意する。34歳で裁判官に就任後、アメリカで家庭裁判所を視察。帰国後は各地の家庭裁判所で社会的弱者に目を向け、精力的に活動した。――逞しくしなやかに生きた女性法曹の先駆者の生涯を描く。

潮出版社公式引用
潮文庫 2024年4月3日読了


 「裁判官三淵嘉子の生涯」 伊多波 碧


 朝ドラ『虎に翼』が好きで拝読しました。

 女性の自立を阻むのは同じ女性だったりもする、という嘉子の言葉に頷いてしまう。日頃から常々思ってたことだったので嘉子が体験する疑問をリアルに感じました。彼女の生き方と後生への偉業は尊敬するし、少年達との対話は涙を耐えることができなかった。
 一冊分の生涯なので、本当はまだまだたくさんの困難があったんだろうなぁと推し量れる。憲法の改正ってすごくすごく大きな変化だったのに、それを理解せずに生きていた人たちがいて、戦争と貧困に忙殺され続けていた。一番守られるべき子供たちが戦時中も戦後も、そして今現代でも辛い環境に置かれている。それが少しでも減らされることを祈るし、私も目隠しをしてないものにはしたくない。

 朝ドラの方は結構オリジナル色が強くなると思います。名前が違うのはもちろんのこと、出てくる登場人物や性格も違う、ストーリーのあらすじも全く違うものになるでしょう。そんななかでも、彼女の真念というか弁護士として裁判官としての矜持は、大きく外れてはほしくはないかな。朝ドラでは寅子には兄と弟がいて3人兄妹だけれど、こちらの小説では、嘉子(寅子)が第一子の長女で、その下に弟が4人いて5人姉弟。それから、ドラマの書生は1人だけれど、小説には2人以上が下宿していて年年で人が入れ代わり、もっと人数が居たりもする。だから、あまり照らし合わせすぎない方がいいんだろうなと思います。この物語は物語でとても面白かったので、幅広く楽しみたい方はお薦めです。

 男尊女卑の不条理を甘んじて感受することなく言葉にし、ときにユーモアな表情を出してコミカルに演じる伊藤沙莉さんの寅子は、本当に魅力的だ。ラブストーリーじゃなく人間ドラマを観たい私としては、彼女の奮闘振りに期待しています。
 これからも平日朝8時を楽しみにしています。

潮出版社公式サイト


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