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法隆寺と持続可能性から考える、文化、歴史、そして環境の共鳴

今回、ご紹介させていただきたい書籍はこちら「法隆寺を支えた木」です。日本人なら誰しもが知っているであろう法隆寺は、奈良県に位置する日本の古代から続く仏教寺院で、飛鳥時代に創建されました。

この寺院の建立者は、皇族でありながら出家した聖徳太子で、彼が亡き母親のためにこの寺を建てたと伝えられています。当初は「法興寺」と呼ばれていましたが、後に法隆寺と改名されたのです。

この寺院は、その建築様式や文化財で特に有名です。中でも、世界最古の木造建築とされる中門や五重塔、西金堂は世界文化遺産にも登録されています。また、法隆寺に保存されている「法隆寺献燈文」は、日本最古の木簡とされています。これらの事からも、法隆寺が日本の文化や歴史において非常に重要な位置を占めていることがわかります。

宗教的にも、法隆寺は日本で初めて密教の影響を強く受けた寺院とされています。聖徳太子が仏教を日本で広めようとした思想や価値観が、今日まで多くの人々によってこの寺院で崇敬されています。

過去には何度も火災などの災害に遭遇していますが、その度に復興されており、これは法隆寺が日本人の心にとって特別な場所である証拠でもあります。

法隆寺は現在も多くの信者や観光客に訪れる場所として、その重要性を保ち続けています。このようにして、法隆寺は長い歴史を通じて日本文化の一部として、また、人々の精神生活の支えとして存在し続けています。

そんな『法隆寺を支えた木』というものに興味が尽きません。また、地球全体のサステナビリティについても考えさせられます。木や食べ物、文化といった要素が、その根本に土があることを認識することは、環境保全に対する新しい視点を提供してくれています。

また、多くのビジネス書が即効性を追求する傾向にある一方で、実際には経験者の話や小説、あるいはアルチザンの知恵から学ぶ方が、長期的な成功や人生の質に対する有益な影響があるという考え方は、非常に共感を覚えます。

特に興味深かったのは、ヒノキの老木に関するお話です。見かけばかりを重視するのではなく、内面や「根の張り具合」を見極めることの重要性が示されています。これはビジネスや人間関係にも通じる智慧であり、外見や一時的な成功に惑わされず、本質を見る能力が求められるという点で、非常に参考になると思います。

このような価値観や哲学、知識が集約された書籍が存在すること自体が貴重であり、それを広める活動は今後ますます重要になるでしょう。

ところで、本書の筆者の弟子は、その道に達人なるには研ぎ三年といわれる工程を一年で習得したそうです。この表現は、一つの技術やスキルをマスターするには長い時間と厳しい訓練が必要だという意味で広く用いられています。しかし、弟子が一年でその工程を習得したという話は、一般的な考えに挑戦する興味深い事例です。

これはビジネス的な側面から考察すると、集中力、指導者との相性、効率的なトレーニング方法など、多くの要素がうまく噛み合った結果と考えられます。そのような特殊なケースは、伝統的な考えだけでなく、新しい教育やトレーニングメソッドの有効性を示すかもしれません。

また、ヒノキが1300年も建材として有効であるという点は、その耐久性と品質に起因します。ヒノキは防腐性、防湿性に優れているため、多くの古い建造物、特に日本の寺院などで使用されています。法隆寺のような歴史的建築物が現存する理由の一つは、ヒノキなどの高品質な材料が用いられているからです。このような特性は、ヒノキが単なる木材ではなく、長い時間を経てもその価値を失わない「生きた建材」とも言えるでしょう。

この二つの話は、古くから伝わる知恵や方法が現代でもその価値を持つ一方で、新しい視点やアプローチが既存の「常識」や「法則」に挑戦し、時にはそれを覆すことがあるという点で興味深いです。それは技術や素材、あるいは教育といった多くの分野で共通する事実であり、これからも続くであろう人々の探求と発見の歴史を象徴しています。

このように達人レベルの技術に達するにはどんな分野でも「1万時間」の時間が必要だというこれはイギリス生まれの作家、マルコム・グラッドウェルの『OUTLIERS』という、発売3カ月で全米100万部突破の大ベストセラーとなった本がきっかけとなって、一気に広まっていった考え方です。

実際に達人レベルに達するには、ただ時間を費やすだけでなく、その時間をどのように活用するかが非常に重要です。この点について、本書の筆者の弟子が「研ぎ三年」とされる工程を一年で習得したというエピソードは、時間だけでなく「質」も非常に重要であるという示唆を与えています。

これを「集中力」や「専門的指導」、「適切なフィードバック」といった要素と結びつけて考えることで、1万時間を効率よく使う方法が見えてくるでしょう。例えば、高度なスキルを持つ師匠の下でしっかりとした指導を受けること、自分自身の進捗を客観的に評価する手段を持つこと、そして何よりそのスキル習得に対する強い「情熱」や「モチベーション」があると、時間を有意義に使い、早期に高いレベルに達する可能性が高まります。

グラッドウェル自身も、単に時間をかけるだけではなく、その時間をいかに「質高く」使うかが重要であると指摘しています。これは、あらゆるスキルや知識の習得に共通する普遍的な真理であり、本書の筆者の弟子の例も、そのような視点から非常に参考になるケーススタディと言えるでしょう。

ただし、この説に異論を唱えたのがアメリカの人気作家、ジョシュ・カウフマン。彼は「1万時間の法則」に対して異論を唱え、新しいスキルを習得するためには、実際にはそれほど長い時間は必要ないと主張しています。彼の著書「The First 20 Hours(たいていのことは20時間で習得できる)」では、新しいスキルを一定のレベルまで高めるためには、約20時間の集中的な学習が重要だと述べています。

この20時間という数字は、一般的な仕事や家庭生活を持つ多忙な大人でも取り組みやすい時間枠です。特に共働きでお子さんがいるような家庭環境では、時間は非常に貴重なリソースですから、このような新しい視点は大変役立つと言えるでしょう。

カウフマン氏の理論は、新しいスキルを習得するプロセスを効率化するための非常に参考になる方法を提供しています。これは、例えば新しい業務やプロジェクトに臨む際、短期間で必要なスキルを習得したいという人々にとって、非常に有用な情報であると言えます。

ただし、彼の提案が「達人」レベルまで到達する方法とは一線を画す点も重要です。20時間で得られるスキルは基本的なレベルであり、専門性や高度な技術はやはり時間と努力が必要です。この点では、マルコム・グラッドウェルの「1万時間の法則」とカウフマン氏の考えは、目指すレベルによってその有用性が変わってくると考えられます。

実際、エリクソン博士自身も、マルコム・グラッドウェルが「1万時間の法則」を一般化した方法には多くの異論を持っています。エリクソンの原論文は、あくまで特定のスキルで世界トップクラスのパフォーマンスを出す個人に焦点を当てていたのです。

この研究は、特に専門的な技術や高度なスキルが必要な分野で、そのような能力を持つ人々がどれだけの努力と時間をかけているかを調査したものであり、一般的なスキル習得や日常生活にそのまま適用できるわけではありません。その点を考慮すると、この「1万時間の法則」が多くの人々に一概に当てはまるわけではないと言えるでしょう。

グラッドウェル氏の解釈が広く受け入れられた結果、多くの人々がこの法則を一種の成功のショートカットと誤解してしまう危険性があるのです。それは、多くの人が時間をかければ必ずしも成功するわけではなく、また、少ない時間で効率的にスキルを習得できる場合もあるという、より複雑な現実を見落としてしまう可能性があります。

このように、原研究の文脈とその後の一般的な解釈との間には、しばしばギャップが存在することがあります。そして、そのギャップを理解することが、より正確な知識やスキル習得の方法論を形成するために重要なのです。


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