見出し画像

既存事業を深掘りしながら新しい事業の柱を探索する経営手法はコレだ!

⌛この記事は 5.6 分でお読みいただけます。

Hey! What's up people!? 鎌田です。それでは編集者目線で気になった本をご紹介させていただきたいと思います。

今回はこちら、破壊(ディスラプション)の時代を生き抜く方法について書かれている「両利きの組織をつくる 大企業病を打破する「攻めと守りの経営」」です。

私は自分の会社を上場企業に売却してから、大企業を中心に経営企画室や成長戦略室に入って、IRから新規事業の推進などを経験してきただけに、本書は「今」企業で起こっている本質を正確にとらえているなと感じました。

私の中で言語化できていなかった、もどかしかった部分がクリアになった点においても本書はさらに踏み込んだ考察を当ててくれています。

私も本書の著者と同じく、ここ数年は様々な経営者と対話していくなかで、既存事業を守りながら、いかに次の成長領域を見つけ出すのかという課題に直面しており、企業の生き残りを賭けてもがいているということを肌で感じております。

現在の経営環境は、100年に一度の大変革期にあると言われています。いや、新型コロナウイルス感染症対策による待ったなしの社会変革で、そんな言葉では表せない事態に私たちは直面しているのです。

デジタル技術を核とした新興勢力による創造的破壊(ディスラプション)が着実に、そして猛スピードで成長を続けているのに対して、成熟した大企業は変化への適応が遅々として進んでいません。

もはや高度に複雑化した経営環境にあっては、大企業の経営トップといえども先を見通すことは容易ではないのです。先を見通せないのであれば、変化の流れの中に分け入って、自社独自のやり方を試しながら進むしか道はありません。

しかし、成熟した大企業では、新しいことを試すことそのものが赦される環境にありません。同じ事は設立から20年以上経った中小企業でも同じことが言えるでしょう。

時の流れと共に高度に効率化されてきた組織は、失敗が許されがたい組織に変貌してしまいます。

その結果、経営陣は「下が主体的に動かないから始まらない」と嘆き、中堅・若手は「トップが判断しないと何も始められない」とぼやくのですね。

これまでに関わってきた企業幹部と話しをすると、「新規事業がうまくいかない」「なかなか新しいことが始められない」「変わりたいのに変われない」という切実な悩みに必ず遭遇しています。

話を聞いていると本題の本質は、成熟企業が新たな取り組みを行うにあたって最大の壁となるのが、事業アイディアでも事業戦略でもデジタル・マーケティングでもないことがわかるようになってきました。

それらは本気で必要となれば外部から買ってくることができます。
したがって成熟企業にとっての最大の壁は、自社の「組織カルチャー」なんですね。

「組織カルチャー」とは、事業理念や価値観・社風といった、フワッとした概念のことではありません。

それは具体的な「仕事のやり方」のことであって、「組織カルチャー」を風土や雰囲気として捉えている限りは、具体的な打ち手は出てきません。

新しいことを始めるには、新しい「仕事のやり方」が必要なのに、多くの成熟企業では、新しいことを始めるのに、古いやり方でやろうとして、失敗してしまうのです。

つまり、「既存事業が新規事業を殺してしまう」構図が明らかになっているのです。

脱皮できない蛇は死ぬんです。

変化に適応できない成熟企業は、遅かれ早かれ、新興企業からの破壊的なイノベーションによる挑戦を受けて、駆逐されることになるでしょう。

その分水嶺というのは、いつ・どこで起こるかは誰にもわかりません。主力事業と社員を守りながら、過去に囚われない新たな取り組みを実行できる組織になるためには、何をしなければならないのか。

守る経営をしながら攻める経営をするとは、どういうことなのか。両極のバランス・ポイント(重心)はどこにあるのか。

この問いに、二十年余にわたる組織開発の実践経験と、世界トップレベルの経営学者の知見、そして日本を代表するグローバル企業のひとつにおける事例研究を通して、回答を試みたのが本書となっています。

本書の共著者であるチャールズ・オライリー教授が提唱する「両利きの経営」は、成熟企業が創造的破壊(ディスラプション)の時代を生き抜くための組織経営論となっており、既存事業を深掘りしながら新しい事業の柱を探索する経営手法であり、成熟企業が新興企業に駆逐されることを防ぐ道を示した経営理論です。

米国では、企業組織のみならず、国防総省や海軍・空軍などの行政組織や州政府、NGOなどの非営利組織も注目している理論となっておりまして、日本でもオライリー教授らの著書『両利きの経営』が2019年に刊行されて以来、経営者を中心に多くの関心を集めています。

これまで両利きの経営は、既存事業と新規事業の「二兎を追う」戦略論や、「知の深化」と「知の探索」によりイノベーションを生み出すという知識創造論として紹介されてきました。

しかし、著者のオライリー教授自身は、両利きの経営はそうした戦略論や知識創造論というより、本質的には組織進化論だと語ります。

組織が進化するためには、異なる二つの組織能力が必要とされており、ひとつは「(既存事業を)深掘りする能力」であって、もうひとつは「(新規事業を)探索する能力」であるとしています。

つまり両利きの経営とは、企業が長期的な生き残りを賭けて、これら相(あい)矛盾する能力を同時に追求することのできる組織能力の獲得を目指すものです。

しかし、「深掘り」と「探索」という相矛盾する能力を同時に追求することは容易ではありません。

なぜなら「深掘り」と「探索」を同時に追求すると、組織内では必ずトレード・オフの関係にあって、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるをえない状態が発生するということだからです。

新規事業は既存事業との重複による無駄やカニバライゼーション(共喰い)、さらに不本意な失敗を伴うからに他なりません。

経営者は否応なしに「既存事業の資産と能力をどれくらい活用して、あるいはどこまで犠牲にして新規事業に力を注ぐべきなのか?」という問いに向きあわざるをえなくなります。

また当然のことながら、組織内では当事者同士の間で感情的な緊張関係や対立が発生します。よく聞く話として、既存事業側から新規事業側に対して、「俺たちが汗水たらして稼いだ利益を湯水のように使って…」という怨嗟の声が生まれるんですね。

両利きの経営は、単に事業ポートフォリオや経営資源配分を理屈で考えるだけでは到底実現できないのです。

では、相矛盾する組織能力を形成して、さらにそれらを併存させる能力を形成するためには、何が求められるのか。もちろん、適切な組織構造とプロセスの設計が必要となります。

しかし、両利きの経営を実現する上でカギとなるのは、組織カルチャーのマネジメントです。繰り返しとなりますが、 本書で扱う「組織カルチャー」とは、企業理念や価値観・社風といった概念のことではないのです。

これは具体的な「仕事のやり方」のことを指していますよね。つまり、その組織で観察される特有の「行動パターン」であり、行動を規定している「組織規範」を反映しているもんなんです。

これは「仕事の作法」とも言え、新たな組織能力を形成し、発揮できるようにするために、どのように組織カルチャー醸成していき、どうマネジメントしていくのか。

同じ組織の中で異なるカルチャーを併存させるバランス感覚こそが、本書のいわんとする「両利き」の核心なるのです。

成熟した日本企業における最重要な経営課題は、新旧それぞれの事業特性に応じた組織カルチャーを形成して、併存させられる組織となるということですね。

成熟産業・成熟企業で働きながら、「うちの組織はこのままでいいのか?」という問題意識を持たれている方々、とりわけ経営幹部の方々に、ぜひ本書を手に取ってお読みいただきたいと思います。

いま、日本企業の組織経営はまさに正念場を迎えています。少しでも多くの日本企業が創造的破壊(ディスラプション)の時代を生き残るために、本書で得られた気づきがきっと役立つはずです。。

それではまたお会いしましょう!

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!