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UFC281 ミドル級に激震走る

ミドル級を支配していた絶対王者のイズラエル・アデサニヤが過去にキックボクシングで2度敗れているアレックス・ペレイラに5RTKO負けで王座陥落

永らく王座に動きがなかったミドル級がついに動く結果となった。

ペレイラはキックボクシングからMMAに転向し、UFC4戦目という非常に短い戦績で王座を獲得した。

これでアデサニヤはペレイラに3度の負けを喫したことになる。しかもその内の二つでフィニッシュされてしまっている。

今回の試合でアデサニヤの頭にはペレイラへの苦手意識がはっきりと刻み込まれたことだろうと思う。

王座に返り咲くためにその壁を超えていくことができるのか。

攻撃による防御

ペレイラの脅威は正確性と威力が高い打撃で、一撃で意識を刈り取るような打撃を正確に打ち込みノックアウトする。

アデサニヤは終始その打撃を警戒し、オクタゴンの中を自由に動いていくことができなった。

1R目から体中に汗をかいていたところを見ても、余程の緊張と警戒があったのだろうと思う。

それが攻撃の余裕を奪っていたのは言うまでもない。

耐久力と攻撃力

アデサニヤが攻勢を強めた瞬間もあったが、ペレイラは硬く耐久力が高かった。致命的なところまで削り切るにはもっと強い一撃を入れる必要がある。

反対にアデサニヤの耐久力は低く、ペレイラの一発でごっそりと削られてしまうような状態で、常に危険と隣り合わせになりながら何とか対応しようと反撃に出ていたが、ジリ貧感が否めなかった。

ペレイラを仕留めるには、攻撃を被弾しないようにしながら、強力な一発を的確に打ち込むという非常に難易度の高いことをプレッシャーを与えられる中で行わなければならない。

しかしあくまでもそれはキックボクシングで勝負するならという話である。

MMAの完成度

アデサニヤ・ペレイラの両者はキックボクシングをベースとするストライカーであり、その分野での能力が突出していることは言うまでもない。

しかしそれ故にMMAの技術をキックボクシングを活かす形で取り込んでいるため、バランスという意味では偏りが出て必然的に穴が生まれやすくなってしまう。

だから今回の試合でもペレイラは組み展開になると途端にスタンドで見せた危険な雰囲気がなくなり、立ち回りが危うくなった。

テイシェイラの元で学んでいることもあって、組みに対するディフェンスの心得があることは前々からわかってはいたが、対応能力に欠ける部分がまだあって、不安定であることは否めない。

また、アデサニヤはアデサニヤで組みに行ってもテイクダウン能力に乏しく、オフェンシブな組み技術に拙さが露見していた。

元々ディフェンス面で組みの対応はしていたが、スタンドで追い込まれることが無かったこともあり、オフェンス面での組み技術の活用は進められてこなかったのだろうと思う。

これまでミドルの階級で恵まれた体格を活かしリーチで間合いを制することで試合をコントロールしてきたアデサニヤだったが、それが思わぬ形でツケとなって返って来てしまった。

今回のタイトルマッチもアデサニヤがタックル・テイクダウンなどの能力をもっと伸ばしていたら、結果は違うものになっていただろう。

何処かで通用しなくても違う角度から崩せる幅の広さがMMAの難しさであり、メリットでもある。

強みを押し付けるのも一つのスタイルだが、様々な対戦相手を降す必要のある王者こそ、対応能力の幅を広げ穴を無くしていく必要がある。

ミドル級の今後

アデサニヤは再び王座を獲得するためには総合力の向上が必須であり、それができれば4度目の正直を起こせるかもしれない。

そもそもミドル級にアデサニヤにとって脅威となるファイターはほぼいないような状況だったわけなので、ペレイラを超えるかどうかがアデサニヤの今後を左右する大きなポイントとなってくるだろう。

一方でペレイラはここからMMAにどんどんアジャストしていくだろう。グランドや組みの展開に強くないという弱点も次第になくなっていくのではないかと思う。

そうなった時、ミドル級で彼を止めることができる選手はいるのか?

絶対王者に殴り勝つペレイラにその牙城を崩せなかった者たちが勝てるのだろうか。

ミドルで戦うファイターたちはその完成度の向上が成される前に、彼を王座から引き摺り下ろす必要があるだろう。

ダイレクトリマッチはあるだろうか?

今回のタイトルマッチはアデサニヤがペレイラを逆指名したことで組まれたが、アデサニヤは過去の雪辱を果たすことが出来ないだけでなく手痛い返り討ちを受けてしまった。

その結果、ペレイラがUFCの王座をスピード戴冠することになった。

ミドル級でも比較的大きいアデサニヤとペレイラは両者ともに同じような体格で間合いに優劣もなく、これまでとは違ってアデサニヤはお互いに打撃が届く位置で勝負することになった。

今回の結果を受けて、人によってはアデサニヤは体格の有利で今まで勝ってきたのではないか思う人も出てくるだろう。

塩試合を批判され始めていたアデサニヤはここで負けたことで、また一つ成長を遂げることができるのか。

ライト級・女子ストロー級・ミドル級と複数の階級で新王者が誕生し、今後のスケジュールではフライ級とライトヘビー級でリマッチとなるタイトル戦がある上に、P4Pを掛けたマカチェフVSヴォルカノフスキーも予定されている。

そんな激動のUFCだが、この荒波を越えて王座に落ち着くファイターは誰なのか。

ミドル級の王座を掛けた戦いがアデサニヤとペレイラの間でこの後も続くようならば、よりその激しさは増していくことになるだろう。

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