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布巾から考える~良いものを長く大切に使うということ。


フランスのルームツアーに見る、昔のものを残した生活

 先日、フランス在住の日本人のルームツアー動画を見ていたら、19世紀初頭のオスマン建築の時代という陶器の暖炉やステンドグラス、冷蔵庫がわりの貯蔵庫が残っていた。天井にはもアールデコ時代の照明。

 いずれもすでに使えなくなっているものだ。陶器の暖炉が残っているのはフランスでも珍しいと話ていた。美しい彫刻がなされた赤茶色の石材でできた暖炉が美しい状態で残されていることに、まず驚く。

リフォームも最小限に?

 その家は、昔キッチンだったところを、ランドリールーム兼クローゼットに改装し、キッチンをダイニングルームへ移すなど、それなりの改装はしているようだった。動画を見る限り、これらのリフォームは現在の住人である日本人女性が行ったものではなさそうだ。

 この女性が家を所有しているのか、賃貸なのかはわからない。これまでにどのぐらいのリフォームが施されているかなども不明だ。しかし、前の、あるいは現在のオーナーさんが、残すところは残しつつ、暮らしやすさも追求しているように思えた。

長く使うことをどれぐらい考えられている?

 日本だったら「邪魔」「使い勝手が悪い」とばかりに、とうの昔に姿を消してしまいそうだ。高度成長期が始まった頃に建てられた古いマンションをスケルトンリフォーム、フルリフォームする例も増えているから、ますます元の状態を保つ部屋は少なくなっていくのではなかろうか。

 と書いていて、ふと「日本の高度成長期頃に建てられたマンションや団地で、残したいものって何だろう」と思ってしまった。長く使うこと、日本の良さを活かすことを、どこまで考えて造られているのだろうか、と。

日本だったら最先端と流行優先?

 日本ではマンションや団地なども、その時々の流行りで造られ「これが最先端」とばかりに売りに出されていく。それは今の新築マンションを見ても、何ら変わりがないように思える。機能性重視なのはいいけれど、長く大切に使うことを重視して設計され建てられたものがあるのだろうか。

 どこの会社が建てても、同じような外観、同じような内観、同じような…。たしかに耐震技術は上がったけれど。その分、長く使えるはずだから内装だってもう少しなんとかと思うのは筆者だけだろうか。

 建築にしろ、ファッションにしろ、日用品にしろ、日本は新しいものや流行を次々に取り入れる力はすごくある。潔いほどに。しかし、良いものを長く使う、日本の良さを考えて何かを造る(作る、創る)ということはあまりして来なかったように感じてしまう。

何代も続く布巾!

 内装だけではない。驚いたのが、布巾である。

 引き出しにたくさんしまわれていた布巾は、なんと、義理のお母さまが使っていたものを頂いたという。そのお義母さまがお嫁に来たときに持ってきたものや、さらにおばあ様が使っていたものまであるそう。布巾の端には、お義母様やおばあ様のイニシャルが刺繍されていた。

 さらに驚くのが、布巾の状態である。真っ白でパリッとしつつも、手に馴染む柔らかさを保持しているのがわかるかのようである。黄ばんでもいなければ、擦り切れてもいない。画面を通してみても、まるで新品のように真っ白である。布巾ですよ、布巾!

 インタビューを受けていた方は50代なので、おばあ様が使っていた布巾ともなれば、かなり古いはずである。

 日本だったら、とうの昔に黄ばみが出たり、擦り切れたりして、最後は雑巾にして終了となりそうなのに。「フランスの方って大事に使いますよね」と言っていたが、大事にするだけで、ここまでも持つものだろうか。

良いものを長く使う生活に

 「ウチは物を大事に使うから」という方もいるだろうが、果たして「おばあ様が使っていた布巾を、お義母さまが譲り受け、それをいま自分が使っている」という方はいるだろうか。そう思うと、使いながら代々受け継がれた布巾など、なんとも恐れ入る話である。

 とはいえ、品質の良さがウリの日本製。布巾のような消耗品でも、探せば長く使えるものがあるかもしれない。

 100円ショップはとても有難い存在で、よく利用している(なくなると、すごく困るほどに)。しかし、そればかりに頼らない生活。良いものを長く、大切に使う生活。それが、日本にある良いものを再認識することに繋がるのではないか。それらに触れるたびに、良さって何だろうと考え、大切に使うということを自分なりに感じ、理解することにつながるのかも。

 まずは、布巾から。そして身の回りのものから。愛着がわくほどに長く使えるものに出会っていきたい。
(冒頭の写真は、動画とは何の関係もない、我が家の100均布巾です。悪しからず…)

<参考動画>
「ルームツアーinパリ」より
https://youtu.be/a0g2fGxsSjc


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