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モノクロ桜吹雪 シロクマ文芸部

花吹雪を浴びた。このところ毎晩だ。
理由はわかっている。
終わりそうなこの関係のスタート地点を、わたしの脳が再生し修復させようともがいているのだ。

***

なんで笑っているのかと、わたしはヤツにかみつく。
「あーうん。オヤジたちもおんなじことやってたなあって」
「おなじこと?」
しょうもないことでケンカし、わあわあじゃれていたと彼は言う。

「じゃれてねーぞ」
「しあわせそうだなって思ってた」
彼の父親は妻より先に旅立ち、母親は約2年、見ていられないほど落ちこんでいたらしい。

***

「それとこれと話は別」
わたしは口調を改める。
「たった今、ジャム瓶のゆる締め禁止令を、発令す」
ははーっと彼は神妙に頭を下げる。

真剣味に欠けるので、本人に理由を説明させてみた。
ちゃんと締めないと空気にふれ酸化し、カビが生えてダメになる。
理屈をわかってはいるようだ。

「へいへい」
「へいは一回」
「そこはハイじゃないでしょうか」
揚げ足取りだけは、一人前な野郎である。

終わらせようったって、そう簡単にはいきませんよ、と彼は余裕ぶって笑う。
半年前、いきおいで公的書類にサインしてしまったことを、わたしはちょっぴり後悔している。

(おわり)

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