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私という人 ~母の予感~

Мやクラスメートたちとは

変わらず仲は良かったが

三年になった頃から

遊ぶ友達が少し変わった。

郊外に通う学校の子や

定時制の子、

中卒で高校へ通わず

働いていた子など

クラスメート以外の友達が増えた。

校外の人と

どうやって知り合えるのかって?

友達の友達と仲が良くなり

交流の幅が広がった事と

ゲームセンターにプリクラを

撮りに行くと

『プリクラ下さい』
『一緒に撮りませんか』なんて

必ずと言っていいほど

声を掛けられていたからだ。

ギャルは目立ってしまうんです。

友達100人出来ちゃったと

言っても

大げさではない程だった。

雪が降り高校最後の冬休み

部屋で過ごしていると

PHSが鳴っている事に気づく

後輩からの着信だ。

県南に住んでいる友達に

会いに行くけど

一緒にどうかと誘ってきた。

時間は23時を過ぎていて

車で行くと言っている。

遊び盛りの私に

断る理由はない。

待ち合わせは1時間後の

深夜0時だ。

母に出掛けてくると伝えた時

いつもなら

この時間でも

「気を付けるんだよ」と

言うところだが

この時は渋るように

「今から?」と

引き留めようとしているのが分かる。

母は仕方ないなという雰囲気を見せ

PHSは繋がるようにしておきなさい

と強い口調だ。

この時に親の勘が働き

何かが起こると感じていたのだろう。

身支度をし玄関を出るとき

母は再び

「気を付けるんだよ」と

不安そうな表情を見せ

見送っていた。

私は

なんか怒ってる?と

その程度でしか受け止めていなかった。

待ち合わせ場所へ行くと

明らかに年下だろうと

いう男の子が二人

『初めまして』

なんて丁寧に挨拶をしてくれる。

そして後輩三人も待っていた。

そう、この中では

みんな私の年下だ。

最終電車が行ってしまった駅に

私たちの笑い声が響いている。

そして一台の車。

運転手は車内かな?

後輩に聞くと

男の子のほうが

自分が運転をすると言う。

無免許なのは明らかだが

この時の私には

乗らないという選択肢はなく

注意をするなんて考えも

勿論なかった。

車に乗り込み

当時16歳と言っていた子が

運転をしている。

彼は学校へ通わず

実家で農家を手伝っているらしい。

小さな田舎で

父親から買い物を頼まれ

日常的に車を運転していたと

言っている。

話の通り運転に不安な点は

感じられなかった。

深夜の国道を走り続け1時間半

目的地に着き

久しぶりに会った後輩同士は

とても嬉しそうだ。

特に何をするでもなく

本当に会いに来ただけだったが

それでも私は楽しかった。

運転手の男の子が

そろそろ帰るかと

言ったのは深夜3時頃だろう。

再び国道を走り始める。

ここは東北地方

冬の国道は路面が凍り

加速して走るものではない。

私は助手席に座っているが

もちろん

シートベルトなんてしていない。

しかもドアに背を

運転席に体を向けながら

乗っている。

時速はどのくらい

出ていただろうか

速かったことは覚えているが

何キロだったかなんて

分からない。

「やべっ」と運転席から

声が聞こえた瞬間から

その後の事は

断片的にしか記憶がない。


・・・・・・・続く




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