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レールを外れてみてわかったこと

はじめに

 プロフィールにも記載している通り、私は大学の医局を離れて、今は市中病院で働いています。どんな職業にもいわゆる王道、レールに乗った働き方というのがあると思います。

医師の場合は、最近はもう崩壊が始まっているような気もしますが、やはり医局への入局でしょう。医局員として関連病院を転々としながら、臨床をこなしつつ、上から命じられた研究活動を行う。こんな働き方です。

私はどうにも研究活動を楽しいと思うことができませんでした。また、自分が医師として何をできるか考えた時に、医療過疎地である故郷の医療に貢献したいと思い退局を決意したのです。

故郷とはいっても、私は早くから故郷を離れていたので知り合いはほとんどおらず、何もわからないまま新たな環境に飛び込むことになりました。よほど医局から離れたかったのだと思います笑。

そんなわけで、自分からレールを外れるという選択をしたわけですが、そこから分かったことを書いてみたいと思います。

嫌でも自分と向き合うことになる

 医局を離れたかったので、勢いでやめたところまでは良かったのです。そして医師の求人サイトで、良さげな市中病院を探し当て、就職しました。

そして働き始めて、私は自分にある疑問が浮かんできたのです。

俺って医師として何をしたいんだっけ・・?

市中病院は決してヒマ、ということはありません。しかしながら、研究やわけのわからないカンファレスなどはなく、大学時代のように忙殺されるという感じではなかったのです。考える余裕、というものが生まれたのだと思います。

今まで逃げに逃げてきた、大事な問題からついに逃げることができなくなったのです。自分と向き合う、ということです。

私のように、仕事は一応まじめにやっているし、スキルもついてはいるけど本質的に何がやりたいのかよくわからない。。という方は少なくないのではないでしょうか?

何故なら、本当は何をやりたいかなんて考えずに働く方が楽だからです。人は不安になるくらいであれば、多少の不満があったとしても安定を取る生き物だと思います。

職場にこんな人いませんか?文句ばっかり言っているのになぜか辞めない人。安定ばかりを選択してしまうと、行きつく先はもはや何がしたいかもわからない、かといって今の職場を離れることもできないという地縛霊のような人間なのではないでしょうか。

孤独という事を認識できる

 仕事をしていると、多くの方が何らかの集団に属していると思います。私は医局と言う大きな集団に属していたわけです。

よく人間は皆孤独である、なんてことが言われますが、私は医局を離れるまで自分が孤独であるなんてほとんど考えたことはありませんでした。集団に属していると、なんだかんだで他人と関わるからです。

医局を離れてどうなったか?離れた後、今も交流を続けている人はほとんどいません。これは私が単に人望がなかった、ということもあるでしょうが、それだけではないと思います。

皆自分が生きていくことでいっぱいいっぱいなのです。どんなに仕事で信頼関係があったとしても、結局他人は他人です。残念ながら集団での人間関係は、その時に必要であったから形成されるだけです。集団から外れれば、おさらばになるのはある意味妥当です。

 このように書くと、「じゃあ集団にずっと属していたほうがいいのか?」と疑問に持つ方もいると思います。私の答えは、明確にNOです。

人はずっと同じ集団に属することはできないでしょう。仕事もそうですし、家族だっていつかは死にます。結局のところ、孤独から逃げようとしても逃げられないのです。

どうせ逃げられないなら、早くから孤独とどう付き合っていくか、考えた方が良いと思うのです。私はようやくそのスタート地点に立ったばかりであり、まだ答えは出せていないですが。。というか、答えなど出ないような気もします。ずっと考え続けるしかないのではないでしょうか。

本当に必要な人がわかる

 孤独の話の続きなりますが。医局を離れてほとんど交流を続けている人はいませんが、ゼロではありません。手で数えられるくらいですが、今でも付き合いのある人々がいます。

このような人々が、本当に必要な人なのだと思います。そして、人付き合いがあるという事のありがたみが、身に染みてわかるようになりました。

年に1回か2回ほどしか会いませんが、大げさではなく私の生きる糧になっています。

自分の実力が嫌と言うほどに認識できる

 これも自分にとっては非常に大きなことです。医局にいたころは、もし自分にできないことがあっても、絶対に誰かがカバーをしてくれるという環境でした。

今になって振り返ると、この「誰かが何とかしてくれる」という環境では本当の意味での成長は難しかったと思います。

今ではこの疾患は自分より詳しい人がいない、とか、この手技は自分より上手い人がいない、という状況が少なからずあります。そのような状況まで追い込まれて初めて本当の実力が分かった気がします。

大学を離れたらもう医師としての成長は難しいかな、なんて思っていたのですが全くの杞憂でした。どんな仕事であっても、大きく成長したいと思ったら頼れる人が少ない、もしくはいない環境に飛び込むことが重要であるという事がわかりました。

さいごに

 偉そうにレールを外れて自分が感じたことを書いてみました。医師は再就職がかなりイージーであるため、他の職種の人にも安易にレールを外れることを勧めるつもりはありません。

しかしながら、今の職場、学校、何でもよいですが疑問を持ちながらなんとなく過ごすことはもったいないし、危険だと思うのです。

成長の機会を失うだけでなく、自分と向き合うという重要なことから逃げることになりかねません。思い切ってレールを外れるという選択肢を、是非考えてみて欲しいと思います。




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