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少しずつでもいいから、これからも日本語を学び続けてほしい

いまから一年前、6歳の息子を日本語学校に通わせていた。

我が子に日本語が話せるようになってほしいと願うわたしと、日本語学校になんて行きたくないという息子

親子の葛藤が続いた。

※今回は、以下の記事の続編です。


嫌がる息子を、無理やり日本語学校に通わせて、果たして効果があるのか。

親子双方にとってつらい憂鬱なこの時期をしばらく耐えたら、この先にふっとラクになる日がいつか来るのだろうか。
長い目で見たら、いまこの瞬間を頑張って良かったと言える日が来るのか。

心の中

人に相談すると、いろんな答えが返ってきた。

韓国系移民2世のご近所さんは、お子さんたちの韓国語教育を途中で諦めたことを後悔していて、
どんなに子どもが嫌がっても、学校に行かせることは大事よ。アナタが踏ん張らないと、そこでおしまいよ。」
と力説する。

我が家ほどではないにせよ、お子さんが日本語学校を嫌がることもあるという日本人の友達が言うには、
子どもが一定の年齢になるまでは、親が頑張って引っ張っていかないと、中途半端でおわってしまう。」

子どもの日本語教育は、日本人の親であるわたしにかかっている。
わたしが諦めてしまえば、そこで子どもが到達するレベルが決まってしまう。

正直に白状すると、子どもたちの日本語教育を考えるとき、わたしは、いつもなんだか追い詰められているような気分になった

なんとか1学期を終え、夏休みが来て家族で日本へ行った。息子にとっては3回目の日本だが、前回行ったときは2歳半で、ほとんど記憶に残っていない。今回が初めてのようなものだった。

6週間の日本滞在の間に、息子の日本語能力は目に見えて上達した。子どもにとっての6週間は大きい。おじいちゃん・おばあちゃんや年下のいとこには、英語は通じないから、持てる語彙を総動員して、日本語で話そうという姿勢が見受けられた。

一方で、いつもいつも日本語のみで話すのはしんどかったようで、わたしには相変わらず英語で話しかけてくることが多かった。妹との会話も、最後まで英語だった。でも、それまで生活のほとんど全てを英語で話していたのに、日本滞在の最後の方は、第一声が日本語で出てくることが多くなった。わたしはそれが嬉しくて、そのたびに思わずわあっと表情を緩ませて喜んだ。

欲をいえば、日本の小学校に体験入学させたかった。日本の子どもたちとどっぷり一緒に過ごして、友達ができたりなんかするといいのになと親としては思っていた。だが、なにせ日本語学校で懲りている息子は、頑としてそれを嫌がった。わたしも、それまでの経緯があったので、無理は言わなかった。

日本を満喫し、日本語を伸ばして帰ってきた数日後。日本行きの前に交わした約束どおり、夫も交えて、日本語学校に通うかどうかを息子と話し合った。日本語へのモチベーションが、息子の中で史上最高になっているはず。だが、息子の返答は、一瞬の迷いもなく、「ノー」だった。

こうして、入学からわずか一学期で、日本語学校の退学を決めた

この判断をするにあたり、なぜ我が子に日本語を学んでほしいのか、わたしの中の整理がどうしても必要だった

なぜ?これまでも、何度も繰り返し自問してきたテーマ。

わたしたち家族は、これからもアメリカで暮らしていくつもりで、日本へ移住する予定は今のところない。日本語ができなくても、社会生活では困らない。でも、わたしは、子どもたちには、これからもずっと、わたしとは日本語で話をしてほしい

わたしは、夫とは出会ったときからほとんど英語で会話していて、英語だと意思疎通ができないと言っているのではない。日本語とその土台になっている文化や人を形づくる意識を共有したい。親子の絆を育んでいくときに、言葉や文化が少しでも障壁になるなんてことは、どうしても避けたい。

日本にいる家族との関係や、子どもの将来の可能性など、ほかにも理由は挙げられるけれど、本当の本当のところを突き詰めていくと、わたしと子どもたちが親子としての関係を深めていくためには、どうしても日本語が必要、という結論に至るのだった。

それは、ちょっと脅迫観念に似たところもあって。焦りと不安が動機になっていることが、自分でもちょっと気になってはいた。これは、後になって考えを改めることになるのだけれど、いずれにしても、そのときは心からそう信じていた。

子どもたちには、これからも長く日本語を学び続けてほしい。でも、だからといって、日本語学校で、文科省の定めた指導要領に沿って、週に1回の授業でカリキュラムを足早に消化していく必要があるのかといえば、必ずしもない。

これ以上押し続けたら、日本や日本語に対してネガティブな感情が植え付けられてしまって、逆効果になりかねない。日本語学校以外の場所で、日本語の学習を続けることについては異論がなかったので、息子が受け入れられる形で、学習を続けていけばいいのではないかと考えたのだ。

「判断が早すぎるんじゃないか」と思う人もいると思う。でも、我が家にはこれで良かったと、わたしは思っている。息子は、いまは週に1回、90分のオンライン授業で日本語を学んでいる。日本語学校に比べれば細々とした学習だが、歌を覚えたり、工作したりする時間もあって、本人は楽しそうだ。

この一件は、わたしにとって、子どもの教育の在り方を切実に考えさせられる経験となった。なにが正解かはいまでもわからないけれど、自分が信じる道を正解として進むしかない。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
海外バイリンガル育児について、過去に書いた記事を紹介します。


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今日で8日め。まだ先は長い。


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