マガジンのカバー画像

【極超短編小説】鉄の塔の町

105
鉄塔の立つ町。この町は『東』『西』『南』『北』の4つの町からできています。鉄塔は4つの町のちょうど真ん中に立っています。この町で暮らす人々のお話をまとめました。
運営しているクリエイター

記事一覧

【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る④

 彼女はハイヒールを脱ぐと、運転席の後ろに放り込み、僕に助手席に座れと指さした。彼女の車…

十五皐月
2週間前
31

【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る③

 気がつくと、僕は彼女のすぐ目の前に立っていた。話しかけるでもなく、ただ彼女を見ていた。…

十五皐月
1か月前
28

【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る②

 藍色に近いてらてらした濃い青色のドレスは、背中と胸が大きく切れ込んで、行儀の良い上品な…

十五皐月
1か月前
34

【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る①

 深夜、彼女からの着信。  「今……鉄塔の下……これから北の峠に……」  彼女は風の中だっ…

十五皐月
1か月前
33

【極超短編小説】裏:バレリーナとライター

 ヘビースモーカーのオレは、ズボンの左ポケットにハイライトとオイルライターをいつも入れて…

十五皐月
3か月前
40

【極超短編小説】裏:序幕

「『しばらくの間、お休みします』だって……」  ドア1枚を隔てて、外から若い女の寂しそうな…

十五皐月
3か月前
38

【極超短編小説】裏:ガラスと短冊

 気づいてほしいと言っているようなキラキラした光。  見上げると、高層ビルのガラスに太陽の光が反射していた。その光は私の深いところにある、かさぶたに触れる感じがした。  「おっ、やっと来たな」  と言った声に、私は視線をビルのガラスから隣の夫へ向けた。その夫の表情と声には優しさと慈愛が満ちている。  私たちの娘が公園を横切ってこちらへ駆けてくる。春をまだ出し惜しみしたような日差しとは違って、娘はこぼれるように溢れでる若さにはまったく無頓着だ。私はその若さに純粋な羨ましさととも

【極超短編小説】裏:どこかの夜に

 「負けました。なんて絶対に言わない」  彼女は僕のベッドの中で言った。  僕はひんやりと…

十五皐月
3か月前
36

【極超短編小説】裏:来世は

 岬の突端に立ち、彼方に望む夕日。  夕焼けは黄、オレンジ、ピンク、紫へと刻々と移ろい、…

十五皐月
4か月前
31

【極超短編小説】裏:一つになる

  深夜、静寂。オレンジ色に点滅する鉄塔の明かり。僕と彼女は並んで歩く。  爪が触れる。…

十五皐月
4か月前
27

【極超短編小説】裏:変わらない

 いつからだろう?生きることに理由はない、生きているから何をするか、そう思ってきた。でも…

十五皐月
4か月前
29

【極超短編小説】ふたりの二人

 それは子供の頃だった。   鉄塔のすぐ傍で遊んでいた時、巨大な雷が鉄塔に落ちた。雷の轟…

十五皐月
6か月前
35

【極超短編小説】旅の途中

 この時期、陽が早く傾き始める。今日もずいぶんと歩いた。俺は旅の途中だった。  背中の荷…

十五皐月
6か月前
45

【極超短編小説】カミさんの秘密

 命の終わりはあっけなかった。「え!これで最後?マジか?」そんな感じだった。朝、仕事に行く途中、つまづいて転んだ。打ちどころが悪かったらしく、俺は死んだ。  なぜ転んだか?それはフッと見上げたから。鉄塔を。歩きながら。なぜ見上げたのか?神様のような何かを感じたからだ。俺は信心深くもなければ、特に信仰も持ってない。しかし、その時はなぜだか、その神様に見られてる感じがした。  いずれにしても死んでしまったのは、もうどうにもならない。仕方ない、と諦めるしかない。ただカミさんのことが