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【極超短編小説】キューッとゲーップ

 ヘッドライトの光が連なり、ロードノイズは途切れない。
 幹線道路沿いの歩道をずいぶんと歩いてきた。
 排ガスとアスファルトからの熱気もあって、すっかり汗ばんでしまった。     

 彼女は相変わらず僕のななめ前を歩いている。
 気まぐれで彼女の横に並んでみた。
 キューッと彼女の腹の音。辺りはロードサイド店舗でにぎやかだ。

 彼女はすぐさま歩道を外れ間近のファミレスへ向かう。僕も後について店に入った。
 彼女はハンバーグ、スパゲッティ、スープ、サラダ、フライドポテト、エビフライ、オムライス、ステーキ、シチューを注文して、ほんの一口ずつ味見すると僕の方へ顎をしゃくった。
 僕は唯一注文したドリンクバーのグラスをわきに押しやり、彼女の食べ残しを勢いをつけてひたすら胃袋に流し込んだ。

 食べ残しの詰まった容器を手にして、彼女に付いてレジへ向かう。彼女はポケットから手を引き抜くと、鷲づかみにされた札と小銭で会計を済ませた。

 しばらく歩いて見慣れた地元の商店街にたどり着いた。
 彼女は相変わらず僕のななめ前。違うのは僕の胃袋と食べ残しの重量。

 ゲーップと胃からハンバーグやスパゲッティなんかがこみ上げたとき、
彼女は回らない寿司屋の暖簾をくぐった。

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