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【読書記録】彼女の名前は

「82年生まれ、キム・ジヨン」を書いたチョ・ナムジュさんの次作短編集。9歳から69歳の女性たちの声をもとに28編の物語になっている。

上司からのセクハラに悩むのソジン。夫との離婚を決意したジョンウン。学生運動に参加するジョンヨン。彼女たちの多くが抗議活動や人生を変えるような決断をして現状を打破しようとしていた。驚いたのは高校生の子ですら抗議活動に参加していたこと。私は生まれてから1度も政権や雇用に対しての抗議活動に参加したことがない。確かに憤りや不満を感じることはあった。だけどその気持ちが抗議活動やストライキを起こすことには繋がらなかった。それに身近でそのような活動が起きていなかったからかもしれない。

係長からのセクハラに悩むソジンの章「二番目の人」。会社はソジンの告発を受け入れようとしない。しかも過去にも係長からの被害を受けて退職した女性がいた。そんな状況でもソジンは戦い、最後に「黙ってやり過ごす二番目の人にはなりたくなかった」と書かれている。読みながら、係長のセクハラを認めない姿やソジンの告発を行き違いだと片づけた人事部長に怒りを感じた。さらに問題なのが告発したあと被害者が誹謗中傷を受けることだ。なぜ被害者が責められるのだろうか。

あとがきで初めて「卵で岩を打つ」という韓国のことわざを知った。卵を投げて岩を割ることができないように、絶対不可能で無謀なことをいうらしい。だけどこのことわざに対して「卵で岩を割ることはできなくても汚すことはできる」というジョークがある。作者のチョ・ナムジュさんは卵を投げ続けている女性たちのがいることを教えてくれた。



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