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【ぺぺ】

おじいちゃんがいつも座っている座椅子の横にはサイドボードとキャビネットが一緒になった棚が置いてあり、そこには、お菓子の缶や記念切手、布袋さんの貯金箱等色々置かれているのだが、
ちょうど取り出しやすい高さのところには、分厚いアルバムが何冊も置かれていた。


おじいちゃんがきちんと整理して、●●年 家族旅行 □□ 等撮影日と撮影場所がきちんと貼られていた。


何冊もあり、おじいちゃんの職場での慰安旅行の写真から、ベトナムや香港等海外旅行に行った際の写真もあった。


おじいちゃんやおばあちゃんの若い頃の写真もあり、アルバムを見るのはとても面白かっった。


その日もおもむろにアルバムを取り出して見ていると、白い可愛いスピッツが映っている。


そのときおじいちゃんは不在で、私はおばあちゃんに「おばあちゃん、この犬何?」と聞くと
「ペペやしな」と言う。

「ペペっていうん?飼ってたん?」と私が聞くと、おばあちゃんは、「え、、ペペや

し、え、、ペペ、はな子ちゃん知らんか?飼ってたんやして、も~~~可愛がって可愛がってな、ごはんもも~~人間と同じように、ステーキ焼いてあげたりしてたんやけどやな、散歩やったんかな、土手で離したら戻ってこられへんようになって…」


私は、『あ、しまった、おばあちゃんに悲しい別れを思い出させてしまった』かと、アルバムから顔をあげ、おばあちゃんを見ると案外ケロリとしていて「ほんまにアホな犬やったで」と言った。


その後、ぶうわと私の母に「ペペって白い可愛い犬飼ってたんや、知らんかったわ」

と言うと、ぶうわが「あのアホ犬な 笑」と笑って言った。

「え?アホなん?おばあちゃんも言ってた」
と私が言うと

「あほやし、おかあちゃんが、お肉焼いて、キャベツや野菜も細かく刻んで上げてたんやし、なぁ、たぁちゃん」とぶうわが私の母に声をかけ、母は大きく頷いている。


「お犬様だね」とそばにいた、私のいとこのふーちゃんが言い、私はふーちゃんを見て、可笑しくて一緒に笑った。


ぶうわは続けて「皆で可愛がってなぁ、なぁ、たつこちゃん、でも気にいらんことあったら飼い主にも噛みつくねん笑、なぁたつこちゃん」

と言われた母は笑って大きくうなずき「噛みついたことを叱ったら、余計怒ってきたよ。」と言った。


ぶうわは「ほんまにアホな犬やった。裏のこでまりさんも噛んでな。他にも誰やったかなぁ噛んでたわ。それが、あれどこやったかな、赤松台の家行く時に連れて行った時やったかなぁ」


「え?あれ赤松台やった?私、牛頭町の公園やと思ってたわ」と母。


ぶうわは「赤松台の公園やし。赤松台の公園でお父ちゃんが散歩してる時に、紐を離してしもて、ばあああああああああっと走って行って戻ってけえへんかったんやし」


「あ、そうか、赤松台やったかぁ」と母はその時の様子を思い浮かべている様子だ。


ぶうわは「そうやでたつこちゃん、赤松台やし。だからペペも土地勘がなくてな、帰ってこられへんかったんやと思うねん。この辺やったらなぁ戻ってこれてたと思う。可哀そうなことしたで・・・。いなくなってから、何日も探しに行ってなぁ、たつこちゃん、覚えてる?

おかあちゃんにお弁当作ってもらって、自転車で、グルグルまわってな。でも見つからんと…また帰ってくるかなぁまた帰ってくるかなぁって言ってたけど、帰ってこなかったわ。
帰ってこれなかったんやろなぁ…可哀そうに… …アホな犬やったで。」と言った。


フワフワで真っ白い毛でおおわれた、真っ黒なクリクリ目の可愛いスピッツのぺぺは、おじいちゃんのアルバムの家族写真の中に何枚も何枚も映っていた。




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