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ウルグアイ 11 政治編 国民投票

前記事で書きました緊急法の是非についてウルグアイでは2022年3月に国民投票が行われました。そちらに焦点をあてて本記事を書いていきます。

ウルグアイの国民投票のしくみ

ウルグアイにおける国民投票制度は、レファレンダム(referéndum)とプレビシト(plebiscito)の二種類があります。レファレンダムは任意の法律を施行から 1 年以内に、有権者の 25%の署名を集めることでその改廃の是非を国民投票にかけることができる制度です。
一方プレビシトは、憲法改正にかかわるもので、市民の側から憲法改正を発議する場合、有権者の 10%の署名を得ることで、改正案を直近の選挙において国民投票に付すことができる制度です。ちなみにどちらも投票は義務付けられています。
(日本は国民投票はまだ実施されたことがありませんが、憲法改正に対してて行われますね。)

さながら大統領選

前記事の通り、緊急法は、幅広い分野での法改正を含み、なかでも治安分野が重要な位置を占めています。とくに、犯罪取り締まり活動などの公務執行にあたり、現場警察官により大きな裁量と権限を付与した改正が大きな議論の的となりました。
投票日が近づくにつれ、緊急法部分廃止への賛成派と反対派はこぞって全国でキャンペーンを展開し、拡大戦線(左派)と右派連合が接戦を繰り広げた 2019 年大統領選挙決選投票の構図と重なって、さながら選挙戦第 3 ラウンドの様相を呈した。2020 年 10 月に揃って上院議員の議席を補欠に譲り引退したムヒカとサンギネッティの両元大統領が再び公の場に姿を現し、それぞれ賛成と反対への支持を訴えたことからも、選挙戦の過熱ぶりがうかがえたようです。

結果的に緊急法の部分廃止は否決された

国民投票の結果は、賛成が有効票の 48.6%、反対が 51.3%で、賛成票が有効票の過半数に達し なかったことから、緊急法の部分廃止は否決されました。首都モンテビデオでは、賛成派(つまり廃止派)は 55.9%と全 19 県のうち最も高い得票率を記録しました。他方、国民党の影響力が強い内陸では、反対派が軒並み賛成派を上回り特に首都から 最も遠い北東部の市では反対派(緊急法の部分廃止に反対)が多くなりました。

緊急法がなぜ支持されたのか

ウルグアイにおける市民の主たる関心は、長期にわたって雇用や賃金といった経済問題が中心でした。治安問題は、21 世紀初頭の経済危機を脱し、成長が軌道に乗り始めると、市民の強い関心事として浮上してきた。従来、他のラテンアメリカ諸国に比して治安がよいと言われてきたウルグアイであったが、2010年代以降、10 万人当たり殺人被害者数が世界平均を上回るようになり、とくに 2017 年から 2018年にかけ、8.3 人から 12.1 人へと顕著に増加しています。
こうした新しい事態を背景に行われた 2019年選挙では、国民党のララニャガが治安強化キャンペーンを展開し、「恐怖なく生きる」(Vivir sin miedo)を掲げ、軍部のなかに治安維持を担う部隊を新たに創設することや、終身刑の導入などを提起して国民投票(プレビシト)に訴えました。この2019年の国民投票のは治安強化にかかる憲法改正案は再び否決された。首都モンテビデオを中心に対抗キャンペーンが行われ、厳罰主義への批判や、軍政期(1973~85 年)の記憶から街頭における軍の存在を忌避する声が高まって、広範な支持が得られなかったものと推測されます。
この時は否決されたものの、治安に対する関心はウルグアイとしては今回に関しも引き続き高いという背景があります。

また、有権者の多くはコロナ対策で結果を出した政府をおおむね高く評価してきた事実が大きな背景として挙げられ、有権者は、今回の国民投票を、政府への信任投票と読み替えた可能性があることも指摘されています。


おわりに

ウルグアイの次の大統領選は2024年10月となります。2023年12月の支持率は支持45% 不支持36% どちらでもない18%となっています。

ラガジェポウ大統領の支持率(支持45% 不支持36% どちらでもない18%)2023年12月

また、就任からの動きを見ていきますと65%であった支持率がだんだんと低下し45%となっていることが読み取れます。

ラガジェポウ政権への支持率の変化

出典

これから大統領選に向けてどうなるのか注目です。


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