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フリーランス翻訳者として働くこと

フリーランスで翻訳の仕事をすることについて英語が堪能な弁護士と話し合ったことがある。彼は社内弁護士をしながら副業で法律文書の英訳の仕事をしている。彼の1日の翻訳量は約2,000字であるそうだ。私の専門も法律文書の英訳で、私の1日の翻訳量も約2,000字だ。専門的知識が要求される文書の翻訳は簡単ではないので、上記のような翻訳量に落ち着く。

近年はAIによる無料の機械翻訳(Google翻訳やDeepL翻訳等)が飛躍的に発達している。よって、企業はこのような機械翻訳を使って翻訳し、機械翻訳によるミスがあれば、社内の英語ができる社員にミスを修正させればよい。このような状況なので、翻訳会社は約20年前と比べて、仕事を得るのが難しい状況にあると言われている。

翻訳会社は無料の機械翻訳では太刀打ちできない専門的な文書をフリーランス翻訳者に発注する傾向にある。したがって、特殊な例外を除いては、フリーランス翻訳者に楽な仕事が来ることはあまりないと言ってよいだろう。

知り合いの弁護士は、翻訳会社が仕事として回してくる翻訳案件の文書には誤字脱字が多く日本語自体が誤っている箇所が結構目立つと言っている。私は彼の意見に全面的に賛成する。翻訳会社がフリーランス翻訳者に仕事を発注する場合、フリーランス翻訳者に送られてくる文書の質はかなり悪いというのが定説のようだ。

フリーランス翻訳者が扱う文書は翻訳しにくい文書であると考えてよい。1日に約1,500字しか翻訳できないような難解な法律文書が翻訳会社から回されてくることも十分あり得る。

上記のような文書を1日約8時間〜約10時間の労働でプロの翻訳者に翻訳してもらう場合、時給約2,500円〜約3,000円は必要で、翻訳会社はプロの翻訳者に最低でも日給約20,000円は支払うべきだというのが世間の常識であると考える人は多いだろう。しかし、このような常識は翻訳会社には決して通用しない。

翻訳会社からフリーランスとして仕事を受ける場合、フリーランス翻訳者は1文字〇円のような形で仕事を受ける。1文字5円あればよい方で、1文字3〜4円ということもあり得る。ひどい場合は1文字2円以下ということもあるようだ。1日に約1,500字しか翻訳できないような難解な法律文書を1文字5円で受注すれば、日給約7,500円で、1文字3円〜4円で受注すれば、日給約4,500円〜約6,000円である。1文字2円以下で受注すれば、日給約3,000円以下である。

上記のような文書を1文字7円で受注できればかなり恵まれている方であるが、この場合でも日給約10,500円である。残念ながら、翻訳会社はフリーランス翻訳者を利用(搾取)し法の穴をかいくぐること(脱法行為又は違法行為)によって、利益を出していると考えざるを得ない。時給数百円で働くことを余儀なくされたという経験のあるフリーランス翻訳者、奴隷のように扱われているフリーランス翻訳者は多いのではないだろうか?

したがって、私はフリーランス翻訳者として翻訳会社から仕事を受けることを絶対にすすめない。英語を使う仕事に興味があるのであれば、翻訳会社以外の会社で正社員、派遣社員、契約社員として英語を使う仕事に就くことをすすめる。正社員、派遣社員、契約社員として働けば、労働法によって守られ、前述したような脱法行為又は違法行為の餌食になりにくい。フリーランス労働者は法律の外に置かれ、悪徳会社の食い物にされやすい。世の中には悪い奴らが多いので、気を付けなければならない。

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